1. 在宅酸素濃縮器の「オン・オフ」は、介護職員が業務として行えない

在宅酸素濃縮器は、在宅療養や介護施設で使われる重要な医療機器です。 停電や機器停止が起きた時、利用者本人、家族、施設職員はすぐに対応を迫られます。

根拠になるのは、2026年5月15日の内閣府 「規制改革推進会議 健康・医療・介護ワーキング・グループ」に提出された、 厚生労働省資料 「医療・介護分野におけるタスク・シフト/シェアの促進について」 です。

同資料では、医師法第17条の 「医師でなければ、医業をなしてはならない」 という条文を示したうえで、 「医業」とは、医師の医学的判断及び技術をもってしなければ人体に危害を及ぼし、 又は危害を及ぼすおそれのある行為を、反復継続する意思をもって行うことと説明しています。

そのうえで、検討対象とされた行為のうち、 「在宅酸素濃縮器のオン・オフ及び流量変更」「在宅酸素濃縮器から酸素ボンベへの切替え」 は、医師法第17条の考え方に照らし、 医師又は看護師でなければ実施できない行為 として整理されています。

ただし、本人・家族の操作まで一律に禁じる話ではない

ここで注意が必要です。 在宅酸素濃縮器の操作が医行為に該当すると整理されていても、 利用者本人やその家族が行うことまで一律に禁じられているわけではありません。

在宅療養の現場では、本人や家族が医師の指示・説明を受けたうえで、 酸素濃縮器の使用、停止、酸素ボンベへの切替えなどを行う場面があります。 問題になるのは、介護職員など第三者が、業務として反復継続して実施できるかという点です。

つまり、「家族ならできること」と「介護職員が業務としてできること」は同じではありません。

ここで施設側が確認すべきことは明確です。 操作できる人が限られる機器を、停電時にどう守るか。 そして、止まってから慌てるのではなく、そもそも止めない備えができているかです。

出典:内閣府 規制改革推進会議 健康・医療・介護ワーキング・グループ 第12回会合(2026年5月15日)資料1-1 厚生労働省「医療・介護分野におけるタスク・シフト/シェアの促進について」。

1. 厚生労働省資料で何が示されたのか

2026年5月15日に開催された内閣府「規制改革推進会議 健康・医療・介護ワーキング・グループ」では、 厚生労働省から「医療・介護分野におけるタスク・シフト/シェアの促進について」の資料が提出されています。

その資料では、介護現場で実施されることが多い行為のうち、医行為か否かの検討対象として、 PTPシートからの薬剤取り出し、血糖測定、インスリン注射などと並んで、 「在宅酸素濃縮器のオン・オフ及び流量変更」「在宅酸素濃縮器から酸素ボンベへの切替え」が挙げられています。

資料で整理されたポイント

  • 医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と規定している。
  • 「医業」は、医師の医学的判断・技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼすおそれのある医行為を、反復継続する意思をもって行うことと整理されている。
  • 在宅酸素濃縮器のオン・オフ及び流量変更は、医師又は看護師でなければ実施できない行為として整理されている。
  • 在宅酸素濃縮器から酸素ボンベへの切替えも、同様に医師又は看護師でなければ実施できない行為として整理されている。

この整理は、安全性を重視するものです。 一方で、介護施設・在宅介護の現場には、別の問いが残ります。

介護職員が操作できない機器が停電で止まった時、施設はどう対応するのか。

2. 「操作できない」なら、止まってからの対応に依存できない

在宅酸素濃縮器は電気で動きます。 停電すれば、酸素濃縮器は止まる可能性があります。 その際、酸素ボンベへの切替えや、機器の再起動、流量確認が必要になる場面があり得ます。

しかし、その操作を誰でもできるわけではないと整理されているなら、施設BCPの考え方は変わります。 「止まったら現場で対応する」ではなく、そもそも止めない、または止まるまでの時間を稼ぐ設計が必要になります。

