UPSの「負荷故障(過負荷)」とは何か

UPSの負荷故障(Overload)は、接続している機器の合計消費電力がUPSの最大出力を超えた状態で発生します。 ここで重要なのは、過負荷の多くはUPSが壊れたのではなく、 壊れないために止まった(保護動作)であることです。

よくある検索キーワード(現場の叫び)

  • UPS ピー 鳴り止まない
  • UPS 焦げ臭い / UPS 溶けた
  • UPS 繋いだ瞬間 落ちた
  • UPS overload even with no load(何も繋いでいないのに過負荷)
  • UPS short circuit fault(短絡故障)

同じ現象でも原因は複数あります。だからこそ「課題→判断→解決」で切り分けます。

なぜUPS過負荷は「表に出ない」トラブルなのか

  • 恥の意識・単純ミス:掃除機やストーブを繋いだ、など初歩的な原因は公開されにくい
  • 専門用語の壁:「負荷故障」「短絡」「突入電流」を知らないと検索してもメーカーFAQに吸い込まれやすい
  • 買い替え文化:小型UPSは修理より買い替えが早く、原因が記録されずに消える

つまり、現場では多いのに集合知が薄い。だから、あなたの現場に当てはめやすい「具体例」で整理します。

代表的な事例7選(課題→判断→解決)

ここからは、現場で“本当に多い”パターンを並べます。似ている事例が1つでも当てはまれば、切り分けは一気に速くなります。

事例① 複合機・レーザープリンターを繋いだ瞬間にUPSが落ちた

課題:普段は安定しているのに、印刷開始の瞬間だけUPSが警告音を発して停止する。

判断:レーザープリンターは定着ユニットの加熱で突入電流が発生し、瞬間的に電流が跳ね上がります。 UPSはこの“瞬間の山”を過負荷として検知して保護動作します。見た目は「突然壊れた」ですが、原因はプリンター側にあることが多いです。

解決:原則、プリンターはUPSに繋がず壁コンセント系統へ分離します。 UPSはサーバー/NW機器/PoEなど「守るべき機器」に専念させるのが再発防止の王道です。

実測動画(客先実機):プリンター電源ON時の突入電流

突入電流は“瞬間”なので、文章より動画のほうが一発で納得できます。ここを押さえると、過負荷トラブルの切り分けが速くなります。

事例② 「ついで」の家電接続で容量オーバー(ストーブ・掃除機)

課題:冬に電気ストーブ/ひざ掛けを挿した、夜間に清掃員が掃除機を挿した。結果、UPSが落ち、サーバーまで巻き添え停止。

判断:ストーブや掃除機、ドライヤー等は消費電力が非常に大きく、一般的な小型UPSの許容量を瞬時に超えます。 しかも「一瞬」なので、翌日には“何が起きたか分からない”状態になりがちです。

解決:物理的に挿せない運用(カバー・注意ラベル・設置場所の見直し)に加え、 ログと通知で「いつ負荷が跳ねたか」を押さえると、勝手接続が止まります。

事例③ 機器を増やしていないのにOverloadが出る(疑似過負荷)

課題:導入から数年。停電でもないのにOverloadが点灯し、バックアップが効かない。

判断:バッテリーが寿命に近づくと内部抵抗が増え、同じ負荷でも電力を供給しきれず、 UPSが「過負荷」と誤検知することがあります(疑似過負荷)。

解決:セルフテスト結果とログで兆候を掴み、計画交換に寄せます。 「停電が起きて初めて気づく」運用から抜けるのがポイントです。

事例④ 接続機器側の故障(内部短絡)で、繋いだ瞬間に落ちる

課題:特定のPC/サーバーを繋いだ瞬間に「ガチッ」という異音、火花、即シャットダウン。

判断:接続機器の電源ユニット(PSU)の故障で内部短絡している可能性があります。 同じ機器を壁コンセントに挿してもブレーカーが落ちるなら、機器側短絡が濃厚です。

解決:UPSを疑う前に、接続機器を隔離して点検・交換へ。 短絡は火災リスクなので、通電試験を繰り返さないのが安全です。

事例⑤ ケーブルの物理ダメージ(踏みつけ・噛み跡)で短絡

課題:デスク移動後から不安定。椅子のキャスターで踏んでいた/動物がケーブルを噛んだ。

判断:被覆が破れて芯線同士が接触すると短絡し、アーク放電(火花)が出ることがあります。 焦げ臭さや溶けの原因にもなり得ます。

解決:ケーブルは「消耗品」ではなく「設備」として扱い、 配線モール・固定・定期点検をルール化します。異臭や発熱があれば再通電しない。

事例⑥ 全負荷を外してもエラーが消えない(UPS本体の内部故障)

課題:何も繋いでいないのに、電源ONだけで負荷故障・短絡エラーが出る。

判断:UPS内部のインバータ回路やコンデンサの寿命・熱劣化で、内部短絡状態になっている可能性があります。

解決:無理に復旧させず交換・診断へ。再通電はリスクが高いので、現場では切り離しを優先してください。

事例⑦ 埃(ホコリ)+湿気でトラッキング(焦げ臭い・煙)

