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“偶発的な外乱?”──瞬停リスクを“改善ポイント”に変える方法


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工場の停止トラブルは、必ずしも設備故障とは限りません。
PLCが落ちる、工程ログが欠落する、 原因不明の停止が起こる──その多くが 電源の瞬断(瞬停)や電圧低下、電源ノイズによって引き起こされています。 にもかかわらず、現場では瞬停が「偶発的な外乱」として処理されがちで、 品質監査の場では「説明責任を果たせないリスク」として問題視されます。

本記事では、瞬停リスクを“弱点”ではなく、 監査・品質保証・BCP評価のすべてを底上げする改善領域として捉え直し、 影響の棚卸し(可視化)と双方向インバーターUPSによる無瞬断化を組み合わせて、 「止まらない工程」「欠落しないログ」「説明できる品質」「評価されるBCP」を実現する 実践的アプローチを解説します。

瞬停対策 瞬停リスクを“改善ポイント”に 監査とBCPに強い工場
瞬停・電圧低下・ノイズを可視化し、工程停止とログ欠落を同時に減らす

1. 瞬停は「設備トラブル」ではなく、「説明責任のテーマ」

品質監査は近年、単に「設備が止まらないこと」だけでなく、 「止まってしまったときに、なぜ止まったのか説明できるか」 を重視する方向にシフトしています。
ところが実務では、 落雷や受電点の瞬低、隣接設備の大電流起動などによる瞬停が、 「運が悪かった」「外乱だった」といった言葉で片付けられがちです。

その結果、 PLC停止・工程ログの欠落・トレーサビリティ不備・原因不明の不良 といった現象だけが記録され、肝心の電源側の事象は「見えない」ままになりがちです。 監査の場では、次のような質問を受けることがあります。

  • その停止はどの系統の電源事象に紐づいていますか?
  • どの工程のログが欠落し、その後どう復旧しましたか?
  • 同様の瞬停が発生した場合、再現性をもって対策できますか?

瞬停を単なる「設備トラブル」として扱ってしまうと、これらの問いに十分答えられず、 「説明責任の欠落」として評価が下がってしまいます。 つまり、瞬停対策とは故障率低減だけでなく、 監査に耐えられる説明のための“情報基盤づくり”でもあるのです。

2. 瞬停がもたらす三重の影響:設備・データ・評価

① 設備への影響

  • PLC・インバータ・サーボ・ロボットの停止/誤動作
  • ライン全体の停止、長時間の再起動シーケンス
  • 設備側のアラームだけが残り、電源要因が見えない

② データへの影響

  • 工程ログの欠落、途中で途切れた履歴
  • トレーサビリティの穴(ロット追跡の空白)
  • 品質異常の根本原因を特定できないまま終息

③ 評価への影響

  • 「外乱」として片付けられ、是正の形にならない
  • 監査で「再発防止の説明が不十分」と判断される
  • BCP評価・サプライヤ評価でマイナス査定

こうした影響は、1回あたりの損失額だけを見れば小さく見えるかもしれません。 しかし年単位で積み上げてみると、設備停止時間・廃棄・再起動工数・監査対応コストなど、 意外に大きな「隠れコスト」になっているケースがよくあります。

3. 第一歩は「影響の棚卸し」──どこがどれだけ瞬停に弱いか

瞬停対策の第一歩は、すぐに機器を入れ替えたり、UPSを増設したりすることではありません。
まず行うべきは、瞬停がどこにどのような影響を与えるかの“影響の棚卸し”です。

具体的には、次のような項目を整理します。

  • どの設備・ラインが、どの程度瞬停に弱いか(停止・誤動作の履歴)
  • 停止時に発生する損害(廃棄・再起動ロス・品質変動・納期遅延)
  • 外部要因(落雷・受電点の瞬低・他設備の大電流起動)などの発生頻度
  • 工程ログやトレーサビリティへの影響(欠落するログ・追跡できなくなる情報)
  • 監査・顧客クレームで、過去に指摘された内容との関連性

これらを表形式で可視化するだけでも、 「どこから手を付ければ費用対効果が高いか」が見えやすくなります。
監査側にとっても、「影響の棚卸しを実施し、優先度順に対策している工場」は、 単に運よくトラブルが少ない工場よりも評価しやすくなります。

4. 双方向インバーターUPSで「止めない工程」と「欠落しないログ」を実現

影響の棚卸しができたら、次は「止めたくない設備」「ログを欠落させたくない工程」を中心に、 双方向インバーターUPSによる無瞬断化を検討します。 HPPHBBシリーズのような双方向インバーターUPSは、切替時間ゼロの無瞬断運転が可能で、 瞬停や電圧低下が発生しても PLC やサーボ、インバータ負荷、ロボットを止めません。

