1. 2026年 台風第25号発災から120時間の災害記録を、ひとつの時計で読む

2026年9月21日00時20分から9月26日00時20分までの120時間について、避難、気象、停電、河川、道路、水道、通信、鉄道、物流等で確認できた81件の記録を、分野ごとに切り離さず一つの時間軸へ並べています。根拠となる出典資料は24件です。

災害記録:2026年9月 台風第25号(ドゥージェン)では、いつ、誰が、何を観測し、何を公表したかを分けて確認できます。発生した時刻、観測した時刻、公表した時刻、「9月25日06時00分時点」のような公表時点、今後の予定を区別し、一次情報で確認できた時計のみを残した記録です。

確認できた事実

一次資料で確認できる時刻、数値、公表内容、発表主体、観測主体を、その資料が示す範囲で残します。

そこから読み取れること

複数の記録を同じ時計へ並べることで、どの機能が先に止まり、何が次の復旧を妨げ、どの時間が長く残ったかを読み取れます。

本稿でも、2026年の時刻と数値はこの災害記録に基づき、一次資料で確定できない時刻や因果関係は付け足しません。

2. 台風が去った後も、災害は終わらなかった

9月21日00時20分、市原市といすみ市が避難指示を発令しました。同日18時10分には、千葉県内の複数の観測地点で48時間降水量が観測史上最大を記録しました。

22日00時19分、東京電力パワーグリッドのサービスエリアでは停電が最大62,704軒に達し、そのうち千葉県は58,760軒でした。

同日、北印旛沼・角川では堤防決壊が発生しました。ただし、公開一次資料から正確な決壊発生時刻は確定できません。確認できるのは、9月22日に決壊が発生したこと、同日早朝に印旛沼土地改良区から水資源機構へ連絡があったこと、その後に現地確認が行われたことです。

決壊発生時刻 ≠ 第一報・連絡時刻 ≠ 現地確認時刻 ≠ 公表時刻

一次情報が確認できた時計のみを残した記録です。

04時30分、西印旛沼・臼井地点ではY.P.5.04mの最高水位を観測しました。計画高水位Y.P.4.25mを上回る値です。10時00分にもY.P.4.52mで、水資源機構は9月20日から印旛機場・大和田機場による排水運転を継続していました。

一方、11時00分の千葉県内の停電は約47,860軒、17時30分でも約45,230軒でした。21時、台風第25号は日本のはるか東で温帯低気圧に変わりました。

3. 同じ災害でも、すべての機能は同じ時間では戻らない

9月23日、国土交通省関東地方整備局はTEC-FORCEを派遣し、印旛沼の決壊堤防の緊急復旧について技術支援を開始しました。新たに確認された長門川の堤防決壊についても、追加の技術支援が行われました。

9月24日06時00分には、災害対策基本法に基づいて指定された国道の初期道路啓開作業が完了し、緊急通行車両の通行が確保されました。

一見すると「道路は復旧した」と読めます。しかし同日17時00分からは電力・通信の復旧に向けた関係機関の連絡調整が始まり、18時15分には早期のライフライン復旧に必要な道路啓開箇所を関係機関で確認しています。翌25日には、千葉県の要請を受け、停電世帯数の多い地域へつながる道路を中心に追加の道路啓開が実施されました。

