フェーズフリー電源BCPは、国の被害想定と国土強靱化政策を、現場の事業継続に落とし込む戦略です

南海トラフ巨大地震、首都直下地震、千葉県地震被害想定、近年の豪雨・台風・長期停電では、 停電、通信断、断水、道路寸断、医療機能支障、避難所機能不足、インターネット途絶が同時に発生する可能性があります。

国は、被害想定、国土強靱化、自治体BCP、官庁施設機能、情報通信ネットワーク、 重要インフラ緊急点検などを通じて、災害時に何が止まり、何を守るべきかを示しています。 しかし、それらの資料は所管ごとに分かれており、実際に施設や事業へ落とし込む作業は、 地方自治体、医療・福祉施設、公共施設、民間企業の側に残されています。

本ページでは、国の資料群を横断し、現場で必要になる電源・通信・データ・施設機能を整理します。 そのうえで、平時から使い、有事にも同じ運用で使えるフェーズフリー電源BCPとして、 何を準備すべきかを示します。

フェーズフリー電源BCPとは

フェーズ(phase)とは、物事の進行過程における「段階」や「局面」を指す言葉です。 災害対応でいえば、平時、発災直後、停電中、避難所運営、復旧期といった局面があります。

フェーズフリー電源BCPとは、非常用電源を災害時だけの備蓄品として扱うのではなく、 平時から電源・通信・データ・施設機能・非常時優先業務に組み込み、 停電、通信断、庁舎機能停止、インターネット途絶が起きても、 業務継続に必要な機能を残すための実務設計です。

運用されていない非常用電源は、非常時には動きません。 平時から使い、監視し、訓練し、更新している電源だけが、有事の事業継続に接続できます。

1. これから想定されている自然災害リスク

国の防災資料や自治体の被害想定は、単に「大きな地震が来る」という注意喚起ではありません。 広域・巨大災害では、電力、通信、道路、港湾、医療、行政、物流、データ、住民対応が同時に制約を受けることを前提にしています。

南海トラフ巨大地震

強い揺れ、巨大津波、広域被害、リソース不足、時間差で発生する地震への対応が課題になります。

首都直下地震・都市災害

庁舎、通信、交通、金融、データセンター、物流、医療が集中する都市機能の停止が問題になります。

地域被害想定

千葉県地震被害想定のように、停電率、避難者数、医療機能支障、津波避難などの地域別リスクが示されます。

これらの想定が示しているのは、災害時に「行政が何とかしてくれる」という前提では足りないということです。 自組織が何を止めてはいけないのかを、平時に決めておく必要があります。

2. 国は何を考えているか

国は、南海トラフ巨大地震対策、国土強靱化、重要インフラ緊急点検、自治体BCP、 官庁施設機能、情報通信ネットワークなどを通じて、災害時に守るべき機能を示しています。 その中心にあるのは、電力・通信・医療・行政・交通・物流・データを止めないことです。

ただし、これらの資料は省庁別・分野別に作られています。 情報通信は総務省、庁舎・施設は国土交通省、自治体BCPは内閣府、 医療・福祉は厚生労働省、エネルギーは経済産業省というように、 用語、点検項目、評価軸、補助制度が分かれます。

国は方向性と資料を示します。 しかし、実際に電源・通信・データ・施設機能を組み合わせ、 自組織の事業継続に落とし込む作業は、現場側に残されています。

3. 国の役割と、現場に残される役割

国の役割

  • 被害想定を示す。
  • 防災・減災、国土強靱化の基本方針を示す。
  • 自治体BCP、通信、官庁施設、重要インフラの手引きを整備する。
  • 補助制度や支援制度を設計する。
  • 災害時に広域調整と情報発信を行う。

民間企業・自治体現場の役割

  • 自組織で止めてはいけない業務を決める。
  • 必要な電源、通信、データ、施設機能を確認する。
  • 設備を選定し、平時から運用する。
  • 停電・通信断・インターネット途絶時の手順を決める。
  • 訓練、点検、遠隔監視、更新を継続する。

国は方向性と資料を示します。 しかし、実際に事業を止めない設計を行うのは、現場自身です。

4. 災害対策は、現場に届くと縦割りの資料群になる

国の災害対策は、国土強靱化、南海トラフ巨大地震対策、自治体BCP、官庁施設、 情報通信、医療、福祉、港湾、交通、エネルギーなど、分野ごとに整備されています。 これは政策上は必要な整理ですが、現場で実装する段階では別の問題を生みます。

本来は「重要インフラを止めない」という一つの目的に向かう対策であっても、 現場に届く頃には、通信、電源、庁舎、データ、避難所、医療ICT、遠隔監視が それぞれ独立した資料として存在します。 これらを横断して、何を先に守り、どの設備を残し、どの通信を確保し、 どの電源をどこに置くのかを決める作業は、現場側に残されています。

フェーズフリー電源BCPは、この縦割りの資料群を、 「非常時優先業務を止めないための電気・通信・データ・施設機能」という単位で つなぎ直すための実装フレームです。

