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慧通信技術工業株式会社(Kei Communication Technology Inc.)「97.3%がバッテリー切れで止まる防災無線──中継局の“止まらない設計”としての電源自律化(不便益)」

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防災行政無線 / 中継局 / 長期停電 / 電源自律化 / 不便益 / 予算化・標準化提言

97.3%がバッテリー切れで止まる防災無線 ──中継局の“止まらない設計”としての電源自律化(不便益)

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慧通信技術工業株式会社

災害時の情報伝達は、防災行政の根幹です。しかし長期停電下では、防災行政無線(同報系)が停止し、 親局が稼働していても住民に届かない事態が起こり得ます。山間部・孤立可能性地域では、 停電だけでなく「アクセス不能(燃料や人が運べない)」が先行し、従来の復旧モデル(止まったら直す)が成立しにくい場合があります。

本稿は、総務省・消防庁資料の整理にもとづき、中継局の止まらない設計として 中継局の電源自律化を提言します。方式は一つに限定せず、 LPガス発電+燃料貯蔵、燃料電池、蓄電池主体の長時間バックアップ、太陽光併用等を 地域条件に応じて選定します。これは平時の利便(系統常時給電)を手放すことで非常時の接続性を得る構造であり、 本稿では「不便益」として工学的に位置づけます。

対象:自治体の防災・危機管理、通信設備、地域防災計画担当者。中継局の長期停電・孤立対策を確認する段階。

論点:親局から住民までの伝達経路を確認し、中継局に必要な継続時間と電源自律化の要件を判断する。

防災行政無線:中継局の止まらない設計(電源自律化)

1. 背景:長期停電で顕在化した「バッテリー切れ」の停止

総務省資料では、災害時に防災行政無線設備が使用不可となった要因として、非常用電源装置のバッテリー切れが中心であることが示されています。 令和元年房総半島台風では、千葉県内で使用不能となった無線設備365局のうち335局が非常用電源を原因とし、その335局のうち326局(97.3%)がバッテリー切れでした。 長期停電下では「非常用電源がある=安心」という前提が成立しにくく、電源の持続性と保守性が論点になります。

災害時における情報通信の確保に関する調査 -市町村防災行政無線を中心として-(総務省):

https://www.soumu.go.jp/main_content/000721641.pdf

平成23年版 消防白書 第3節「避難の状況」:

https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h23/cat-2/3/574.html

2. 親局・中継局のどちらが止まっても、防災行政無線は届かない

防災行政無線は、親局、中継局、子局などで構成される一連の通信経路です。 親局が正常でも中継局が停止すれば、その先へ情報を届けることはできません。 逆に、中継局が稼働していても親局が停止すれば、同様に情報伝達は成立しません。

つまり、防災行政無線は、通信経路を構成する設備が同時に機能して初めて成立する AND条件のシステムです。 どこか一つの設備が停止すると、その経路全体が停止・停波する可能性があります。

その中でも山間部の中継局は、商用電源の長期停電に加え、 道路寸断や悪天候によって燃料補給や保守員の到達が困難になる場合があります。 そのため本稿では、通信経路を構成する必須設備の一つである中継局について、 外部からの電源供給や復旧作業に依存しにくい電源自律化を検討します。

参考(消防庁):災害情報伝達手段の耐災害性(停電耐性・復旧速度等)

https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/post-95/03/shiryou3-4.pdf

3. 山間部の前提:停電より先に「アクセス不能」が起きます

山間部・孤立可能性地域では、道路寸断、豪雨、落石、積雪等により、保守員や燃料を搬入できない状況が発生し得ます。 その前提に立てば、「発電機を持っていく」「燃料を補給する」モデルは、そもそも成立しない場合があります。

したがって中継局は、止まったら直すのではなく、止まらない前提で設計する必要があります。

4. 提言:中継局の電源自律化を“標準モデル”へ

本稿が提言する解は、中継局を電源自律化し、長期停電・アクセス不能下でも通信を維持する設計です。 方式は一つに限定せず、LPガス発電+燃料貯蔵、燃料電池、蓄電池主体の長時間バックアップ、太陽光併用等を 地域条件に応じて選定します。

不便益(工学的定義)

系統依存を切ることは、平時の運用においては「便利」ではありません。 しかし非常時には、系統が断たれても自律運転し、通信を“つなぎ続ける”ことができます。 災害対応では、この構造が要件になります。

方式を限定しない(政策上の合理性)

自治体の地理条件、アクセス条件、燃料調達、保守体制は地域ごとに異なります。 方式を一つに限定せず、「電源自律化」という要件を標準化したうえで、方式は選定可能とする方が合意形成が進みます。

実装例(現地連続運用):熊本県五木村

熊本県五木村の防災行政無線中継局では、太陽光、19.2kWh蓄電池、ホットスワップインバーター、遠隔監視を組み合わせ、現地出動を前提にしない電源自律化を実装しています。設置直後の令和2年7月豪雨では保守道路が土砂崩れで遮断され、アクセス不能を設計条件に含める意味が現実の災害で確認されました。

停電・道路寸断でも通信を止めない:防災行政無線中継局のオフグリッド実装【熊本県五木村】 では、公開仕様、現場条件、施工、災害後の運用まで確認できます。

5. 制度設計(予算化・標準化)へ:要件化の論点

本提言を制度設計に接続するため、論点は次の3つに整理できます。いずれも、更新・強靱化事業の枠組みに落とし込みやすい単位です。

  1. 対象地域の定義:山間部・孤立可能性地域(アクセス不能が先行し得る地域)を明確化します。
  2. 中継局の電源自律化を要件化:方式は地域条件で選定しつつ、要件として標準化します。
  3. 評価軸を運用費まで拡張:燃料・出動・復旧・復旧遅延の社会コストまで含めて評価します。

まとめ:山間部の標準は「止まったら直す」から「止まらない」へ

  • 長期停電では、非常用電源があってもバッテリー切れで停止し得ます。
  • 親局が稼働しても、中継局・子局が止まれば住民に届きません(中継局リスク)。
  • 山間部・孤立可能性地域では、燃料・人の搬入ができない前提を置く必要があります。
  • 中継局の電源自律化(方式は選定可能)を不便益として制度化・標準化することが合理的です。

参考資料

※本稿は実務設計の観点から論点を整理したものであり、制度適用・要件化の最終判断は、各所管・各自治体の方針に従ってください。

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