Voltage Dip / Control Reset / Drive Trip
1. 0.07秒の瞬低が、制御・動力・記録へ波及する
瞬低は、電圧の実効値が短時間低下する電源品質事象です。 0.07秒は、50Hzでは約3.5周期、60Hzでは約4.2周期に相当します。 電磁接触器、AC/DC電源、PLC、サーボアンプ、インバータは、それぞれの保持特性や保護設定に応じて停止・再起動・トリップへ移行します。
| 停止する層 | 主な機器 | 現場で起きること |
|---|---|---|
| 動力系 | モーター、サーボ、ポンプ、ファン、搬送軸、ヒーター | 回転・搬送・圧力・温度が途切れ、工程条件や製品品質が変化する。 |
| 制御系 | PLC、I/O、HMI、IPC、通信、センサー | 制御シーケンス、通信、検査、位置認識、データ取得が停止する。 |
| 記録系 | データロガー、履歴DB、時刻同期、監視端末 | 停止直前の一次データが欠落し、原因と影響範囲を再現できなくなる。 |
工程継続にモーターやサーボの動作が必要な設備では、 DC24V制御系と必要な動力負荷の双方を、想定する瞬低時間以上保持します。 制御・動力・記録を同時に維持することで、瞬低中も工程を継続できます。
Primary Data / Time Alignment / Reproduction Point
2. 一次データから、停止の起点と波及を特定する
時刻同期された供給側、制御盤AC入力、DC24V母線、PLC、駆動系、工程の一次データを照合すると、 最初に正常状態から外れた地点と、その後にどこまで影響が広がったかを確認できます。 この記録から、保護すべき箇所と必要な保持範囲を特定します。
| 計測点 | 残す一次データ | 確認できること |
|---|---|---|
| 供給・受電側 | 電圧、電流、周波数、電源品質イベント | 外部系統側から異常が入ったか。 |
| 制御盤AC入力 | 入力電圧、AC/DC電源の警報、ブレーカー・接触器状態 | 盤入力と盤内部のどちらで異常が発生したか。 |
| DC24V母線 | DC電圧、UPS動作、バッテリー状態、負荷電流 | PLC・I/O・通信が落ちる閾値を下回ったか。 |
| PLC・通信 | イベント、I/O変化、エラー、リンク断、シーケンス番号 | どの制御処理の途中で停止したか。 |
| サーボ・モーター | 主回路電圧、電流、位置、速度、トルク、アラーム | 動力側停止が工程・位置・品質へ与えた影響。 |
| 工程・品質 | ロット、レシピ、温度、圧力、検査値、作業履歴 | 仕掛品を継続できるか、再検査・廃棄が必要か。 |
1秒間隔の計測は、正常時のベースラインと瞬低前後の負荷変化を残します。 0.07秒の瞬低波形の直接捕捉には、電源品質記録計、UPSイベント、PLCイベント、サーボアラームなど、 より短い事象を記録できるデータを組み合わせます。
DC24V Control Panel UPS / Battery Backup / Buffer
3. DC24V UPSで、制御・通信・記録を保持する
DC24V制御盤専用UPSは、AC/DC電源の後段に設置し、PLC、I/O、HMI、通信、センサー、データロガーなどのDC24V負荷を保持します。 制御盤内へ組み込みやすく、守る負荷を分離しやすい点が利点です。
短時間の瞬低を吸収
PLC、I/O、通信のリセットを防ぎ、制御シーケンスを継続する。
数分間のDC24Vバックアップ
ログ保存、通信維持、復電待ち、必要な終了処理の時間を確保する。
状態信号を制御へ戻す
バックアップ中、バッテリー低下、異常、交換時期をPLCへ通知する。
DC24V UPSは、PLC、I/O、HMI、IPC、通信、センサー、データロガーへ保持時間を与えます。
工程継続にモーターやサーボの動作が必要な設備では、動力電源へ対応するUPS、瞬低補償装置、蓄電システムを組み合わせます。
Drive Power / Motor / Servo / Process Continuity
4. モーターを止めてはならない設備は、動力主回路も守る
モーター、サーボ、ポンプ、ファン、搬送軸の短時間停止が、製品、治具、圧力、温度、張力、位置関係を変える工程があります。 工程そのものを継続する設備では、想定する瞬低時間に合わせて制御系と動力系を保持し、必要な補機も同時に維持します。
| 目的 | 守る範囲 | 主な検討事項 |
|---|---|---|
| 状態を保持する | DC24V制御系、通信、記録 | DC24V容量、保持時間、バッテリー、状態信号。 |