さらに9月25日04時00分時点でも、千葉県管理道路では74区間が通行止めでした。

「幹線道路の緊急通行確保」と「個別の電力・通信設備へ到達できること」は別の復旧段階です。

道路啓開完了という一つの状態名だけでは、復旧要員、工事車両、資機材が全ての設備へ到達できるかは判断できません。

4. 電気設備だけの復旧が電力の復旧工程ではない

9月25日20時00分、東京電力パワーグリッドのサービスエリアでは6,720軒、千葉県では6,700軒、神奈川県では20軒の停電が残っていました。

同日09時00分時点で、復旧要員は1,645人、電源車は23台でした。それでも復旧できない地域について、東京電力パワーグリッドは大きく二つの状態に分けています。

  1. 設備確認済みだが、復旧作業を実施できない地域。
  2. 立入り困難で、設備確認そのものができない地域。

設備を修理する技術や交換部品があっても、現場へ到達できなければ復旧作業は始まりません。現場へ到達できなければ、何が壊れているのかを確認することさえできません。

道路障害 → 現地アクセス不能 → 設備確認不能 → 復旧作業開始不能

道路は人や車の交通インフラであると同時に、災害時には電力、通信、水道などを復旧するための共通インフラになります。

5. 停電と断水は一体の関係

9月25日06時00分。千葉県では7市3町で断水が発生しており、このうち4市1町は復旧していましたが、3市2町では断水が継続していました。断水戸数は約2,620戸でした。

原因を見ると、電力と水道の依存関係が一次資料上でも確認できます。

地域断水戸数公表された原因
市原市524戸停電によるポンプ停止
鴨川市約180戸水道管破損+停電によるポンプ停止
君津市約1,790戸水道管破損+停電によるポンプ停止
大多喜町6戸停電によるポンプ停止
鋸南町約120戸停電によるポンプ停止

ここでは、停電 → ポンプ停止 → 断水の接続を公表資料から確認できます。ただし、全ての断水を停電だけで説明することはできません。鴨川市、君津市では水道管破損も同時に公表されています。

給水という一つの機能が戻るには、道路が使えること、設備へ到達できること、電源が戻ること、ポンプが動くこと、水道設備そのものが復旧していることなど、複数の条件がそろう必要があります。

6. 交通も、同じ時間では戻らない

9月25日06時45分時点で公表されていた鉄道の復旧見込みには、大きな時間差がありました。

路線・区間9月25日06:45時点の復旧見込み
内房線 姉ケ崎―木更津少なくとも約3か月
内房線 木更津―安房鴨川9月26日始発から再開見込み
久留里線 木更津―久留里約1週間
久留里線 久留里―上総亀山再開見込みなし
総武本線 榎戸―成東約1か月
成田線 佐原―銚子約2週間
小湊鐵道 上総牛久―上総中野再開見込みなし

※ 上表は9月25日06時45分時点に公表されていた復旧見込みです。予定された再開時期と、その後の実際の運転再開日時は分けて扱います。

同じ台風による被災でも、復旧時間は数時間、数日、数週間、数か月へ分かれました。120時間の記録窓の中でも、戻った区間と、長期の復旧を要する区間が同時に存在しています。

7. 被害の全貌を把握すること自体が難しくなる

小湊鐵道では、上総牛久―上総中野間で9月24日時点の判明分として24か所の被災が確認されました。土砂流入、倒木、路盤・盛土の流出、斜面崩壊、レール・枕木・踏切・信号設備などへの被害です。

さらに、並行する沿線道路の路面崩落による通行止め・規制のため、バス等による代行輸送の実施予定も立てられませんでした。道路通行止め、停電、断水、固定電話の回線不通により、被害の全貌を把握すること自体にも時間を要しています。

通信でも同じ制約が確認されています。9月25日11時30分時点で、NTT東日本は光アクセス約840回線、固定電話約430回線について、倒木や土砂崩れなどにより復旧が長期化する可能性を公表しました。加えて、立入りが困難で被災状況そのものを確認できていない地域が多数残っていました。

「壊れた」の前に、「確認できない」という状態がある。

復旧時間には、修理時間だけでなく、現場へ到達し、被害を確認し、必要な人員・機材・部品を判断し、それらを現地へ運び、作業を開始できるまでの時間も含まれます。

2019年 令和元年房総半島台風

8. 令和元年房総半島台風から7年

2019年9月9日、台風第15号は千葉市付近に上陸しました。後に気象庁は、この台風を「令和元年房総半島台風」と名称設定しています。

関東地方では記録的な暴風となり、千葉県を中心に電柱倒壊や倒木が相次ぎました。東京電力の公表では、サービスエリアの最大停電軒数は約93万4,900軒、千葉県内では約64万軒規模に達しました。

