可搬型UPSの実使用例:PoEスイッチ向け既設UPSのバックアップ時間を長時間化する
PoEスイッチやネットワークラックに既設UPSが設置されている場合、 そのUPSを残したまま上流側に可搬型UPSを配置することで、 停電時に必要なバックアップ時間を確保できます。
既設UPSは、これまで担ってきた瞬停・停電時の電源保護や機器への給電を継続し、 可搬型UPSはその上流側から電力を供給します。 PoEスイッチの消費電力と必要な保持時間に応じて上流側の電源容量を決めることで、 既設設備を活かしたままバックアップ時間を延ばします。
再起動の起点を確認する
PD、配線、PoEポート、PSE共通部、入力電源のどこから停止が始まったかを確認します。
必要な電力と時間を確認する
PoEスイッチのAC入力W、UPS出力W、必要なバックアップ時間を確認します。
既設UPSのバックアップ時間を延ばす
既設UPSを残し、その上流側に可搬型UPSを配置して必要な「時間」を確保します。
2. 既設UPSを残し、コンセント側に可搬型UPSを追加する
PoEスイッチやネットワークラックに既設UPSがある場合、 当社ではそのUPSを残したまま、コンセント側に可搬型UPSを配置しています。
商用電源 → 可搬型UPS HPPHBB0101 → 既設UPS → PoEスイッチ / ルーター / ONU / 監視機器
可搬型UPSは既設UPSを置き換えるためではなく、 停電時にも既設UPSへの給電を継続する上流電源として使用します。 既設UPSが担っている瞬停・停電時の電源保護や機器への給電をそのまま活かしながら、 PoEスイッチや通信機器を維持できる時間を延ばします。
当社では、APC、Eaton等の既設UPSとの組み合わせで実際に使用しています。 必要なバックアップ時間とPoE機器の消費電力に応じて、 上流側の可搬型UPSに必要な電源容量を確保します。
Role Separation / Existing UPS
3. なぜ既設ラックUPSを残すのか
既設UPSはそのまま使用し、その上流側に可搬型UPSを追加します。 既設UPSが担っている電源保護を維持したまま、 停電時にPoEスイッチや通信機器へ給電できる時間を延ばします。
停電直後の局所保護
既設UPSが持つ切替・無瞬断保護をそのまま使用する。
監視・警報
既存のネットワーク管理、警報、ログ、シャットダウン連携を維持する。
既設配電
ラックPDUや既設配線を大きく変更せず、上流側で時間を追加する。
保守・復旧時間の確保
数分のUPSを、保守要員到着や代替電源接続まで使える時間へ延ばす。
既設UPSは「瞬断・局所保護」、上流の可搬型UPSは「電力と時間」を担当する。 役割を分けて既設資産を活かすのが、この構成の中心です。
4. 既設UPSとの組み合わせは、既存環境を確認して決める
APC by Schneider ElectricやEatonでは、UPSのAC出力へ別のUPSを接続する一般的な構成について、 製品の使用条件やサポート上の制約を示しています。 そのため、既設UPSを長時間化する場合は、メーカー資料だけで接続可否を一律に判断せず、 既設UPSの型式、入力条件、接続負荷、必要なバックアップ時間、停電・復電時の動作を確認したうえで構成を決定します。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 既設UPS | メーカー、型式、入力電圧・周波数、入力電力、充電時の消費電力、使用条件を確認します。 |
| 接続負荷 | PoEスイッチ、ルーター、ONU、監視機器など、実際に接続されている負荷と消費電力を確認します。 |
| 必要なバックアップ時間 | 停電時に通信経路を何分・何時間維持する必要があるかを確認し、上流側の電源容量を決めます。 |
| 停電・復電時の動作 | 停電への移行、長時間運転、復電、既設UPSの再充電までを実際の負荷条件で確認します。 |
当社では、APC、Eaton等の既設UPSを含む環境でも、 既存設備を調査し、必要なバックアップ時間と実負荷を確認したうえで導入しています。
5. 導入前に、既設UPSと接続負荷の動作を確認する
可搬型UPSを既設UPSの上流側に配置する場合は、 既設UPSの型式や入力条件、接続されているPoE機器の消費電力、 必要なバックアップ時間を確認したうえで構成を決定します。
導入時には、停電への移行、バックアップ運転、復電、既設UPSの再充電までを 実際の接続負荷で確認します。
