「何も起きていない」ことが日常になった
現在、タイホ防災株式会社の社屋では、電源について話題に上ることはほとんどありません。 停電を意識することも、切り替え操作を行う場面もなく、業務は日常として続いています。
運用で重視されているのは「触らない」こと
この社屋の電源運用で最も重視されているのは、人が介在しないことです。 判断や操作を必要としない前提が、設計段階から組み込まれています。
対策は「存在を感じさせない」
密閉・冷却・雷対策といった調整は、社員の作業を増やすことなく行われました。 対策が見えないこと自体が、正常に機能している証拠です。
電源は「設備」ではなく「環境」になった
現在、電源は特別な設備として扱われていません。 空調や照明と同じく、すでに整っている環境の一部です。
非常時でも、業務は「通常通り」
外部インフラにトラブルが発生しても、社内の業務フローは変わりません。 社員は、いつも通り業務を続けるだけです。
非常時ほど「手順を増やさない」——この前提が、結果として非常時の強さになります。
この事例が示していること
オフグリッドは、特別な思想ではありません。 運用を増やさず、現場を止めないための、極めて現実的な選択肢です。
そしてもう一つ、この事例は「RFP(発注仕様)に何を書くべきか」を考える上で、 重要な示唆を含んでいます。
なぜ私たちは「高圧にしない」選択をしたのか
当時、一般的な設計を選べば、この判断を説明する必要はありませんでした。 それでも私たちは、「将来、電気を減らせるか」という一点を基準に設計しました。
高圧受電は、設備としては合理的です。しかし一度選べば、契約・設備・点検義務を含めた「運用の形」が固定され、 後から電気の使い方を変えたくても、自由度が残りません。だから私たちは、空調(季節負荷)と定常負荷を分けて考え、 受電方式を含めて「将来の選択肢」を残す方向に寄せました。
判断基準は「今の最適」ではなく、将来の自由度でした。
もし最初からRFPを書くなら
この案件を、もし最初からRFPとして書き直すなら、設備スペックの前に、次の問いを明記すべきだったと考えています。
- この建物は、将来、電気を減らす可能性があるか(増やす前提で固定してよいのか)
- 空調と定常負荷を分けて設計するのか(季節負荷を“通年の電力負荷”として扱っていないか)
- 最大値で受電方式を決めるのか、想定内でキャップするのか
- 受電方式の選択責任は誰が持つのか(建築/設備/施主工事の責任分界を含む)
- 災害時・異常時の運用条件(何を優先し、どこまで通常業務を維持するのか)
この問いがRFPに書かれていれば、比較の軸は「価格」ではなく「将来コストと自由度」へ移ります。 ここから先は、学校・公共施設の事例も含め、RFP視点で体系化して整理します。