東京電力の検証報告では、千葉エリアで最大約560回線、約64万軒の停電が発生し、設備巡視について従来の台風対応と同程度の約320人を確保していましたが、被害規模に対して不足し、全容把握に時間を要したと報告しています。また、倒木や土砂崩れ、道路寸断等により立入りそのものが難しい地点が生じました。

2019年

暴風による倒木、飛来物、電柱・配電設備被害が大きく、大規模停電が長期化した。

2026年

豪雨、土砂災害、浸水、河川・堤防被害、道路寸断等が重なり、電力・通信・水道・交通の復旧へアクセス制約が波及した。

二つの災害では、発生した自然現象と主な被害形態が異なります。その一方で復旧過程には、倒木、土砂崩れ、道路寸断、現地へ入れない、被害状況を把握できない、電力が長時間戻らない、通信や水道など別の機能へ影響が広がるという重なる障害点があります。

異なる災害で同じ復旧阻害点が現れるのであれば、災害原因とは別に、道路、電力、通信、水道、交通が互いに依存する復旧構造そのものを設計対象として捉える必要があります。

9. 2019年以降、復旧を早める対策は進められてきた

千葉県は、令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風、10月25日の大雨への対応を検証し、課題と経験・教訓を地域防災計画等へ反映して、防災・減災対策へつなげることを目的とした検証報告を取りまとめています。

東京電力も、事前準備、初動、停電長期化を時系列で検証し、国、自治体、他電力、企業との連携やシステム面を含む対策を進める方針を公表しました。検証報告では、被害状況把握の強化、要員配置、ドローン等の活用、自治体や自衛隊等との連携、倒木・土砂崩れ等への対応などを改善対象として挙げています。

千葉県側でも、停電長期化に伴う通信・給水・福祉施設等への影響を踏まえ、電源確保、情報連携、ライフライン事業者との協力などを課題として挙げています。

2019年以降、被害把握、要員配置、道路啓開、電力・通信事業者と道路管理者の連携など、復旧を早めるための対策は積み重ねられてきました。2026年の記録では、別の自然現象のもとで、道路、電力、通信、物流、人員が同じ復旧経路を共有する場面が再び現れています。

ここで設計対象とするのは、複数の社会機能が一つの道路、一つの進入経路、一つの通信、一つの補給経路へ重なって依存している部分です。

10. 房総で起きたが、房総だけの問題ではない

房総半島南部には山地が広がり、道路が山間部や沿岸部を通ります。複数地点で道路が寸断されると、集落だけでなく、その先にある電力、通信、水道、監視設備などへのアクセスも失われます。

同じ設計課題は、能登半島、伊豆半島、紀伊半島のように幹線道路や沿岸道路への依存が大きい半島部、伊豆諸島・小笠原諸島・五島列島のように海上・航空輸送を含む補給経路が限られる島しょ部、熊本県五木村を含む九州山地や四国山地・中国山地の中山間地域でも検討対象になります。

半島部
能登半島・伊豆半島・紀伊半島
島しょ部
伊豆諸島・小笠原諸島・五島列島
中山間地域
熊本県五木村・九州山地・四国山地・中国山地
一本の橋梁・トンネルが主要経路となる地域
豪雪で道路閉鎖が長期化する地域
代替経路が少ない重要施設・集落

地形や災害種別は地域ごとに異なりますが、外部から到達する経路が限られ、その経路を電力・通信・水道・医療・物流など複数の社会機能が共有するという点は共通する設計条件になります。

道路が一つのSPOFになれば、その道路を使って復旧する複数のインフラも同時に影響を受けます。設備単体の冗長化だけでは、この共有経路の単一障害点を解けない場合があります。

