目次

  1. 戦乱の損失を可視化する意味
  2. 「何も起きない」を“積極的な平和”として捉え直す
  3. 予防に投資する社会へ:維持・保全の経済学
  4. オフグリッドで何ができるのか:分散と自律が日常を強くする
  5. 未来の安全保障は「持続させる力」へ
  6. まとめ:何も起きないことを「価値」にする

戦乱の損失を可視化する意味

IEP(Institute for Economics & Peace)は、暴力や紛争が世界経済に与える影響を「Economic Impact of Violence」として推計しています。 たとえば最新のGPI報告では、2024年の世界全体の経済的影響は約19.97兆ドル(PPP)、世界の経済活動の約11.6%一人あたり約2,446ドルに相当すると示されています。

ここで重要なのは、損失を並べて悲観することではありません。 損失が見えるからこそ、次の一歩として“損失が起きない状態(安定)”に投資する理由を社会で共有できる、という点に意味があります。

「何も起きない」を“積極的な平和”として捉え直す

平和は「暴力がない状態(ネガティブ・ピース)」だけでは語りきれません。 IEPは、制度、信頼、協力、健全な経済環境など、社会を安定させる条件の総体を ポジティブ・ピース(積極的平和)として定義し、指標化しています。

この章のポイント

  • 平和は「結果」ではなく、設計・運用・改善によって作られる状態
  • 理念だけでなく、経済の強さや回復力と結びつく

「何も起きない」状態は、ただの静けさではなく、社会の仕組みが生み出す成果だと捉えられます。

予防に投資する社会へ:維持・保全の経済学

インフラや設備では「壊れてから直す」より「壊れる前に保全する」ほうが合理的です。 同じ発想は社会の安定にも当てはまります。

  • 混乱が起きてからの復旧は高コストになりやすい
  • 予兆検知、分散化、冗長化、訓練、備蓄は、長期的に損失を減らす

ここでのポイントは、予防が“善意”だけで動くのではなく、 経済合理性を持つ投資として扱えるようになることです。 「何も起きない状態」を維持する活動が、社会の付加価値(信用・投資・人材)につながる構造が整えば、維持の取り組みはさらに加速します。

オフグリッドで何ができるのか:分散と自律が日常を強くする

オフグリッド/分散型インフラは、災害、障害、物流停滞、サイバーリスクなどの外乱があっても、 社会機能を「落とし切らない」ための設計思想です。

1) 単一点障害を減らす(止まらない・止めない)

集中型インフラは効率が高い一方で、どこか一か所の停止が広域影響につながることがあります。 分散型は、止まっても影響を局所化し、全体崩壊を防ぎます。

2) 自律稼働で“復旧の初動”を早くする

停電や通信断が起きたとき、外部復旧を待つのではなく、拠点が自律的に最低限の機能を維持できる。 この「初動の速さ」は、復旧コストと損失の両方を減らします。

3) レジリエンス(復元力)を“設計値”として持てる

平常時は静かに、非常時は確実に。オフグリッドは、電源・通信・運用の“復元性能”を、 後付けではなく最初から設計に組み込みやすい手段です。

未来の安全保障は「持続させる力」へ

世界の軍事支出は増加傾向にあります。SIPRIの報告では、2024年の世界の軍事支出は2.718兆ドルに達したとされています。

ただし、ここで言いたいのは「軍事か平和か」という単純な二項対立ではありません。 重要なのは、社会の評価軸が次のように変わっていく可能性です。

  • 旧来の強さ:何かを起こす(制圧・破壊)能力
  • これからの強さ:何も起こさせない(継続・復旧)能力

その中心に来るのが、分散型インフラ、予防保全、そして合法的なセキュリティ(ホワイトハット)を含む運用体制です。 “目立たない維持の力”が、結果として信用・投資・人材を呼び込み、社会を強くしていきます。

まとめ:何も起きないことを「価値」にする

「何も起きていない日常」は、偶然ではなく、設計と努力の積み重ねで成り立っています。 それを正当な価値として数量化し、投資として回すことは、2026年以降の社会において、安定を支える現実的な選択肢になります。

オフグリッドでできることは、電気を作ることだけではありません。 “日常を継続させる力”を、社会の標準装備にすること。 そこに、次の時代の産業機会と公共価値が同時に生まれていくはずです。

オフグリッド/分散型インフラの導入・設計についてご相談ください

「災害時の電源確保」だけでなく、「止まらない運用」「段階導入」「保守・更新」「セキュリティ」を含めて、 目的に合わせた設計を一緒に整理します。

参考リンク(一次資料)