課題:ラック裏や窓際など、掃除が届きにくい場所で焦げ臭い匂いとともにエラーが出る。

判断:埃が湿気を吸って絶縁が崩れ、通電して短絡する「トラッキング現象」の可能性があります。

解決:再通電せず切り離し。設置環境(清掃・湿度・通気)を見直し、 “兆候をログで拾う”運用に変えると、発煙/焼損まで進む確率を下げられます。

危険信号:「焦げ臭い」「溶けた」は“判断”を飛ばして即停止

次の症状がある場合、原因調査より安全確保を優先してください(短絡やトラッキング等の可能性があります)。

  • 焦げ臭い匂いがする
  • ケーブルやプラグが熱い/変形している
  • 火花/異音/煙
  • UPS本体が異常に熱い

解決の考え方:課題は「過負荷」ではなく「見えないこと」

過負荷は“瞬間”に起きることが多く、翌日には「誰が何を繋いだか」が分からなくなります。 再発を止めるには、次の3点に寄せるのが近道です。

  • リアルタイム負荷(最大出力の何%か)を見える化する
  • ログと通知で、しきい値超過の瞬間を“証拠”として残す
  • セルフテストで、疑似過負荷(バッテリー劣化)を事前に検知する

HPPHBB0101 + P2B2Viewerでの解決(見える化→通知→予防)

解決① リアルタイムの電力モニタリング

P2B2Viewerで「今、最大出力の何%を使っているか」を確認できると、 「あと1台増やして大丈夫か」が感覚ではなく数値になります。

解決② ログ記録・通知(“夕方だけ落ちる”を潰す)

過負荷の瞬間や停電時イベントを通知し、ログに残すことで、 勝手接続や時間帯依存の現象を後から追えます。 「清掃の時間に掃除機が挿されていた」など、再発原因が見えるようになります。

解決③ セルフテスト(自己診断)で寿命兆候を先取り

疑似過負荷は「突然来たように見える」のが厄介です。 定期セルフテストの結果を追えると、停電前に計画交換へ寄せられます。

解決④ 保護回路(短絡・過電流を高速遮断)

短絡や過電流は“トラブル”ではなく“事故”になり得ます。 高速検知・遮断の設計は、UPSと接続機器へのダメージを抑えるための重要な条件です。

解決事例:複合機の突入電流でも“止めないFAX”を実現

複合機・レーザープリンターの変動負荷(突入電流)はUPSが苦手。 しかし、設計側で“止めない”運用に寄せることは可能です。 社名公開OKの強い解決事例として、こちらも併読すると判断が速くなります。

複合機の変動負荷・突入電流はUPSが苦手。当社の「双方向インバーター」で“止めないFAX”を実現

よくある質問(ミニFAQ)

まずはこの5問を押さえると、現場の切り分けが速くなります。一次対応の詳細はFAQへ。

UPSが「ピー」と鳴り止まないとき、まず何を確認すべきですか?
まず「何を繋いでいるか」を確認し、複合機・レーザープリンター・掃除機・ストーブ等の大電力機器が混ざっていないか見てください。次にOverload(過負荷)/Short(短絡)/Battery(バッテリー)等の表示を確認。焦げ臭い・発熱・変形がある場合は再通電せず切り離しを優先してください。
複合機・レーザープリンターをUPSに繋ぐと落ちるのはなぜ?
レーザープリンターは電源投入や印刷開始時に突入電流が発生し、瞬間的に電流が跳ね上がります。この“瞬間の山”がUPSの最大出力を超えると、UPSは過負荷として保護動作(警告音・出力停止)を行います。原則プリンターは壁コンセント系統へ分離するのが安全です。
何も増やしていないのにOverloadが出るのは故障ですか?
バッテリー劣化による「疑似過負荷」の可能性があります。寿命が近いバッテリーは内部抵抗が増え、同じ負荷でも供給しきれず過負荷と誤判定することがあります。セルフテストとログで兆候を掴み、計画交換に寄せると事故が減ります。
焦げ臭い/溶けた場合、原因調査してもいい?
焦げ臭い・溶け・火花・煙は短絡やトラッキングなどの危険信号です。原因調査より安全確保(切り離し、再通電しない)を優先してください。ケーブルやプラグの変形・発熱がある場合は特に注意が必要です。
HPPHBB0101+P2B2Viewerで、過負荷トラブルは何が変わりますか?
P2B2Viewerでリアルタイム負荷(最大出力の何%か)を見える化でき、しきい値超過の瞬間をログと通知で押さえられます。さらにセルフテストでバッテリー劣化を事前検知できるため、「起きてから気づく」運用から「起きる前に潰す」運用に変わります。

まとめ:UPS過負荷は「現場ミス」ではなく「設計で防げる課題」

  • プリンターの突入電流は“瞬間”に跳ねる。UPSが落ちても不思議ではない
  • 勝手接続(掃除機・ストーブ等)はデータがないと止められない。ログと通知が効く
  • 何も増やしていないのに過負荷なら、疑似過負荷(バッテリー劣化)を疑う
  • 焦げ臭い/溶けは危険信号。原因追及より切り離し(再通電しない)
  • 再発防止の最短ルートは「見える化→通知→予防」