1. 症状:『Wi-Fiが落ちる』は、現場では何が止まっているか
倉庫で「Wi-Fiが落ちた」と言うとき、実際には次のような症状が混在します。 体感は同じでも、原因が違えば対策も変わります。
よくある問い合わせ
- 「物流倉庫 WiFi 繋がらない」「WiFi 頻繁に切れる」
- 「ハンディターミナル 通信エラー」「WMS 接続遅い」
- 「WiFi 途切れる 移動中」(ローミング失敗を疑う)
- 「WiFi デッドスポット 調査」
現場に起きる“停止”
- ハンディが再接続待ちになり、作業が滞留する
- WMS再ログインが必要になり、復帰に人手が取られる
- 一時停止が連鎖して、出荷遅延に波及する
ポイント:通信が途切れると、単に“遅い”ではなく“止まる”。
2. 原因①:スチールラックが生む遮蔽とマルチパス
物流倉庫は金属が多く、電波にとって過酷な環境です。スチールラックは遮蔽を作り、 反射が増えることでマルチパスが発生します。結果として、電波が届いていても品質が揺らぎます。
環境要因の典型
- 「スチールラック 電波干渉」「倉庫 金属 遮蔽 WiFi」
- フォークリフト等の移動体で反射環境が変わる
- 自動倉庫の高天井・長距離で電波が届きにくい
対策の方向性(電波設計)
- 「倉庫 WiFi サイトサーベイ」「電波調査 費用」
- 倉庫内アクセスポイントの再配置(高さ・通路・ラック列)
- 倉庫内メッシュネットワークの検討
- 指向性アンテナの活用(通路方向に“狙う”)
- 用途によっては Wi-Fi HaLow も選択肢
3. 原因②:ローミング失敗は『移動中に途切れる』として現れる
ハンディターミナルは移動しながら通信します。AP間の切替(ローミング)が安定しないと、 体感としては「Wi-Fiが切れた」になりやすいです。
症状の見え方
- 「WiFi 途切れる 移動中」
- 「ハンディターミナル 通信エラー」
- 「WMS 接続遅い」(実態は再ログイン/再接続待ち)
ローミングの最適化は、電波強度だけでなく、AP配置・干渉・設定・端末側挙動まで含む“設計問題”です。 ここが未整理のままAPを増やすと、干渉が増えて逆効果になることもあります。
4. 盲点:瞬停でPoEスイッチ/無線APが再起動すると“全員が切れる”
物流現場で本当に厄介なのが、瞬停・瞬低です。瞬停は“真っ暗になる停電”ではないため、原因として疑われにくい。 しかし、PoEスイッチや無線APは電源品質の影響を受けます。
数秒の瞬断が、数分の現場停止になる流れ
- 瞬停でPoEスイッチが再起動
- 給電が止まり、無線APが停止
- ハンディ端末の通信が一斉切断
- 再接続・DHCP再取得が発生
- WMS再ログインで復帰待ちが増える
ポイント:メッシュやHaLowでも、給電が落ちれば止まる。通信は電源から止まる。
なぜPoEが効くのか(現場の盲点)
PoEスイッチは、見た目は“スイッチ”でも、実態は給電装置です。 APやカメラ等に給電している場合、負荷は小さくありません。 そのため、瞬停や同時復帰の影響を受けると、Wi-Fiが“全部落ちる”形で現場に出ます。
関連:瞬停をゼロにする電源設計
瞬停・瞬低を0msで吸収する電源設計については、 可搬型UPSで「瞬停・瞬低ゼロ」の現場に ──0ms切替・純正弦波・“止めない時間”の設計 で詳しく解説しています。
5. 自動化・AGVが進むほど、Wi-Fi停止は“出荷停止”に直結する
物流2024年問題を背景に、自動化や省人化が進むほど、通信は“止められないインフラ”になります。 AGV(無人搬送車)向けワイヤレスブリッジ、倉庫内メッシュネットワーク、ハンディターミナルの無線化など、 どれも通信が前提です。
この段階で起きる“停止”の質が変わる
- 作業者が止まる(ハンディ切断)
- 搬送が止まる(AGV通信途切れ)
- 復帰に人手が取られ、波及が長引く(再ログイン/再設定)
関連:制御・通信電源という設計思想
自動化が進むほど重要になる「制御・通信電源」の考え方については、 自動化の次に来る盲点——理論値サイクルタイムを守る「制御・通信電源」の設計 で詳しく解説しています。
6. 解決策:電波設計+電源設計(重点保護)の両輪
倉庫Wi-Fiの安定化は、電波対策だけで完結しません。 逆に、電源対策だけでも根本解決になりません。 現実解は、原因を分け、対策を重ねることです。
電波設計(サイトサーベイ起点)
- 「倉庫 WiFi サイトサーベイ」「WiFi デッドスポット 調査」
- AP配置最適化/チャンネル干渉対策
- メッシュ導入/指向性アンテナ設置
- 用途別の無線方式検討(例:Wi-Fi HaLow)
電源設計(通信中枢の重点保護)
- PoEスイッチ/無線AP(Wi-Fi中枢)を優先保護
- 上位スイッチ/ルータなどネットワーク中枢を優先保護
- 必要に応じてWMS/制御通信系も重点保護
ポイント:全負荷を守る必要はない。まず守るべきは通信の中枢。
7. まとめ:再ログイン待ちが、出荷遅延を生む
物流倉庫のWi-Fi不調は、遮蔽・マルチパス・ローミングといった電波要因に加え、 瞬停でPoEスイッチ/無線APが再起動する電源要因が重なって起きます。
数秒の瞬断が、数分の停止になる。
止まらない倉庫は、通信と電源をセットで設計しています。
参照(文字+URL)
-
Wi-Fi HaLow(Wi-Fi Alliance 公式解説)
https://www.wi-fi.org/discover-wi-fi/wi-fi-halow -
802.11ahを国内で利用可能とする電波法令改正が行われました
https://www.11ahpc.org/news/20220905/index.html
※本稿は原因整理(設計思想)を目的とし、無線方式の選択は現場条件 (ラック配置・天井高・端末種類・運用要件)に依存します。
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瞬停対策の本質は容量(kWh)ではなく「止めない時間」。0ms切替+電源品質(純正弦波/THD)+運用設計で、短い電源イベントが長い停止に波及させません。