1. その判断は、当時として「正しかった」
学校エアコン整備は、猛暑対策として極めて緊急性の高い政策でした。 補助金制度も整い、自治体の実質的な持ち出しは原則ゼロ。 全教室・体育館への一斉導入という方針は、当時として合理的でした。
比較しやすく、前例があり、説明責任を果たしやすい。 この条件下で選ばれたRFPは、「失敗しにくい」構造を持っていました。
2. なぜ「高圧にする」しかなかったのか
RFPでは、最大負荷が前提条件として置かれました。 全室空調、体育館対応、真夏のピークを想定すれば、 電気式空調(EHP)が自然な選択となります。
EHPを前提とした瞬間、受電方式は自動的に高圧へ寄っていきます。 この段階で、設計と運用の選択肢はほぼ固定されていました。
3. その判断で得られたもの
- 初期費用は補助金で賄えた
- 短期間で全国一斉整備が可能だった
- 猛暑対策という政策目的は達成された
- RFPとして通しやすかった
これらは事実であり、当時の判断が合理的だった理由です。
4. そして、固定されたもの
- 高圧契約による通年の基本料金
- 夏季デマンドが通年コストを左右する構造
- 法定点検・主任技術者などの固定的運用費
- 現場判断で使い方を変えにくい構造
高圧受電を選んだ瞬間、建物は「電気を減らす自由」と「使い方の裁量」を同時に失います。
5. 生徒から聞こえてくる、現場の声
実際の学校現場からは、次のような声が聞こえてきます。
クーラーはあるのに、どれだけ暑くても先生が冷房を入れてくれません。
30度を超えていると思います。くらくらして授業に集中できません。
これは感情的な不満ではありません。 設計と運用のズレが、生徒の身体感覚として表面化した一次データです。
6. 問題は「入れない先生」ではなく、判断できない構造です
教室で冷房が使われない状況を見ると、 「先生が冷房を入れてくれない」という印象を持つのは自然なことです。 しかし実際には、教師個人の意思や怠慢によって冷房が止められているケースは多くありません。
多くの学校現場では、次のような制約が同時に存在しています。
- 電力デマンドを上げられない契約構造
- 節電要請や管理職・自治体への説明責任
- 「誰が判断してよいのか」が明確でない運用ルール
- 夏季以外の使用を前提としていない設備設計
その結果、現場の教師は「入れる・入れない」を自ら判断できない立場に置かれます。 問題の本質は、個人ではなく、判断を不可能にしている制度と設計の側にあります。
7. RFPに書かれていなかった問い
- 快適性は誰が、何を基準に判断するのか
- 電力ピークと健康リスクをどう比較するのか
- 断熱・遮熱・換気は評価項目に含まれていたか
- 現場にどこまで裁量を残すのか
問題は設備ではなく、RFPが問いを書かなかったことにあります。
8. RFP(Request for Proposal)は、将来の現場が「どう判断できるか」を決める文書
RFPは価格比較のための文書ではありません。 それは、将来の選択肢を誰が引き受けるかを決める文書です。
「なぜ高圧にするのか」
「それ以外の可能性は本当に無いのか」
その問いを、RFPに残すことが、次の判断を変えます。
見積や仕様の前に、問いが正しく立っているか。
それだけで、結果は大きく変わります。
この判断が、どのように現場で実装されたのかは、以下の導入事例で具体的に確認できます。