非常用発電機が「動かない」理由を分解する
非常用発電機が機能しない理由は、一つではありません。 始動しない、起動後に停止する、燃料や補給が続かない、切替が成立しない、 発電していても必要な負荷へ電力が届かない、といった位置に分けて確認します。
1. 不始動
始動用バッテリー、制御系、原動機、点検状態などにより、始動指令が出ても発電機が立ち上がらない。
2. 起動後停止
起動には成功しても、冷却、過負荷、保護動作などにより長時間運転へ移行できない。
3. 燃料・補給が続かない
備蓄量に加え、道路寸断、補給体制、燃料品質などが長時間運転の条件になる。
4. 切替が成立しない
発電機が出力していても、切替盤や制御条件が成立しなければ非常回路へ電力は移らない。
5. 発電しているが、必要負荷へ届かない
受電回路、非常回路、保護協調、容量、負荷優先順位を確認し、重要負荷まで電力が届く経路を確保する。
停電から負荷復帰までを、時系列で確認する
BCPでは、停電発生から重要負荷が安定して復帰するまでを一つの時間軸で確認します。 各段階の成立条件を順に追うことで、復旧作業と代替電源の役割を決められます。
| 段階 | 成立条件 | 次に確認すること |
|---|---|---|
| 停電直後 | 重要負荷への連続給電を維持する | UPSの保護範囲と保持時間 |
| 始動 | 始動指令に対して原動機が立ち上がる | 始動系・制御系 |
| 出力安定 | 電圧・周波数・負荷受入条件が安定する | 発電機側・負荷条件 |
| 切替 | 切替盤が非常電源側へ移行する | 切替・インターロック条件 |
| 受電・配分 | 重要負荷へ必要電力が届く | 非常回路・容量・優先順位 |
| 長時間運転 | 燃料・冷却・監視を継続できる | 縮退運転・次の供給源への引継ぎ |
停電直後はUPSで重要負荷への給電を維持する
発電機は、停電検知、始動、回転・出力安定、切替という過程を経て負荷へ給電します。 PLC、通信、サーバ、医療・監視機器など連続給電が必要な機器は、その時間をUPSで保持します。瞬断を許容しない負荷の切替条件は、0ms無瞬断と切替時間の記事を参照ください。
発電機は起動後の長時間・大容量給電を担い、UPSは停電直後から重要負荷への連続給電を担います。
可搬型UPSは、停電直後から次の電源までをつなぐ
HPPHBB0101は、停電直後に重要負荷を無瞬断で維持し、発電機が起動・切替するまでの時間をつなぎます。既設UPSの保護機能を残したまま保持時間を延ばす構成は、既設UPSを活かした長時間化を参照ください。 発電機の復旧に時間が必要な場合は、通信、制御、計測、復旧端末などへ給電を集中し、復旧判断を継続できる時間を確保します。
0ms無瞬断
停電発生時から保護対象への給電を維持し、発電機の始動・切替判断までの時間を確保します。
重要負荷へ再配置
通信、制御、計測、復旧端末など優先度の高い負荷へ電力を集中できます。
複数供給源へ接続
発電機、商用電源、停電時に利用できる太陽光など、利用可能な供給源へ順次引き継ぎます。
復旧判断を継続
発電機・切替盤・受電設備を確認している間も、記録・通信・監視を維持します。
長時間運転は、蓄電池から次の供給源へ引き継ぐ
UPSや蓄電池は、蓄えた電力を必要な時間だけ重要負荷へ供給します。 長時間の停電では、発電機、停電時に利用できる太陽光、車両給電、復旧した商用電源などへ接続し、給電時間を延ばします。発電機とUPS・蓄電池・太陽光の役割分担は、既存の非常用電源を活かすハイブリッド化を参照ください。
停電後の時間軸に合わせて、どの供給源へ、いつ引き継ぐかを決めます。
停電・道路寸断下でも通信を継続する電源を実装する
防災行政無線のように災害時の通信継続が必要な設備では、系統停電と道路寸断を同時に想定します。 熊本県五木村の事例では、無人中継局に自立型電源を実装し、停電・道路寸断下でも通信機能を継続する構成を採用しています。
大規模災害では、複数の供給経路を時間軸でつなぐ
大規模災害では、停電に加えて道路寸断、通信障害、断水、施設設備の故障が同時に発生することがあります。 発電機の燃料補給、UPS・蓄電池による保持、太陽光や車両給電、外部支援への引継ぎを複数の経路として設計すると、重要機能を維持できる時間を延ばせます。さらに、一系統の故障や保守中でも必要な機能を残し、本復旧まで通常の復旧プロセスを継続できる構成については、N+1・冗長・予備機を本復旧までの時間で考えるを参照ください。
重要負荷へ電力が届き続ける経路を確認する
非常用発電機が「動かない」という事象には、不始動、起動後停止、燃料・冷却、出力安定、切替、受電・配分という複数の停止位置があります。 停電発生から重要負荷までを時系列で追い、停止位置を特定すると、対策すべき設備と運用を選べます。
UPSで停電直後の重要負荷を連続給電し、発電機の始動・出力・切替を確認しながら、必要に応じて縮退運転へ移ります。 その先を、復旧した発電機、太陽光、車両給電、商用電源など利用可能な供給源へ引き継ぎます。
停電を検知する → UPSで重要負荷を連続給電する → 発電機の始動・出力を確認する → 切替・受電・配分を成立させる → 必要に応じて縮退運転へ移る → 次の供給源へ引き継ぐ
参考資料
停止位置が分かれば、次に確認する対策が決まる
起動したが、途中で停止した
事例研究 非常用電源はそのとき使えなかった|JCHO熊本総合病院発電機停止と、人吉医療センター・NEXCOに見るフェイルソフトBCP
長時間運転試験、記録、縮退運転から、設備の一部を失った後も重要機能を継続する条件を確認します。
発電しているが、負荷へ届かない
非常用電源の本質は「受ける設備」にある|非常用受電設備と受電回路の重要性
供給源 → 切替 → 受電 → 配分 → 負荷 → 監視の電源経路を確認します。
発電機と他の電源を役割分担したい
既存の非常用電源を活かす発電機のハイブリッド化という現実解
発電機の大容量・長時間給電を活かし、UPS、蓄電池、太陽光へ用途と時間に応じて役割を分けます。