3度の依頼をお断りした理由
2012年頃から、たなべ診療所の田邊先生より、建物全体のオフグリッド化について3度ご依頼をいただきました。当社は、その3度ともお断りしています。
理由は、設備価格が非常に高額であり、建物全体の電源供給をオフグリッド化するためには大規模な電気工事が必要だったことです。蓄電池だけを追加する工事とは根本的に異なり、建物側の配電系統と常用電源の構成を見直す必要がありました。
それでも実現したいという先生の熱意によって、最終的に当社が導入をお引き受けしました。設備の設計から施工まで、当社代表が直接担当しました。日本初のオフグリッド診療所という実装の背景には、こうした導入までの経緯があります。

PersonalEnergy® BMS576カスタムモデル|設計・施工
当社が設計施工したのは、建物全体の電源自立を目的とするPersonalEnergy® BMS576カスタムモデルです。非常時だけ運転する補助電源ではなく、日常の診療とともに使用する電源システムとして構築しました。
| システム | PersonalEnergy® BMS576カスタムモデル |
|---|---|
| 蓄電池 | オリビン型リン酸鉄リチウムイオンバッテリー 57.6kWh |
| AC出力 | 12kW+11kW |
| 太陽光発電 | 19.74kW |
新築後の電気設備を再構成
長野県佐久穂町の木造平屋建て診療所は、新築後の電気設備を改変して建物全体をオフグリッド化する案件でした。既設の単相三線式をそのまま移すのではなく、単相二線式の3ルートへ分岐し、相バランスが崩れることを回避する電源構成としました。
冬期暖房負荷の再設計
寒冷地である佐久穂町では、冬期の暖房負荷を電力系統から切り分けることが重要でした。暖房負荷を薪ストーブと床暖房へシフトし、エアコン(EHP)は完全オフグリッドで運転できる構成としました。単純に蓄電容量を増やすのではなく、電力を使用する設備側も再設計しています。
約20kWの入力電源と電源システム
単相二線3ルートと冷暖房負荷の構成を成立させるには、約20kWの入力電源が必要でした。これに対し、PersonalEnergy® BMS576カスタムモデル、太陽光発電19.74kW、蓄電池57.6kWh、AC出力12kW+11kWを組み合わせ、診療時間帯のオフグリッド運転を実現しました。

オフグリッドなのに繋がる安心。24時間365日、当社によるモニタリング監視
当社は設計施工後も10年以上にわたり、1秒単位の電力データを記録しながら、24時間365日遠隔で設備を監視しています。導入時の設計と日々の運用状態を、同じ事業者が継続して把握しています。医療機器を保護する電源構成の別例として、眼科病院のUPS導入事例もあります。
監視グラフでは、診療時間帯に太陽光発電と蓄電池によるオフグリッド運転を行い、日中に蓄電池SOCが100%に到達して維持される様子が確認できます。
一方、診療終了後の20時から翌朝6時までは、商用電力によりSOC40〜60%程度を補充電します。これは「万が一の災害が毎日起こる」ことを前提として、翌朝に必要な蓄電余力を確保するための運用です。

導入当時の設備記録


オフグリッド診療所の他媒体記事
たなべ診療所の取り組みは、医療専門誌やエネルギー関連メディアなどにも掲載されています。