| 工程を止めない | 制御系+サーボ・モーター・必要な補機 | 定格、起動電流、回生、相数、接地、波形、瞬低深度・継続時間。 |
| 安全に停止する | 制御、ブレーキ、安全機器、記録 | 停止順序、惰走、機械ブレーキ、残圧、残熱、データ保存。 |
製品と工程を成立させるために必要な負荷を設備機能単位で選び、 制御系、動力系、記録系へ必要な保持時間を割り当てます。
Capacitor / Battery / Required Hold Time
5. キャパシタかバッテリーかは、必要な保持時間で決める
瞬低対策では、何秒・何分・何時間を保持するかを起点に、キャパシタ、バッファモジュール、バッテリーを選びます。
キャパシタ・バッファモジュール
短時間の瞬低中に電源を保持する用途に向きます。充放電回数、温度、保持時間、必要電力を確認します。
バッテリーを備えたDC24V UPS
数分以上のDC24Vバックアップ、ログ保存、通信維持、復電待ち、安全停止に向きます。電池方式、交換周期、温度、保守性を確認します。
動力系の保持容量は、対象モーター、サーボ、補機の実測負荷、起動・加減速・回生時の過渡特性から算定します。 DC24V制御系とは別の電力レンジとして扱い、設備機能ごとに保持条件を設定します。
Design Patterns / Control / Drive / Data
6. 制御盤UPSと動力系UPSの三つの構成
構成A:DC24V制御系を保持する
PLC、I/O、通信、ログを保持し、安全停止と復電後の工程再開を支えます。動力停止を前提とする設備に適用します。
構成B:制御系と必要な動力を同時に保持する
DC24V制御盤専用UPSと、モーター・サーボ・補機に対応する電源を組み合わせます。工程継続を要求する設備に適用します。
構成C:設備セル全体をAC側で無瞬断化する
制御盤、動力、通信、検査を一つのUPS系統へまとめます。負荷特性、突入、回生、接地、保護協調を含む個別設計が必要です。
Assessment / Load Survey / Verification
7. 導入前に確認する10項目
- 止めてはならない設備機能を決める。
- モーター停止の許容条件を工程・品質・安全から決める。
- DC24V負荷をPLC、I/O、HMI、IPC、通信、センサー、ロガーに分ける。
- 動力負荷をモーター、サーボ、ポンプ、ファン、ヒーター、ブレーキに分ける。
- 通常電力、起動電力、回生電力を実測する。
- 必要な保持時間を短時間の瞬低、継続運転、安全停止、復電待ちに分ける。
- 一次データの計測点と時刻同期を決める。
- 相数、電圧、接地、漏電保護、保護協調を確認する。
- バッテリー交換、点検、異常信号を保全計画へ入れる。
- 実負荷で瞬低・停電・復電試験を行う。
設計条件
8. 動力・制御・記録へ保持時間を割り当てる
制御盤UPSの設計では、時刻同期された供給側から工程までの一次データを照合し、 最初の逸脱点と停止波及を特定します。 そのうえで、制御、通信、記録、動力へ必要な保持時間を割り当てます。
起点
供給側、盤入力、DC24V、駆動系の記録から停止の起点と波及を追う。
制御
PLC、I/O、通信、記録へ必要な保持時間を与える。
動力
工程継続に必要なモーター、サーボ、補機を選ぶ。
復帰
位置、工程、品質、通信を確認して再開する。
制御盤UPSは、設備機能ごとの保持時間を電源構成へ変換するための設計要素です。
Evidence / References
9. 根拠・確認資料
電圧ディップと短時間停電は、IEC 61000-4-11/4-34でイミュニティ試験の対象として定義されています。 DC24V UPSの保持性能と計測データの時間分解能は、対象機器の一次資料と実測値を組み合わせて確認します。
国際規格一次資料
IEC 61000-4-11:2020
16A/相以下の低圧機器について、電圧ディップ、短時間停電、電圧変動に対するイミュニティ試験方法と試験レベルを定めること。
国際規格一次資料
IEC 61000-4-34:2005 + AMD1:2009 + AMD2:2025
16A/相を超える低圧機器について、50Hz・60Hz系統の電圧ディップ、短時間停電、電圧変動に対するイミュニティ試験方法を扱うこと。
メーカー一次資料
OMRON S8BA 無停電電源装置(UPS) 定格・性能
DC24V入力・DC24V出力のDC-DC UPSとして、IPCやコントローラの瞬低・停電対策に用いられ、切替時間を無瞬断としている製品仕様例。
自社一次仕様
慧通信技術工業株式会社 Smart Meter
電圧、電流、電力、力率、周波数、高調波、歪率を1秒単位で計測し、設備ログと照合する一次データ基盤として運用していること。