結論:通信インフラは分散している

IoT、物流Wi-Fi、監視カメラ、ローカル5G。通信インフラは、中央のデータセンターだけで成立するものではありません。

多くの通信拠点が現場に分散し、社会のあらゆる場所で稼働しています。

通信インフラもまた、物流と同じように大きく変化しています。これまで通信インフラは、巨大な設備によって構成されていました。 大型のデータセンターや大規模な通信局舎がネットワークの中心となり、そこから広い地域へ通信サービスを提供する構造です。 このモデルは長い間、通信ネットワークの基本形でした。

しかし現在、この構造は徐々に変わり始めています。IoTの普及、クラウドサービスの拡大、そしてローカル5Gなどの新しい通信技術によって、 通信設備は巨大な施設だけで構成されるものではなくなりました。むしろ小さな通信拠点が多数存在する分散型の構造へと変化しています。

物流センター、工場、商業施設、インフラ設備。こうした場所にはそれぞれ通信設備が設置され、現場の機器やセンサーを接続しています。 通信はもはや一部の施設だけで動くものではなく、社会のあらゆる場所に広がるインフラになっています。

そしてこの変化は、通信設備の数を大きく増やしています。これまで数カ所の設備で構成されていたネットワークが、 数十、数百、場合によってはそれ以上の小さな拠点によって構成されるようになっています。

つまり通信インフラもまた、産業と同じように分散化しているのです。

物流、通信、AI。これらはすべて電気で動くインフラです。

1. 分散通信拠点の増加

  • IoTゲートウェイ
  • ローカル5G
  • 物流Wi-Fi
  • 監視ネットワーク

これらはいずれも現場に設置される小型の通信拠点です。

IoTが通信拠点を増やしている

通信インフラの分散化を生み出している最大の要因の一つが、IoTの普及です。IoTとは、さまざまな機器や設備がネットワークに接続され、 データを送受信する仕組みのことです。センサー、カメラ、計測装置、産業機械など、多くの機器がネットワークに接続されるようになりました。

かつての通信は、人が使う端末が中心でした。電話、パソコン、スマートフォンなど、人が操作する機器がネットワークに接続されていました。 しかしIoTの時代になると、ネットワークに接続されるのは人の端末だけではありません。機械や設備そのものがネットワークに接続されます。

例えば物流センターでは、在庫管理システム、搬送ロボット、監視カメラ、環境センサーなどがネットワークに接続されています。 工場では、生産設備や検査装置がネットワークと連携しながら動作しています。農業では、温度や湿度を測定するセンサーが設置され、 環境データがリアルタイムで収集されています。都市インフラでは、交通監視カメラやエネルギー管理装置がネットワークに接続されています。

こうした機器は、必ずしも大きな通信施設の近くに設置されるわけではありません。倉庫、工場、農地、道路、橋梁など、 さまざまな場所に分散して設置されます。そのため通信設備も、機器が設置される場所に近い位置に配置される必要があります。

その結果、通信拠点の数は大きく増えています。かつては数カ所の通信局舎でカバーされていたネットワークが、 現在では多数の小規模拠点によって構成されるようになっています。アクセスポイント、ゲートウェイ、基地局、ローカルネットワーク装置などが、 それぞれの現場に設置されています。

つまりIoTの普及によって、通信インフラは巨大な集中設備から、小さな通信拠点が多数存在する分散構造へと変化しているのです。

2. 通信は停電に弱い

多くの通信設備は1〜3時間程度のバックアップしかありません。

しかし停電や災害時には、それ以上の時間にわたり通信が必要になる場面があります。

通信が止まると社会が止まる

通信は長い間、「便利なサービス」として認識されてきました。電話やインターネットは生活を便利にするものであり、 多少停止しても社会全体に大きな影響はないと考えられていた時代もありました。しかし現在では状況が大きく変わっています。 通信は単なるサービスではなく、社会インフラの一部になっています。

物流を例に考えるとわかりやすいでしょう。物流センターでは、入出庫管理システム、ハンディターミナル、搬送ロボット、監視カメラなどが ネットワークによって接続されています。通信が停止すると、これらのシステムは同時に機能しなくなります。 ハンディターミナルが使えなくなれば在庫管理が止まり、搬送ロボットが停止すれば倉庫内の作業が進まなくなります。 通信の停止は、そのまま物流の停止につながります。