また、インバーターでクリーンな電圧・周波数を生成するため、 電源ノイズに対しても強く、電源品質の安定化という面でも効果があります。 電源イベントのログを残せる機種であれば、瞬停・電圧低下・サージなどの発生を記録し、 設備側ログと突き合わせることで、「停止の説明ができる」状態を作りやすくなります。

双方向インバーターUPS導入のポイント

  • 瞬停や電圧低下が多い系統・ラインに優先配備する
  • PLC・制御盤・重要ログサーバーなど「止めたくない負荷」を選定
  • 電源イベントログと工程ログを紐づけて保管する運用ルールを作る
  • 年次の訓練(停電シナリオ)で、復旧手順と説明資料をブラッシュアップ

5. HPPHB0101導入工場での改善例

HPPHBBシリーズUPSを導入した工場では、次のような改善効果が報告されています。

  • 瞬停による PLC 停止が年間ゼロ
  • 工程ログの欠落ゼロを達成し、トレーサビリティに穴が開かなくなった
  • 設備停止時間が年間で40〜70%減少
  • 不良率の改善と、原因不明不良の大幅な減少
  • 品質監査での指摘数が実質ゼロ、BCP評価の向上

瞬停対策は、比較的少ない投資で大きな改善効果が得られる領域です。 「ときどき起こるが、対策しづらい」と後回しにされがちなテーマだからこそ、 先に着手した工場ほど、監査・品質保証・BCP評価のすべてで差別化しやすくなります。

6. 監査・BCP視点でのチェックリスト

最後に、監査・BCP評価の観点から、瞬停対策の成熟度を確認するための簡易チェックリストを示します。

  • 過去の瞬停・電圧低下・ノイズに関する記録が残っているか
  • 瞬停で止まりやすい設備・ラインがリストアップされているか
  • 停止時の損害(廃棄・再起動ロス・品質変動)が定量化されているか
  • 双方向インバーターUPSなどで「止めたくない工程」を無瞬断化しているか
  • 電源イベントログと工程ログを紐づけて分析できるか
  • 停電・瞬停を想定した訓練を定期的に実施しているか
  • 監査・顧客の指摘事項を次回の改善計画に反映する仕組みがあるか

これらの項目が一つひとつ埋まっていくほど、 工場は「偶発的な外乱に左右される現場」から、「説明責任を果たせる、評価されるサプライヤ」へと変わっていきます。 その起点となるのが、瞬停リスクを可視化し、双方向インバーターUPSで「止めない工程」「欠落しないログ」を実現する電源BCPなのです。

FAQ:工場の瞬停対策と監査・BCP

瞬停とは何ですか?工場にはどのような影響がありますか?
瞬停とは、極めて短時間の電源瞬断や電圧低下のことで、 PLCやインバータ、サーボ、ロボットなどの制御機器が停止したり誤動作したりする原因になります。 その結果、工程ログの欠落、トレーサビリティ不備、原因不明の設備停止として監査で指摘を受けるなど、 品質・生産性・説明責任のすべてに影響を及ぼします。
なぜ瞬停は「設備トラブル」ではなく「説明責任の欠落」として問題になるのですか?
近年の品質監査では、工程の安定性だけでなく「停止の説明ができるか」が重視されます。 瞬停を単なる偶発的な外乱として処理すると、なぜ止まったのか、どの工程・どのログに影響したのかを説明できません。 電源側の現象を計測・記録せずに放置すると、不良の起因が設備側に押し付けられ、 説明責任を果たせない工場として評価が下がるため、 「設備トラブル」ではなく「説明責任の欠落」として問題視されます。
瞬停対策の第一歩として何をすべきですか?
最初に行うべきは、瞬停がどこにどのような影響を与えるかの“影響の棚卸し”です。 具体的には、どの設備がどの程度瞬停に弱いか、停止時の損害(廃棄・再起動ロス・品質変動)、 外部要因(落雷・受電点の瞬低)発生頻度、工程ログの欠損リスクを整理・可視化します。 これにより、監査の印象が大きく変わり、改善計画も立てやすくなります。
双方向インバーターUPSを使うメリットは何ですか?
双方向インバーターUPSは、切替時間ゼロの無瞬断運転が可能で、 瞬停や電圧低下が発生してもPLCやサーボ、インバータ負荷、ロボットを止めません。 また、電源インバーターでクリーンな電圧・周波数を生成するためノイズにも強く、 電源イベントのログを残せる機種であれば、停止要因の追跡や監査時の説明にも役立ちます。
HPPHBB0101、可搬型UPSを導入した工場ではどのような改善効果がありましたか?
記事中の事例では、HPPHBB0101、可搬型UPSを導入した工場で、 PLC停止ゼロ、工程ログ欠落ゼロを実現し、設備停止が年間で40〜70%減少、 不良率の改善、監査での指摘数が実質ゼロになるなどの効果が報告されています。 瞬停対策は、比較的少ない投資で大きな改善効果が得られる領域であり、 監査・品質保証・BCP評価のすべてを底上げする施策として有効です。

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