Marine / ROV Power Solution
「ROV調査を止めない」ための電源設計入門──母船電源・陸電(陸上電力供給システム)の瞬停からROVを守る可搬型UPS
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母船発電機や陸電(陸上電力供給システム)の「一瞬の停電」が、ROV調査の中断や再潜航につながっていませんか?
本記事では、AGMバッテリー採用の可搬型無瞬停UPSを前提に、ROV調査を「止めない」ための電源設計の考え方を整理します。
この記事でわかること
- なぜROV(水中ロボット)は、母船発電機や陸電(陸上電力供給システム)の「瞬停」に弱いのか。
- AGMバッテリー+可搬型無瞬停UPSを使って、ROV・水中カメラを止めない基本アーキテクチャ。
- 母船側・ROV側を「電源ドメイン」で分けて考える設計のポイント。
- ローテーション運用やホットスワップ電池バンクによる調査時間の延長方法。
- 検討前に整理しておきたい、ROV向け電源設計のチェックリストと次の一歩。
1. なぜROV調査は“電源トラブル”に弱いのか
港湾・ダム・橋脚・海底ケーブル・取水設備──。こうしたインフラ点検で使われる ROV(Remotely Operated Vehicle/水中ロボット) は、
- ケーブルを通じて母船や陸電から給電・制御される
- 調査時間が限られており、一度止まるとやり直しが難しい
- 映像・データを撮り逃すと、再潜航のコストが大きい
という特性を持っています。 ところが現場では、
「ROV本体は元気なのに、電源の瞬停や電圧降下が原因で調査を中断した」
といったケースが少なくありません。本記事では、こうした課題に対して AGMバッテリー採用の可搬型無瞬停UPS を中心に、 ROV調査を“止めない”ための電源設計の考え方を整理します。
2. 現場でよくあるROV電源トラブルとその原因
ROVの運用現場でよく聞くトラブルを、電源の観点から整理してみます。
2-1. 母船発電機・陸電の瞬停
- 船の発電機が負荷変動で一瞬だけ落ちる
- 共有している陸電で他設備が起動し、電圧がドロップ
- 結果として、ROV給電用インバータが停止・再起動し、調査が中断
2-2. 長いケーブルによる電圧降下
- 数十メートル〜数百メートルのケーブルで電圧降下・ノイズ混入
- ROV側の保護回路が働き、自己防衛的にダウン
2-3. 臨時配線・仮設電源ゆえのリスク
- 工事現場用の仮設電源からマルチタップで多くの機器を共有
- 誰かが大きな電動工具を動かした瞬間にブレーカが落ちる
これらはいずれも、ROV本体ではなく 「母船・陸電側の電源インフラの事情」 で起きています。 つまり、ROVの海洋BCPを考えるときは「電源側をどう補強するか」が重要になります。
3. AGMバッテリー+無瞬停UPSという解決アプローチ
こうした電源トラブルに対して有効なのが、 Personal Energy® 無瞬停UPS(AGMバッテリー採用) を 母船・陸電側の入口に挟み込む構成です。
3-1. 無瞬停UPSで“切替時間ゼロ”を実現
- 商用電源や発電機からの給電が途絶えた瞬間でも、内部バッテリーへ0msecで切り替え
- ROV給電用インバータ・コンソールPC・記録装置などを停止させずに運転継続
これにより、母船発電機の瞬停や陸電側ブレーカの一瞬の落ちといったイベントがあっても、 ROV側には“何も起きなかった”かのように見せる ことができます。
3-2. AGMバッテリーが海洋用途と相性が良い理由
- リチウムイオンと比べて熱暴走・発火リスクが低い非リチウム方式
- 船舶・航空輸送で扱いやすく、現場への持ち込みハードルが低い
- 塩害・湿気の多い環境でも安全側に設計しやすい
海水・塩分を伴う環境では、 「燃えない・止まらない」AGMバッテリー+無瞬停UPS が堅実な選択肢になります。
4. 母船側・ROV側を分けて考える電源ドメイン設計
ROV調査の電源を考えるときは、 「母船・陸電側」と「ROV側」を分けて設計する と整理しやすくなります。
[商用電源 / 発電機] ──▶ [Personal Energy® 無瞬停UPS]
│
├──▶[ROV給電用インバータ/DC電源]
│
└──▶[コンソールPC・レコーダ・ネットワーク機器]
│
└──▶[ROV本体・水中カメラ・センサー]
このように、 電源品質が悪い側(商用電源・発電機) と 電源品質が必要な側(ROV・計測機器) を、 Personal Energy® 無瞬停UPSで「絶縁」するイメージです。
さらに、ケーブルの太さや長さを考慮して、
- 電圧降下を見込んだ出力電圧設定
- 起動電流(インラッシュ)を吸収する容量マージン
を取っておくことで、現場での「謎のリセット」を大幅に減らせます。
5. ローテーション運用とホットスワップ電池バンク
Personal Energy® は、可搬型UPSとして ホットスワップ対応の電池バンク と組み合わせることができます。 これにより、ROV調査における「連続運転」と「充電待ち」のジレンマを緩和できます。
5-1. 通常時
- コンセント(または発電機)からの入力で、無瞬停UPSが最大3kVAクラスの出力を提供
- 同時に、接続した電池バンクへ常時充電
5-2. 停電時・発電機停止時
- 入力が途絶えても、内蔵+外付けバッテリーから無瞬停バックアップ
- 充電済みの電池バンクをホットスワップで差し替えることで、連続運転時間を延長
5-3. ローテーション運用のメリット
- 調査時間が伸びても、電池バンクの差し替えだけで対応できる
- 発電機を夜間に止めたい場合でも、バッテリーだけで静音運用が可能
- 「充電待ちのために調査を短縮する」といった状況を減らせる
このローテーションモデルは、ROVだけでなく USV(水上ドローン)や水質観測ブイなど他の海洋システムとも共通化しやすい運用モデルです。
6. ROV向け電源設計のチェックリスト
最後に、ROV向け電源を検討する際に整理しておきたいポイントをチェックリストとしてまとめます。
-
ROVシステムの構成
ROV本体/水中カメラ/照明/センサー、コンソールPC/収録装置/ネットワーク機器 など。 -
必要電力・起動電力
定常時の消費電力(W)と、起動時のピーク電力(インラッシュ)。 -
運転時間の想定
1ダイブあたりの時間と、1日の最大ダイブ数。 -
電源インフラの前提
商用電源(陸電・施設)か、船舶発電機か。仮設電源か常設か。 -
安全要件・持ち運び制約
船舶・航空機での輸送条件や、屋外・屋内での設置環境(塩害・湿度・温度など)。
これらが分かれば、Personal Energy® をベースにした UPS容量・電池バンク構成・ローテーション案 を具体的に設計できます。
7. 導入検討の進め方と関連リンク
ROV向け電源BCPを検討される際は、まず 既存の運用フローとトラブル履歴 を洗い出していただくのがおすすめです。
- どのタイミングで電源が落ちたか
- どの設備のブレーカが落ちたか
- 再潜航にどれくらい時間とコストがかかったか
といった情報があると、電源側でどこまでカバーすべきかが明確になります。
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