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リチウムイオン電池 国連勧告輸送試験UN38.3はリチウムイオン電池の品質や製品規格ではありません。


UN38.3は電池の品質や製品規格ではありません

UN 規格は、リチウムイオン電池自体の品質や製品規格ではなく、「輸送時の安全維持」つまり、輸入などの国際的な貨物の移動時の安全確保が目的ですので、これをもって製品使用時の安全と表記する製品については注意が必要です。

UN38.3には法的拘束力はありません

リチウムイオン電池の輸送規則は危険物の輸送に関する各国及び国際規則に統一性を持たせ輸送の安全を図るため、国際連合・経済社会理事会・危険物輸送及び分類調和専門家委員会(The United Nations Committee of Experts on the Transport of Dangerous Goods and on the Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals = CETDGGHS)が、「危険物輸送に関する勧告(Recommendations on the Transport of Dangerous Goods)」として策定しました。
表紙の色から「オレンジブック」と呼ばれています。

勧告自体は法的拘束力を持ちませんが、危険物の運送の際に使用すべき品名、国連番号(UN no.)、危険物クラス(Hazard Class)、容器、包装などを定めています。
「危険物輸送に関するモデル規則(Recommendations on the Transport of Dangerous Goods : model regulations )」の形式で提示されています。
「試験方法及び判定基準のマニュアル(Recommendations on the transport of dangerous goods : manual of tests and criteria)」が1986年以降別冊として刊行されます。

リチウムイオン電池の試験方法と基準はこのマニュアルのセクション38.3に規定され、リチウムイオン電池の国際輸送(船舶、航空および鉄道)には、この試験に合格することが求められています。
これをU38.3と略称していますが、特定の安全認証と言う性格のものでは無く、テストサマリー(試験結果要約)として提供され、輸出時、輸送時に必要不可欠な書類として利用されるものです。

UN38.3はリチウムイオン電池の品質や製品規格ではなく、「輸送時の安全維持」が目的とされ、合格には試験項目のうち、全セルあるいは全組電池が各試験で合格判定を得る必要があります。

日本語版は「英和対訳 危険物輸送に関する勧告 試験方法及び判定基準のマニュアル 第5版 」として化学工業日報社より出版されています。
https://www.chemicaldaily.co.jp/610-7/

最新版は、本編第22版(2021)【A159-D105】
マニュアル第6版(2015)【A159-B1575】

UN 試験の内容は以下の通り。
試験はT1~T8で構成され、T1~T5は同一電池で実施、T7は組電池、T8は単電池が対象。

T1 低圧(航空輸送時の低圧状態を想定した試験)
(輸送時の安全維持より)6 時間以上保持などの事項。

T2:温度試験(極端な温度変化を想定した試験)
極端な温度変化で電池の密閉性および電池内部の接続を評価。

T3:振動(輸送時の振動を想定した試験)
振動数を変化させ、電池のお互いに垂直な 3 方向での振動試験。

T4:衝撃(輸送時の衝撃(G)を想定した試験)
電池にパルス波を与え、電池の 3 軸それぞれ正負方向に衝撃を与える。

T5:外部短絡(外部短絡を想定した試験)
電池温度が 170°Cを超えず、試験終了後 6 時間以内に破裂・発火が無いこと。

T6:衝突(重量物による衝突を想定した試験)

T5:外部短絡と同様、電池温度が 170°Cを超えず、試験終了後 6 時間以内に
破裂・発火が無いことなど輸送時の安全維持の特徴がみられる。

T7:過充電(過充電状態の耐久力を評価する試験。組電池対象)
試験継続時間は 24 時間で、さらに試験後 7 日間に破裂・発火が無いこと。

T8:強制放電(過放電後の転極を想定した試験。単電池対象)
最大電流で定格容量を放電させる。試験後 7 日間に破裂・発火が無いこと。

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