Overload
UPSの負荷故障・過負荷はなぜ起きる?
UPSが鳴り止まない、焦げ臭い、Overloadが出る原因を、現場事例で整理しています。
Original: https://www.ieee802.co.jp/articles/article-019-instant-power-plant-01.php
Publisher: 慧通信技術工業株式会社 (Kei Communication Technology Inc.)
出典: 慧通信技術工業株式会社 「 止まらない工場をつくる瞬停対策|UPS電源設計と可搬型UPS 」
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工場の停止トラブルの多くは、設備故障ではありません。
JIS規格が定義する「1分以内の瞬停(瞬時停電)」による電源変動によって、
PLC・インバータ・サーボモータが停止し、ライン全体が止まるケースは珍しくありません。
さらに現場では、「1分以内だから瞬停」「1分以上だから停電」といった技術的な区分はほとんど共有されておらず、
「なんか一瞬落ちた」「雷が近かった」という曖昧な表現のまま、真の原因が分からない停止として処理されていることも多いのが実情です。
本記事では、工場の電源トラブルの中でも見過ごされがちな「瞬停」に焦点を当て、 なぜ1分以内の電源断がライン全体の停止につながるのか、 なぜ従来のUPSだけでは守り切れないのか、 そして「止まらない工場」を実現するために、どのような電源設計が必要なのかを解説します。
瞬停対策は、工場全体を一度に守ることだけが正解ではありません。 まずは、短時間の電圧低下で停止しやすく、復旧に時間がかかる設備から優先して守ります。
JIS:1分以内=瞬停 ≠ 1分以上=停電。
工場ライン=どちらでも停止
瞬停とは、JIS規格で「1分以内の極めて短い停電」と定義され、主に落雷による瞬時電圧低下(瞬低)が原因です。
この“1分以内の停電”は、経営層や監査部門にはほとんど共有されていませんが、現場では生産ライン停止を引き起こす重大なインシデントとなる重大インシデントです。
PLCやインバータ、サーボモータなどの制御機器は、 電源電圧が規定値から外れた瞬間に保護動作を行い、安全側に停止します。これは「装置を壊さない」ために必要な設計ですが、 結果として「設備は無事だがラインは止まる」という現象が発生します。
さらに厄介なのは、瞬停の影響範囲が工場全体に広がることです。 送電線上で発生した瞬時電圧低下は、同一系統に接続された多数の工場に同時多発的な瞬停を引き起こします。 そのため、「工場単独で発生させたトラブルではないのに、自社だけが復旧に苦労する」という状況が生まれます。
これらが同時に発生すると、たとえ停電時間が数秒〜数十秒であっても、 復旧に30分〜数時間を要するケースも珍しくありません。そして、この復旧時間こそが、生産ロスや品質トラブル、監査指摘の温床となります。
瞬停対策では、すべての負荷を同じレベルで守る必要はありません。 停止すると復旧時間・品質確認・監査対応に影響する設備から優先順位を付けます。
| 対象設備 | 瞬停時に起きる問題 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| PLC・制御盤 | 停止、再起動、I/O異常、手動復旧 | 制御電源を無瞬停UPSで保持する |
| インバータ・サーボ | トリップ、位置ズレ、原点復帰、アラーム停止 | 制御系・重要負荷を切り分けて保持する |
| 検査装置・計測機器 | 検査中断、測定値欠落、品質確認やり直し | 検査PC・計測機器をUPSで保護する |
| 通信・PoE・ログ機器 | 通信断、工程ログ欠落、トレーサビリティ不備 | PoEスイッチ・ルータ・記録装置をまとめて保持する |
工場現場でヒアリングをすると、瞬停に起因するトラブルはしばしば 「たまたま」「雷が近くて」「ブレーカーが一瞬落ちた」といった形で報告されます。 これらの表現は、現場の感覚としては正しいのですが、技術的な原因分析や再発防止策の議論にはつながりません。
原因不明トラブルとして処理されると、FMEAや8Dレポートなどの品質手法においても、 「再発防止策」が曖昧になりがちです。 実際には瞬停が原因であっても、報告上は「設備不具合」「センサーの感度設定」「作業者ミス」などに分類され、 本質的な電源対策が後回しにされるケースもあります。
その結果、同じパターンの停止トラブルが年に数回、あるいは雷シーズンのたびに繰り返されることになります。 これらは一見バラバラの事象に見えて、実はすべて「瞬停」による電源品質問題が根本原因だった、というケースも少なくありません。