5. インターネットは、途絶える前提で設計する

災害時の通信対策では、「インターネットにつながるかどうか」だけを考えると判断を誤ります。 広域・巨大災害では、通信回線そのもの、基地局、通信局舎、光ファイバー、海底ケーブル、 陸揚げ局、電力、空調、保守体制が同時に影響を受ける可能性があります。

また、通信網の一部が生きていても、停電、輻輳、経路障害、クラウドサービスへの到達不能、 庁舎・避難所側のネットワーク機器停止によって、実際には情報を送受信できない場合があります。

そのため、フェーズフリー電源BCPでは、インターネットが使えることを前提にせず、 使えない時間帯にも最低限の情報伝達と業務継続ができる構成を準備します。

6. 自治体BCPは、電気・通信・データを前提に動く

自治体の非常時優先業務には、災害対策本部、住民対応、避難所運営、被害情報の収集、 関係機関との連絡、物資管理、安否確認、広報、罹災証明などがあります。 これらの多くは、電源、通信、端末、サーバ、行政データ、印刷・受付機器に依存しています。

そのため、庁舎、代替庁舎、避難所、通信拠点、防災倉庫、医療・福祉施設を個別に見るだけでは足りません。 非常時優先業務を実行するための電源・通信・データ環境として設計する必要があります。

電気

災害対策本部、受付端末、通信機器、照明、PC、プリンタ、監視機器を動かす電源を確保します。

通信

固定回線、携帯回線、衛星通信、防災行政無線、庁内ネットワークを複数経路で確保します。

データ

住民対応や被災者支援に必要な行政データへ、停電時・通信障害時にも到達できる設計にします。

運用

発災時に初めて使うのではなく、平時から点検、訓練、遠隔監視、切替確認を行います。

7. BCPは、庁舎・施設の機能が残って初めて実行できます

BCPは計画書だけでは機能しません。 庁舎、代替拠点、電気室、通信設備、電算機室、執務空間、活動支援空間が、 非常時優先業務を実行できる状態で残っている必要があります。

施設機能を守るには、庁舎全体を一括して守るのではなく、 非常時優先業務に必要な負荷を切り分けることが重要です。 災害対策本部、通信機器、受付端末、サーバ、監視機器、照明、医療・福祉連携端末など、 止めてはいけない設備を明確にします。

基幹設備機能

電力、通信・情報、監視制御、空調、給排水など、施設機能を維持するための設備。

活動空間

災害対策本部、受付、住民対応、情報収集、非常時優先業務を行う執務空間。

活動支援空間

電気室、機械室、電算機室、備蓄倉庫、廊下、階段、トイレなど、業務を支える空間。

8. 平時に整理すべきこと

民間企業、医療・福祉施設、公共施設、自治体現場が災害対策を実装するには、 まず「できること」と「できないこと」を平時に切り分ける必要があります。

止めてはいけない業務

災害対策本部、受付、医療ICT、通信、監視、出荷、決済、データ保全など、優先業務を明確にします。

維持すべき時間

3時間、24時間、72時間、1週間など、用途ごとに必要な電源維持時間を分けます。

必要な通信経路

光回線、LTE/5G、Starlink、防災行政無線、Wi-Fi HaLow、ローカルネットワークを用途別に整理します。

必要なデータ

クラウドに到達できない場合でも必要な台帳、受付情報、監視映像、図面、連絡先を確認します。

操作する人

誰が移動し、誰が接続し、誰が切替を判断し、誰が監視するのかを決めます。

監視と更新

バッテリー劣化、過負荷、通信断、機器停止を平時から監視し、更新時期を管理します。

9. 有事に備えるフェーズフリー電源戦略

フェーズフリー電源戦略では、非常用電源を「しまっておくもの」ではなく、 平時から現場の業務に組み込む運用インフラとして設計します。 そのためには、UPS、CVCF、発電機、蓄電池、可搬型電源、通信機器、遠隔監視を用途別に組み合わせます。

電源BCPの目的は、設備を増やすことではありません。 止めてはいけない業務を、有事にも動かし続けることです。

千葉県地震被害想定から読むフェーズフリー電源BCP

時事的な被害想定として、千葉県が公表した地震被害想定をもとに、 停電率、避難者数、医療機能支障、津波避難、台風15号の教訓を整理した記事を公開しています。

千葉県地震被害想定から読むフェーズフリー電源BCP では、地域被害想定を現場の電源・通信・医療ICT・避難所支援に落とし込む考え方を解説しています。

実務で参照すべき公的資料

フェーズフリー電源BCPを検討する際は、以下の公的資料を横断して確認する必要があります。 本ページでは、それぞれの資料を所管別ではなく、現場で確認すべき機能別に読み替えています。

国の想定を、現場の事業継続に落とし込む

災害対策は、資料を集めるだけでは機能しません。 止めてはいけない業務を決め、必要な電源・通信・データ・施設機能を平時から運用して初めて、BCPになります。

国は、被害想定と政策の方向性を示します。 しかし、民間企業、自治体現場、医療・福祉施設、公共施設が担う実務は多岐にわたります。 すべてを有事に判断することはできません。

できること、できないことを平時に整理し、 有事にはフェーズフリー電源で必要な業務を動かし続ける。 それが、本ページで示すフェーズフリー電源BCPです。