11. 「何日分備えるか」だけでは解けない

今回の記録は発災から120時間、5日間で区切っています。しかし、120時間が経過した時点でも復旧作業そのものは終わっていません。停電は残り、鉄道には約1週間、約2週間、約1か月、少なくとも約3か月という復旧見込みが並び、小湊鐵道や久留里線の一部区間では再開見込みも立っていませんでした。

今回の120時間の終点は、復旧過程の途中に位置していました。72時間や120時間という備蓄日数と、外部インフラが実際に戻る時刻は別の時計で進みます。

  • 道路が通れなければ、保守員が来られない。
  • 道路が通れなければ、燃料や交換部品を運べない。
  • 通信が止まれば、設備の状態を遠隔から確認できない。
  • 現場へ入れなければ、復旧に何が必要なのかを判断できない。
  • 一つの供給経路に依存していれば、その経路が戻るまで機能再開が止まる。

外部から人、燃料、部品、情報が来ない時間に、どの機能を残すか。

120時間を超えて復旧が続くとき、どの単位なら先に動かせるか。

保持時間は、この二つを成立させる条件の一つです。必要なのは、日数、残す機能、依存する経路、補給条件、復旧単位を同じ設計条件として決めることです。

12. 早期認知、備え、縮退、避難、継続、復旧

120時間を後ろから振り返ると、その前段に復旧設計の起点があります。9月18日には関東甲信地方への接近可能性が公表され、9月19日には高速道路・直轄国道で事前通行規制の可能性と開始見込みが示されていました。ここが、移動、補給、要員配置、通信手段、予備設備を前倒しで確認できる最初の時間帯です。

9月21日00時20分には市原市といすみ市で避難指示、同日18時10分には複数地点で48時間降水量が観測史上最大、22日00時19分にはサービスエリア最大62,704軒の停電が記録されました。情報が「接近の可能性」から「避難」「記録的大雨」「広域停電」へ変わるにつれ、平常運用を続ける時間は短くなります。

早期認知|9月18日〜19日

接近可能性と事前通行規制の情報が出た段階で、孤立した場合に残す機能、必要な燃料・電源・通信手段、現地要員の配置先を確認する。

備え・避難|9月21日

避難指示や降雨の急増が確認された段階では、人や資機材を動かせる道路が残っているうちに配置を終え、避難対象と継続対象を分ける。

縮退・継続|9月21日夜〜22日

広域停電、道路障害、通信障害が現れ始めた段階では、平常時の全機能維持から、給水、通信、監視、避難支援など残す機能を優先する運転へ移る。

復旧|9月23日以降

道路啓開、現地確認、資機材到着がそろった地点から復旧を進める。地域全体が同時に戻ることを前提にせず、動かせる単位を先に戻す。

この時間境界は、次の災害で初めて考えるものではありません。どの情報を受けたら準備を始めるか、どの状態で平常運用から縮退へ移るか、何を残すかを平常時に決めておくことで、発災後の限られた時間を行動へ変えられます。

13. 災害時の縮退と、社会の縮退に共通する問い

災害時には、数時間から数日のうちに道路、電力、通信、人員など利用可能な資源が急減します。人口減少や財政制約の中で進む社会の縮退は、年単位、十年単位で設備量、人員、サービス配置を変えていきます。

時間の長さは大きく異なりますが、両方で先に決めるべきことは「何を残すか」です。道路、水道、公共施設、医療、交通、通信を従来と同じ形で維持できなくなったとき、残す機能を定め、その機能を支える拠点を集約するのか、経路を分散するのか、代替手段へ置き換えるのか、役割を終えた設備を終了するのかを選びます。