本来であれば、瞬停イベントは「工場全体のBCP(事業継続計画)」と紐づけて管理すべきリスクです。 しかし、停電と違って「照明が完全には消えない」「一部の機器だけが落ちる」といった曖昧な現象のため、 経営層や監査部門の目に見えにくく、対策投資の優先度が上がりにくいのが実情です。
だからこそ、現場の立場から瞬停を正しく定義し、その影響を「ライン停止時間」「不良率」「監査指摘」といった指標で可視化することが重要です。 その第一歩が、「瞬停は“止まらない工場”への第一歩」という発想の転換なのです。
瞬停対策として真っ先に挙がるのがUPS(無停電電源装置)です。 しかし、現場でヒアリングをすると、「UPSを入れていたのに止まった」「バッテリーが死んでいた」という声も多く聞かれます。 これは、UPSそのものが悪いわけではなく、設計思想と運用ルールが現場の実態に合っていないことが原因です。
一般的な据置型UPSは、サーバールームや情報インフラを守ることを前提に設計されています。 ところが、工場現場で求められるのは、
つまり、「情報システムを守るUPS」と「工場ラインを守るUPS」では、求められる役割が根本的に違うのです。
特に深刻なのが、バッテリー上がり問題です。 多くのUPSは、バッテリーの定期交換や負荷試験を前提としていますが、 実際には「5年以上触っていない」「いつ交換したか分からない」という現場も少なくありません。 その結果、いざ瞬停が発生したときに「UPSはあるのに守ってくれない」という事態が起こります。
工場の瞬停対策において重要なのは、単にUPSを設置することではなく、 「どの設備を、どの電源系統で、どのレベルまで守るのか」を設計することです。 これこそが、「電源設計の新常識」として押さえておくべきポイントです。
工場の瞬停対策として近年注目されているのが、可搬型UPSです。 従来の据置型UPSが「守る場所を決めて据え付ける」発想であるのに対し、 可搬型UPSは「守りたい設備のそばへ運んで接続する」という発想に基づいています。
例えば、次のようなシーンで可搬型UPSが活躍します。
可搬型UPSの最大のメリットは、「設置工事のハードルが低い」ことです。 一般的な三相電源系統に常設するUPSと比べて、可搬型UPSは単相200V/100V系統に対応し、 コンセントレベルで接続できるモデルもあります。 これにより、大規模な配線工事や停止計画を伴わずに、段階的な瞬停対策を始めることができます。
慧通信技術工業のHPPHBBシリーズUPSは、 こうした可搬型UPSのコンセプトを具現化した製品群です。 工場の現場で求められる可搬性・堅牢性・保守性を重視し、 「まずはこのラインから守りたい」という現場の声に応える設計となっています。
可搬型UPSは、工場全体を一度に工事するのではなく、 停止損失が大きいライン、品質に直結する工程、検査・ログ機器などから段階的に導入できます。 瞬停が多い季節だけ重点ラインへ配備する運用にも向きます。
瞬停対策の中核となる技術のひとつが、双方向インバーターです。 従来のラインインタラクティブ方式UPSでは、商用電源からの給電を基本とし、 停電時のみインバータへ切り替える方式が一般的でした。 しかし、この方式では切替時に数ミリ秒〜数十ミリ秒の瞬断が発生し、 高速な制御機器にとっては誤動作の原因となり得ます。
これに対し、双方向インバーターを用いた常時インバータ給電方式では、 平常時からバッテリーとインバータを介して負荷に電力を供給します。 商用電源はあくまでインバータ側への給電源として扱われるため、 商用側で瞬停が発生しても負荷側には瞬断が発生しません。
さらに、インバータを介することで、
これにより、「ライン停止ゼロ」「PLC再起動ゼロ」を実現できます。
工場用途では、UPSの容量だけでなく、停電時の切替時間、出力波形、インバータ負荷への適合性が重要です。 PLC・サーボ・通信機器を守る場合は、常時インバータ給電や双方向インバーターの考え方まで確認してください。
瞬停は避けられない障害ですが、対策すれば確実に改善できます。
可搬型UPSと双方向インバーターは、工場の電源BCPを底上げする“新しい標準”です。
停電・瞬停による損失額を定量化すると、「1回の停電で投資回収」というシナリオも珍しくありません。
損失シミュレーションの考え方については、
停電・ランサム被害、備えの差が企業価値を分ける ─ シミュレーションが示す「1回の停電で投資回収」の現実
で詳しく解説しています。
瞬停は自然災害がなくても発生する、「避けられない障害」です。 この領域を制御できるかどうかが、工場の安定稼働を大きく左右します。
監査や是正の場面では、瞬停を「偶発的な外乱」と片付けてしまうのではなく、
改善の起点として可視化することが重要です。
詳しくは、
“偶発的な外乱?”──瞬停リスクを“改善ポイント”に変える方法
もあわせてご覧ください。
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