Before

止まったら操作する

停電後に現場で切替え・再起動・連絡を行う前提です。操作できる人が限られると、夜間・休日の初動が詰まります。

Shift

止まるまでの時間を稼ぐ

非常用電源で酸素濃縮器・通信・見守り機器を保持し、看護師や医師への連絡、搬送判断、家族連絡の時間を確保します。

Goal

止めない施設BCPへ

操作制限のある機器ほど、停電時の保持時間、代替手段、連絡体制、記録を事前に設計します。

3. 施設側が確認すべきこと:誰が操作でき、何分止めずに維持できるか

在宅酸素濃縮器のオン・オフ等を介護職員が業務として行えない場合、 施設や事業所は「誰かがスイッチを入れればよい」という前提で停電時対応を考えることはできません。

施設長、法人本部、ケアマネ、医療職、家族が確認すべきなのは、 制度上の解釈だけではなく、実際に停電や機器停止が起きた時の運用です。

Operation

誰が操作できるか

利用者本人、家族、医師、看護師、介護職員のうち、誰がどの操作を行えるのか。 夜間・休日・家族不在時の対応者まで確認します。

Hold Time

何分維持できるか

停電時に酸素濃縮器、ナースコール、見守り機器、通信機器が何分動くのか。 酸素ボンベへの切替えまでの時間を確保できるかを確認します。

Procedure

手順として残っているか

停電時の連絡先、看護師への確認、家族連絡、代替電源、酸素ボンベ、搬送判断を、 施設BCPやマニュアルに記載しておく必要があります。

重要なのは、停電してから「誰が操作するか」を考えることではありません。 操作できる人が限られる機器ほど、止まらない時間を先に確保しておくことです。

4. 法人本部・施設長が確認すべき項目

この論点は、現場の介護職員だけに背負わせるものではありません。 法人本部、施設長、BCP担当者、自治体担当者、ケアマネ、医療職が、次の項目を確認する必要があります。

確認項目 確認すべき内容 BCP上の意味
在宅酸素利用者数 施設・在宅支援先に何名いるか。夜間・休日の所在も含める。 非常用電源容量と優先対応順位を決める前提になる。
機器の消費電力 酸素濃縮器、吸引器、見守り機器、通信機器の消費電力を確認する。 何分・何時間維持できるかを計算する基礎になる。
操作できる人 医師・看護師・家族・介護職員の役割分担と、夜間連絡先を整理する。 停電時に誰へ連絡すべきかを迷わない。
酸素ボンベ切替え 切替え手順、保管場所、残量確認、実施可能者を整理する。 電源保持時間を超えた場合の代替手段になる。
同時に止まる設備 ナースコール、見守りカメラ、Wi-Fi、ルーター、電子記録端末を確認する。 酸素濃縮器だけ守っても、連絡・見守りが止まると初動が遅れる。
記録と訓練 停電訓練、非常用電源の点検記録、利用者別の対応手順を残す。 自治体・家族・監査への説明資料になる。

5. 停電時に同時に止まりやすいもの

在宅酸素濃縮器だけを見ていると、施設BCPは不足します。 実際の停電時には、医療機器、通信、見守り、安全確認、記録が同時に影響を受けます。

Medical Device

在宅酸素・吸引器・関連機器

在宅酸素濃縮器、吸引器、ネブライザー等は、利用者の状態によって優先度が変わります。医師・看護師の指示とBCPを整合させます。

Call / Monitoring

ナースコール・見守り機器

酸素濃縮器が動いていても、ナースコールや見守り機器が止まれば異常発見が遅れます。通信機器とセットで保持します。

Network

Wi-Fi・ルーター・PoE機器

見守りカメラ、タブレット記録、クラウド連携、緊急連絡には通信が必要です。ルーターやPoEスイッチも保持対象になります。

Record / Evidence

電子記録・事故報告・証跡

停電時に何が起き、誰が対応し、何分で復旧したかを残すことは、家族説明、自治体報告、補助金実績報告にも関係します。

6. 非常用電源は「買って終わり」ではない。保持時間と証跡が必要

施設BCPで重要なのは、非常用電源を置くことだけではありません。 どの機器を、何分、どの負荷で維持できるのかを説明できることです。

対象機器

酸素濃縮器、ナースコール、見守り機器、通信機器、電子記録端末など、止めてはいけない範囲を決めます。

保持時間

医師・看護師への連絡、酸素ボンベ確認、搬送判断、家族連絡に必要な時間を確保できるかを見ます。

証跡

点検記録、訓練記録、接続機器一覧、停電時ログを残し、自治体・家族・監査に説明できる状態にします。

操作できる人が限られる医療機器ほど、非常用電源は「備蓄品」ではなく、停止を避けるための運用設計になります。

7. 整備費用をどう確保するか:非常用電源は施設BCPの一部として説明する

ここまで見てきたように、在宅酸素濃縮器、ナースコール、見守り機器、通信機器は、 停電時にまとめて影響を受ける可能性があります。 しかも、在宅酸素濃縮器のように操作できる人が限られる機器では、 「止まってから誰かが対応する」前提だけでは不十分です。

