1. はじめに:二次電池は「汎用品」では済まない時代です

近年、自治体が整備する防災設備や重要インフラにおいて、バックアップ電源として二次電池(リチウムイオン電池等)の導入が急速に進んでいます。 停電時にも通信設備や監視装置を稼働させるため、二次電池は欠かせない存在です。

一方で二次電池は、内部短絡や経年劣化などを契機として熱暴走や火災に至るリスクを持ちます。 重要インフラ用途では、「規制されていないから」ではなく、 「安全を客観的に担保できる仕様があるか」が問われます。

2. 原子力施設でも実際に起きたリチウム電池火災(公表事例)

リチウムイオン電池のリスクは仮定の話ではありません。原子力施設構内においても、リチウム電池火災が発生し、原因調査結果が公表されています。 本稿では「事例を読む」こと自体が目的ではなく、調達仕様へ落とすために必要な教訓に集中します。

公表資料(URL)

※本稿は、公表資料を「全国自治体の調達実務へ一般化する」目的で再構成しています。

調査結果では、火災の要因としてセル内部の短絡、経年劣化の進行などが挙げられています。 さらに、熱暴走に伴う可燃性ガス噴出が火災につながった経緯も整理されています。 重要なのは「起き得る」ではなく、起きたことを前提に、調達・検収・保守の設計へ反映することです。

3. 最大の教訓:「汎用品扱いで仕様を定めていなかった」

この事例で特に重要なのは、背景要因として「汎用品であることから調達当時は詳細な発注仕様を定めていなかった」と指摘されている点です。 これは「現場の不注意」というより、調達構造の問題です。

事故の根底には、次のような要求が調達仕様に組み込まれていなかった可能性があります。

  • 電池の安全規格適合(何に適合しているか/証明の仕方)
  • 試験成績書提出(何の試験を、どのロットで、誰が実施したか)
  • 検収条件(資料が揃わない場合は受領しない、という“止める権限”)
  • 劣化管理(寿命・交換周期・前倒し交換条件)

これは原子力施設に限らず、全国自治体の防災設備調達でも共通し得る課題です。

4. 事故後に導入された再発防止策

島根の事例では、事故後に再発防止策として点検項目の追加、交換周期の設定(8年)などが導入されています。 このことは、二次電池が「設置して終わり」ではなく、継続的管理と仕様化が不可欠な設備であることを示しています。

5. メーカー自身も重要インフラ用途には慎重です

国内メーカーの資料でも、原子力発電所制御等、人命や公共機能に重大な影響を及ぼす設備には使用しないこととする注意書きが明記されている例があります。 このように、メーカー側でも重要インフラ用途への適用には慎重な取扱いが求められています。

6. 全国自治体に必要なのは「最低安全基準」です

現在、多くの自治体調達では二次電池に関して、安全規格が仕様に書かれていない、BMU/BMS要件が抜けている、検収で止められない、 という状況が起こり得ます。今後、ナトリウムイオン電池など新型電池が普及すれば、同じ問題が再発する可能性があります。

そのため私たちは、自治体が参照できる形で「二次電池調達における最低安全基準」を整理し公開します。

二次電池調達における最低安全基準(概要)

  • IEC 62133-2等の国際安全規格適合
  • UN 38.3試験結果
  • BMU/BMS必須(セル監視・異常遮断)
  • SOC監視・サイクルカウント管理
  • Fail-safe安全停止
  • 延焼防止構造・自己消火機能
  • 製造者・型式・ロットのトレーサビリティ
  • 提出資料が揃わない場合は受領しない(検収拒否条件)
  • Na-ion等新型電池にも同様適用(技術中立)

※詳細条文・チェックリストは別紙としてリクエストフォームよりご請求ください。

7. 提言:指針化が必要です

本稿の目的は特定組織の責任追及ではありません。公開事例から得られた教訓を全国自治体の調達実務に反映し、 重要インフラの安全性と説明可能性を高めることにあります。

原子力防災設備や自治体防災設備における二次電池調達について、原子力規制庁(NRA)および総務省消防庁等が連携し、 最低安全要求・検収条件を指針として整理することが望まれます。

国際基準との整合:二次電池火災を「外部火災ハザード」として扱う

二次電池火災は、設備内部の不具合としてだけでなく、重要設備の可用性を損なう「外部火災ハザード」として整理すべきです。 IAEA安全基準では、原子力施設は外部火災・爆発・有害物質等の「人為起因外部事象」を設計・評価に組み込むべきと明示されています。 自治体調達における二次電池火災も、この枠組みで「外部火災ハザード」として扱うことが合理的です。

参考(URL)

またFEMAの公式ガイダンスでは、原子力発電所事故時の情報発信について、州・地方自治体が第一次責任を持ち、 住民に対し迅速で信頼できる情報提供が必要であることが明確に述べられています。 これは「自治体調達仕様が不備なら防災責任を果たせない」という論理に直結します。

参考(URL)

別紙:RFPテンプレート(最低安全要求)— ダウンロード

二次電池(Li-ion / LiFePO4 / Na-ion等)の調達で最低限必要となる安全要求を、自治体RFPにそのまま貼れる条文テンプレとして別紙にまとめています(見出し階層版)。 本文では要点のみ述べ、詳細条文は別紙をご参照ください。

別紙に含まれる内容(概要)

  • 適用範囲(技術中立:新型電池にも同等適用)
  • 必須安全規格(IEC 62133-2 / UN 38.3、同等性の示し方)
  • BMU/BMS必須要件(セル監視・バランシング・異常時遮断、電池単体提案の禁止)
  • 状態監視(SOC外部取得、サイクル履歴、監視I/Fの明示)
  • Fail-safe安全停止(異常検知対象、復帰条件、無制限自動復帰の禁止)
  • 熱暴走・火災対策(難燃筐体、ガスベント、延焼防止、自己消火等)
  • トレーサビリティ(製造者・型式・ロット/シリアル、出元不明セル禁止)
  • 納入前提出資料と検収条件(資料不備は受領しない=検収拒否条件)

※別紙は「自治体RFP(仕様書)にそのまま貼れる条文テンプレート(見出し階層版)」として整理しています。

別紙:RFPテンプレをダウンロード

※リクエストフォームよりご請求ください。

おわりに

二次電池は社会に不可欠な技術です。しかし重要インフラ用途では、「規制されていないから」ではなく 「安全を客観的に担保できる仕様があるか」が問われます。 全国自治体が安心して調達できる仕組みづくりに寄与するため、今後も提案を続けてまいります。

※本稿は一般的情報提供を目的としています。個別案件(温度条件、設置環境、監視方式、保守体制)に応じて仕様は調整が必要です。

参考リンク(URL)