Runtime / 30 / 60 / 120 min
6. 30分・60分・120分を成立させる
上流側へ可搬型UPSを追加する主目的の一つは、既設UPSの数分〜数十分の保持時間を、 現場が必要とする30分、60分、120分、さらに長い時間へ延ばすことです。
設計の順序
標準1.6kWhという容量値だけから運転時間を確定しません。 変換損失、電池状態、温度、PoE負荷変動、後段UPSの充電を含め、実際の電源経路で確認します。
Emergency / Temporary Upstream Backup
7. 緊急時のUPSバックアップとしても使う
可搬型であることの意味は、常設の長時間化だけではありません。 既設UPSの保持時間を超える停電が見込まれるとき、法定停電、設備障害、復旧待ちなどで、 既設UPSの上流側へ一時的に電源を追加する緊急バックアップとしても使用できます。
この場合も、負荷へ直接ポータブル電源をつないで「UPS代わり」にする考え方とは異なります。 既設UPSが担っている局所保護を残し、その上流へ停電時間を通過するための電力を追加します。
Field Implementation / Tenant Building
8. 実装例:テナントビルでの前段(コンセント側)保護構成
下図は、当社が公開してきた実際のテナントビル環境の構成です。 可搬型UPSをラックUPSの入力コンセント側に配置し、既設ラックUPSを残したまま上流側から電源を供給しています。
この実装事実を、メーカーの一般的なdaisy-chain非推奨だけを理由に削除・否定しないことが重要です。 一方で、この一例から全UPSの接続可否を一般化もしません。
Field Test / Blackout / Restoration / Recharge
9. 最終確認は、停電から再充電までの実負荷試験
- 平常運転時のPoEラック全体のW、VA、電流を記録する。
- 商用入力を遮断し、上流可搬型UPSが停電運転へ移行した時刻を記録する。
- 後段UPSがどの運転状態にあるか、入力を正常電源として受け入れているか確認する。
- PoEスイッチ、AP、カメラ、ルーター、ONU等の再起動・リンク断を確認する。
- 必要保持時間まで運転し、上流UPSと後段UPSの負荷率・電池状態を記録する。
- 商用を復電し、上流UPS、後段UPS、PoE機器の復帰順序を確認する。
- 後段UPSの再充電を含む入力電力を記録し、再停電へ備える回復時間を確認する。
「つないだら動いた」ではなく、停電・長時間運転・復電・再充電まで通過して初めて、 その現場での上流長時間化が成立したと判断します。
既設UPSを活かし、PoEスイッチのバックアップ時間を長時間化する
PoEスイッチやネットワークラックの既設UPSはそのまま使用し、 その上流側に可搬型UPSを配置することで、 停電時にPoEスイッチや通信機器へ給電できる時間を延ばすことができます。
導入時には、既設UPS、PoEスイッチ、接続負荷、電源構成を調査し、 必要なバックアップ時間に応じて可搬型UPSの容量と接続構成を決定します。 停電への移行からバックアップ運転、復電、既設UPSの再充電までを実負荷で確認したうえで導入しています。
「可用性2」に分類したシステムや通信経路についても、 必要な時間を先に決め、その時間を維持できる電源容量を確保することで、 既存のPoE設備を活かした長時間バックアップが可能になります。
11. 根拠・確認資料
本文で示したUPSの使用条件、入力条件、既設UPSとの組み合わせについて、 メーカー資料、製品仕様、実測・導入記録を確認しています。
製品一次資料
慧通信技術工業株式会社「産業用可搬型UPS HPPHBB0101」
HPPHBB0101の0ms無瞬断、純正弦波、Off Grid 2,000W、On Grid最大3,000W、標準1.6kWh等の製品仕様。
メーカー一次資料
Schneider Electric / APC「Daisy Chaining UPS」
APCはUPS同士のdaisy chainを推奨せず、UL試験、上流UPSの過負荷、波形、バックアップ時間等の理由を示していること。
メーカー一次資料
Eaton「Is it okay to daisy chain a UPS?」
EatonはUPS入力を別UPS出力へ接続するdaisy chainを行わないよう案内し、過負荷、波形、入力認識、故障点増加等の理由を示していること。