スマートシュリンク(賢い縮減)は、この長期的な選択を「残す機能」から考えるものです。災害時の縮退では、その同じ問いを数時間から数日の短い時間の中で迫られます。

数時間で迫る災害対応と、数十年で進む社会変化。その両方で、限られた資源を「止めてはいけない機能」へ配分する判断が必要になります。

14. 自律・分散・非同期へ

今回の120時間では、同じ地域の中で、道路、電力、水道、通信、鉄道がそれぞれ異なる時間で復旧しました。5日を超えて停電や交通障害が残り、数週間から数か月の復旧見込みも示されています。熊本地震の復旧時間を追った「BCP『72時間』の根拠は何か?」でも、電気、通信、道路、燃料、医療は一つの時刻で同時に戻っていません。

広域災害では、地域全体を同じ時刻、同じ経路で平常へ戻すことができません。そこで、外部インフラが戻る前に残す機能、障害を一か所へ集中させない構成、復旧できる場所から先に動かす単位をあらかじめ持たせます。

自律

外部インフラが失われた時間も、その場所で必要機能を維持する。

分散

設備、電源、通信、経路を複数に分け、一つの障害が全体へ広がる範囲を小さくする。

非同期

地域全体・施設全体の回復時刻をそろえず、維持・復旧できる単位から先に動かす。

外部支援が到達するまでを自律でつなぎ、障害の広がりを分散で局所化し、復旧が始まれば非同期で動かせる単位から戻す。この三つを組み合わせることで、120時間を超える復旧過程の中でも必要機能を連続させることができます。

15. 実際に実装された解決策

外部インフラから切り離されても、通信機能を残す

熊本県五木村の防災行政無線中継局では、系統電力が届かず、道路寸断・降雨・落石等で保守や搬入が困難となる無人設備を前提に、オフグリッドで通信機能を維持する構成を実装しています。

2020年6月20日の現地設置完了直後に令和2年7月豪雨が発生し、中継局へ至る保守用道路が土砂崩れで遮断されました。この設備で解いた課題は、現地へ行けない状態でも防災通信を止めないことです。

停電・道路寸断でも通信を止めない:防災行政無線中継局のオフグリッド実装【熊本県五木村】 →

一つの供給経路を失っても、施設全体を停止させない

社会福祉施設のエネルギー多重化では、商用電源と自立電源、都市ガスとLPガス、高圧受電・切替、発電設備、スマートメーター、24時間365日監視、職員運用を組み合わせ、電源・燃料・監視・運用を複数経路として構成しています。

この設備では、燃料供給、高圧受電・切替、実負荷、監視、職員運用を複数経路に分け、一つの供給経路の喪失を施設全体の停止へ広げないことを実装しています。

停電・インフラ遮断時も全負荷を72時間維持するSPOF対策|ガス・電源のエネルギー多重化 →

設備の実装から、社会全体で残す機能へ

人口、人員、財源が減る社会で、すべての施設・サービスを同じ形で維持できなくなれば、設備ではなく「残す機能」から考える設計へと変化せざるを得ません。災害時とは時間スケールが異なりますが、限られた資源をどの機能へ配分するかという問いにつながります。

スマートシュリンク(賢い縮減)とは何か|社会が縮小しても、止めてはいけない機能を止めないための設計 →

16. 発災直後からの災害記録から、復旧を止める構造を分解し再設計する

今回の120時間を分解すると、復旧を長くしたのは個々の設備被害だけではありません。道路が寸断される。現地へ入れない。被害を確認できない。必要な人員・資機材・燃料を決められない、または運べない。その結果、電力、通信、水道、交通の復旧開始が後ろへ延びる。こうした依存の連鎖が複数の場所で現れました。

2019年の令和元年房総半島台風でも、自然現象と主な被害形態は異なる一方、倒木、道路寸断、現地アクセス、被害把握、長時間停電という同じ種類の復旧阻害点が記録されています。