そのため、非常用電源は単なる災害用品ではなく、 利用者の安全確認、医療機器の継続、職員の初動時間確保、家族説明、施設BCPを支える設備として整理する必要があります。

このように位置づけることで、非常用電源の整備は「余裕があれば購入する備品」ではなく、 停電時のサービス継続に必要な設備として説明しやすくなります。 補助金を検討する場合も、まずは施設内で守るべき機器、必要な保持時間、運用手順を整理することが出発点です。

R7 / Service Continuity

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8. 本記事で参照した資料

本記事では、令和8年5月15日(金)16:00〜19:00にオンラインで開催された、 内閣府 「規制改革推進会議 健康・医療・介護ワーキング・グループ」第12回会合 の掲載資料を参照しました。

本記事で扱う在宅酸素濃縮器の 「オン・オフ及び流量変更」 ならびに 「在宅酸素濃縮器から酸素ボンベへの切替え」 は、同資料において、医師法第17条の考え方に照らして整理された論点です。

なお、資料の記載は制度上の重要な整理ですが、施設ごとの運用判断は、 最新の通知、自治体の指導、医師又は看護師の指示、個別の利用者状況に基づいて確認してください。

Attention / Facility BCP

操作できる人が来るまで、止めずに維持できますか

在宅酸素濃縮器の「オン・オフ」は、誰にでも分かる言葉です。 だからこそ、この論点は制度関係者だけでなく、施設長、法人本部、ケアマネ、家族にも伝わりやすい問題です。

厚生労働省資料では、在宅酸素濃縮器のオン・オフ及び流量変更、 酸素ボンベへの切替えが、医師又は看護師でなければ実施できない行為として整理されています。 ただし、利用者本人や家族が医師の指示・説明を受けて操作することまで一律に禁じる話ではありません。

問題は、家族がいない時間、夜間、休日、施設内で介護職員しかいない場面です。 操作できる人が来るまで、酸素濃縮器や関連機器を止めずに維持できるか。 ここが施設BCPの実務論点になります。

施設側がすぐ確認すべきこと

  • 在宅酸素濃縮器を利用している入所者・利用者は何名いるか
  • 停電時に酸素濃縮器を何分維持できるか
  • 酸素ボンベへの切替えは誰が実施できるか
  • 夜間・休日に医師又は看護師へ連絡できる体制があるか
  • ナースコール、見守り機器、通信設備、電子記録も同時に止まらないか
  • 非常用電源、代替手順、家族連絡、搬送判断がBCPに書かれているか

非常用電源は、単なる災害用品ではありません。 操作できる人が限られる医療機器を、必要な時間だけ止めずに維持し、 医師・看護師・家族・自治体への連絡、酸素ボンベ確認、搬送判断、記録を行うための時間を作る設備です。

「止まったら誰が操作するか」だけでなく、 「操作できる人が来るまで、どう止めずに守るか」。 在宅酸素濃縮器のオン・オフ問題は、施設BCPをその視点で見直す入口になります。

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在宅酸素濃縮器のオン・オフ問題をきっかけに、施設内で止めてはいけない機器を洗い出し、非常用電源・BCP・補助金の順に確認します。

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FAQ

Q. 在宅酸素濃縮器のオン・オフは介護職員ができますか?

厚生労働省資料では、在宅酸素濃縮器のオン・オフ及び流量変更、酸素ボンベへの切替えは、医師又は看護師でなければ実施できない行為として整理されています。 個別運用は、最新通知、自治体、医師・看護師の指示に従って確認してください。

Q. なぜ非常用電源の話につながるのですか?

操作できる人が限られる機器が停電で止まると、現場の介護職員だけでは初動対応できない可能性があります。 そのため、止まってから操作する前提ではなく、非常用電源で保持時間を確保する施設BCPが重要になります。

Q. 酸素濃縮器だけを非常用電源につなげばよいですか?

それだけでは不十分な場合があります。 ナースコール、見守り機器、通信機器、ルーター、電子記録端末も同時に止まると、異常発見や連絡が遅れます。 優先機器を洗い出して保持時間を設計する必要があります。

Q. 補助金を使う場合、何を準備すべきですか?

対象機器、非常用電源の仕様、保持時間、接続機器一覧、施設BCP、点検記録、見積書、導入後の証跡を整理します。 年度・自治体・施設種別により要件が異なるため、申請前に対象制度を確認してください。

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