工場でも同じことが起きます。生産設備はネットワークを通じて監視・制御されることが多くなりました。 設備の状態を監視するセンサー、品質検査装置、制御システムなどが通信ネットワークによって連携しています。 通信が停止すると、生産ラインの状況を把握できなくなり、安全上の理由からラインを停止せざるを得ない場合もあります。

都市インフラでも通信の役割は大きくなっています。交通監視システム、エネルギー管理システム、防災システムなど、 多くの設備がネットワークを通じて運用されています。通信が停止すると、これらのシステムは正常に機能しなくなります。 つまり通信は単なる情報の伝達手段ではなく、都市や産業を動かすための基盤になっているのです。

このように、通信は社会のさまざまな機能を支えるインフラになっています。そして通信設備が分散化している現在では、 数多くの小さな通信拠点が社会のあちこちに存在しています。もしこれらの拠点の通信が停止すれば、 その影響は一部の地域や施設にとどまらず、広い範囲に波及する可能性があります。

そのため通信拠点の安定運用は非常に重要です。通信設備が停止しないこと、そして万一停電などが発生しても一定時間は稼働し続けることが求められます。 ここで問題になるのが、通信拠点の電源です。

まとめ:通信を止めない電源

通信は社会の基盤インフラです。

分散通信拠点では長時間自律電源が必要になります。

分散通信拠点の電源問題

通信が社会インフラとして機能するためには、通信設備が安定して稼働し続けることが前提になります。 しかし、通信拠点が分散化するほど、この前提を維持することは簡単ではなくなります。 巨大な通信局舎であれば、大型の発電設備やバッテリーを設置できますが、小規模な通信拠点では同じような設備を設置することが難しい場合が多いからです。

実際、多くの通信設備は比較的小さな拠点に設置されています。例えば、IoTゲートウェイ、ネットワークスイッチ、アクセスポイント、基地局装置などです。 これらの設備は倉庫や工場、ビルの屋上、街路設備など、さまざまな場所に設置されています。 通信拠点は一つ一つが小規模でありながら、社会全体では数多く存在しています。

こうした通信設備の多くは、停電対策としてUPS(無停電電源装置)を備えています。 しかし従来のUPSは、短時間の停電を想定して設計されています。数分から数十分程度の電源保持を目的としている場合が多く、 長時間の停電に対応することが難しいケースも少なくありません。

都市部では停電が長時間続くことは比較的少ないかもしれません。しかし分散型の通信拠点は、必ずしも電力インフラが強固な場所に設置されるとは限りません。 倉庫、工場、農地、インフラ設備など、さまざまな場所に設置されるため、電源環境は拠点ごとに異なります。 そのため通信設備を安定して運用するには、短時間の停電対策だけではなく、より長い時間にわたって稼働を維持できる電源設計が必要になります。

さらに通信拠点が増えるほど、電源設備を一カ所に集中させることはできなくなります。分散した拠点それぞれで、一定の電源能力を確保する必要があるからです。 つまり通信インフラの分散化は、電源インフラの分散化も同時に要求します。

このように、通信拠点の電源問題は単なる設備の問題ではありません。分散社会のインフラをどのように維持するかという、より大きな設計の問題でもあります。

そしてこの問題は、通信だけに限ったものではありません。次に取り上げるエッジコンピューティングの分野でも、同じ問題が現れます。 AIやデータ処理が現場で行われるようになると、計算設備そのものが分散して配置されるようになります。 そのとき、エッジDCの電源をどのように確保するのかが新しい課題になります。

次回の記事では、このエッジDC(エッジデータセンター)について整理します。 AIによる自動化が進む社会では、データ処理はクラウドだけではなく、現場に近い場所で行われるようになります。 そしてそこでも、通信や物流と同じように、電源が重要なインフラとして位置付けられるようになります。

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※本シリーズは「物流 → 通信 → エッジDC」の順に読むと、分散社会で電源がインフラになる理由を最短で整理できます。