この連鎖を設計単位へ戻すと、次の要素に分解できます。

  1. 早期認知の起点を決める。
  2. 道路が使えるうちに人員・燃料・予備設備・通信手段を配置する。
  3. 平常運用から縮退運用へ移る境界を決める。
  4. 避難と継続運用を同じ時間軸で判断する。
  5. 外部支援到達前にも必要機能を維持できる自律性を持たせる。
  6. 電源、通信、道路、燃料の依存先を分散し、一つの障害の影響範囲を小さくする。
  7. 地域全体の復旧を待たず、確認・アクセス・資機材がそろった単位から戻す。
  8. 予備系と代替手段で本復旧までの時間をつなぐ。

災害記録を残す意味は、被害件数を後から数えることだけにありません。発災前の予兆から本復旧までを一本の時計へ置き、どこで機能が止まり、どの依存関係が次の復旧を止めたのかを分解できれば、その部分を次の設備計画、地域防災、BCP、更新計画の設計条件へ戻せます。

被災後の復旧を速める設計は、復旧を止める依存構造を発災前に分解し、必要機能を残す方法を決めておくところから始まります。

根拠資料・参考資料

2026年 台風第25号(ドゥージェン)

本稿で使用した2026年台風第25号の時刻、観測値、停電、道路、河川、水道、通信、鉄道等の確認記録と一次資料は、以下の災害記録に集約しています。各記録から、根拠となった公的機関・インフラ事業者の原資料を確認できます。

2026年 台風第25号(ドゥージェン)|災害記録 — DS-2026-TYPHOON-25-DUJUAN v1.0

本文図の地図・ハザード情報・浸水範囲

国土地理院「重ねるハザードマップ」 — 千葉県全域図および北印旛沼周辺図の背景地図・ハザード情報に使用しています。

千葉県「北印旛沼の浸水状況図(推定)」 — 2026年9月22日16時時点の北印旛沼周辺の浸水範囲。資料中では、独立行政法人水資源機構がドローンにより推定した浸水範囲とされています。

令和元年房総半島台風(台風15号)

2019年との比較には、国土交通省、千葉県、東京電力が公表した被害・復旧・検証資料を使用しています。異なる自然現象と被害形態を前提に、復旧過程で現れた道路寸断、現地アクセス、被害把握、長時間停電などの障害点を確認します。

参考|なぜ2019年は「令和元年房総半島台風」と命名され、今回の台風はまだ命名されていないのか

「令和元年房総半島台風」は、台風第15号の発生時から使われていた名称ではありません。気象庁は2020年2月19日、2019年台風第15号について「令和元年房総半島台風」と名称を定めました。

気象庁は、台風について、顕著な被害が発生し、かつ後世への伝承の観点から特に名称を定める必要があると認められる場合に、原則として「元号年+顕著な被害が起きた地域・河川名+台風」という名称を定めます。また、台風の名称は翌年5月までに定めることを原則とし、災害発生後の応急活動の段階では台風番号を用いるとしています。

2026年9月26日時点で、気象庁の「名称を定めた気象・地震・火山現象一覧」には2026年台風第25号の固有名称は掲載されていません。このため本稿では「2026年 台風第25号(ドゥージェン)」と表記します。「ドゥージェン」は台風委員会で定められたアジア名であり、気象庁が顕著災害に対して後から定める「令和元年房総半島台風」のような名称とは別です。

なお、現在命名されていないことをもって、今後も命名されないと判断することはできません。本記事では、将来の名称設定を予測しません。

改訂履歴

初版
DS-2026-TYPHOON-25-DUJUAN v1.0の120時間災害記録を基に、2019年令和元年房総半島台風との復旧阻害点を比較し、自律・分散・非同期と実装事例までを一連の設計判断として記述。

Save

この記事要約を保存・共有する

Consultation / Field Survey

ご質問・現場調査のご依頼はこちら

IEC 61000-4-30等に準拠した高分解能の電源品質調査、 既設図面のない現場での電気回路調査・回路図作成、 現象は発生しているものの原因を特定できない電気トラブルの切り分けなどに対応します。

電気設備担当がいない、設備構成や運用条件を実際に確認しなければ判断できない場合もご相談ください。

フォーム送信後、24時間以内にご連絡します。