この記事のポイント

千葉県地震被害想定と令和8年8月千葉豪雨を、被害規模ではなく停止した機能で対応付けます。公表事実から単一障害点と依存関係を特定し、維持機能から技術要件を導き出します。現時点で存在する解と残余リスクを可視化し、政策としての役割と実装上の課題を示します。

結論

止めてはいけない機能を定義し、平時から同じ設備・同じ運用で維持する。これにより、初動で守る機能、必要な自立時間、外部支援への引継ぎ条件、残余リスクを具体化できます。

政策と技術を接続する目的は、 技術を導入すること自体ではありません。 何を維持するのか、何時間維持するのか、 どこから外部支援へ引き継ぐのか、 そして何が残余リスクとして残るのか を判断できる状態にすることです。

Policy Context Bridge

公表された事実から、実装条件を導く

公式の位置付け

令和8年5月26日、千葉県は 「千葉県地震被害想定調査」の結果を公表しました。 千葉県北西部直下地震、大正型関東地震、 房総半島東方沖の地震を対象に、 人的・建物被害だけでなく、 電力、通信、上下水道、避難、 医療機能支障などを想定しています。

その後、2026年8月13日から千葉県で発生した記録的豪雨について、 気象庁は8月14日、 「令和8年8月千葉豪雨」 と名称を定めました。 内閣府、厚生労働省、 東京電力パワーグリッドなどから、 停電、交通、通信、医療・福祉施設等の 被害状況が公表されています。

公表データだけでは答えられない問い

  • 重要施設は、外部支援なしで 何時間・どの機能を維持するのか。
  • 全負荷を維持できない場合、 何を残し、何を止めるのか。
  • 固定設備自体が浸水したとき、 電力を別の場所へ再配置できるのか。
  • 電源車や支援物資が道路寸断で到達できない場合、 初動を何でつなぐのか。
  • 電源を確保しても、 通信、水、人員、搬送が失われた場合に どの機能が残るのか。
  • 対策後にも残るリスクを、 県・市町村・施設はどこまで許容するのか。

本稿の読み方

公表事実から制約条件と故障モードを抽出し、 維持機能を定義して技術要件を導出します。 そのうえで存在する解と対応付け、 残余リスクを特定・可視化します。 公式見解と当社評価は混同しません。

当社の着目点

何が単一障害となり、 どう回避・縮小できたのか。

公表された事実と公式発表を起点に、 SPOF、依存関係、代替経路、 支援までの時間を特定し、 技術的な境界を可視化します。

1. 令和8年8月千葉豪雨で何が起きたのか

内閣府の2026年8月14日11時時点資料では、 千葉県で13日夕方以降に線状降水帯が発生し、 14日6時までの24時間降水量が200mmを超える 記録的な大雨となりました。 特に千葉市では360mmを超え、 観測史上1位を更新したとされています。

13日19時30分から14日5時15分まで、 レベル5の大雨特別警報・土砂災害特別警報が 広い範囲に発表されました。

同資料では、 千葉県内で277か所の避難所が開設され、 5,049人が避難していました。 電力は13日22時時点で最大約46,980戸が停電し、 14日10時時点でも 千葉県内約25,000戸が停電していました。

領域 公表された事実 BCP上の論点
気象 千葉市で24時間降水量360mm超、 観測史上1位 局地的外力が短時間で集中する
電力 最大約46,980戸停電、 蘇我変電所が浸水 発電能力があっても 配電拠点停止で電力が届かない
重要施設 重要施設12か所から停電連絡、 電源車42台体制を準備 外部支援には 配車・移動・接続の時間が必要
通信 KDDIひかり電話5,597回線に支障、 au基地局10局停波 電源と通信経路の 双方に継続条件がある
ガス 八千代市・佐倉市で 12,891戸が供給停止 複数ライフラインが 同時に停止し得る
交通 道路冠水・崩落、 在来線9路線運転見合わせ 人員・物資・保守員の移動自体が 制約される
医療 最大24医療施設で被害報告、 浸水最大22施設 医療施設自体が 被災主体となり得る
福祉 高齢者31施設、 障害者17施設で被害報告 要配慮者施設では 複数の継続条件が必要

内閣府 災害情報

令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について
(令和8年8月14日11:00現在)
被害の状況・政府の主な対応一覧

内閣府公表PDFを確認する →

※被害状況は速報値です。 時点により数値が更新される場合があります。

2. 地震想定と豪雨を 「規模」ではなく「止まった機能」で比較する

千葉県地震被害想定では、 千葉県北西部直下地震で 電力停電率約53%、 2週間後の避難者約87.2万人などが示されています。

これは将来の地震被害を評価するための想定であり、 今回の豪雨被害と件数を 直接比較するものではありません。

一方、令和8年8月千葉豪雨では、 原因こそ異なるものの、 地震被害想定が扱っていた ライフライン停止、 避難、医療機能支障、 生活支障の一部が 現実の障害として発生しました。

災害原因 直接的な被害 最終的に止まる機能
地震 送配電設備損傷、倒壊、断線 電力供給
豪雨 変電所浸水 電力供給
地震 通信設備損傷、停電 情報伝達
豪雨 固定回線障害、基地局停波 情報伝達
地震 道路・鉄道被害 人員・物資移動
豪雨 冠水、切土崩落、鉄道運休 人員・物資移動
地震 病院設備・ライフライン被害 医療機能
豪雨 浸水、停電、断水 医療機能

災害種別が異なっても、 止めてはいけない機能は共通します。 その機能を平時から特定し、 どこまで自立させるかを決めておくことが、 地震想定と豪雨実績を 同じBCP上で読む意味です。

電源BCPと事業継続を確認する →

3. 蘇我変電所浸水―― 「電気がある」と「電気が届く」は別の問題

東京電力パワーグリッド株式会社は 2026年8月14日、 前日の大雨により、 8月14日8時時点で 千葉県内約24,950軒が停電し、 そのうち約15,890軒が 蘇我変電所の浸水の影響によるものと公表しました。

同社は浸水解消後、 設備の健全性を確認し、 安全が確認できた箇所から 順次送電を再開する方針を示しています。

2026年8月14日  東京電力パワーグリッド株式会社

蘇我変電所浸水による停電長期化について

東京電力パワーグリッド公表PDFを確認する →

一方、政府取りまとめでは、 同時点の電力需給そのものには 問題がないとされています。

つまり今回の停電では、 「電力をつくれること」と 「必要な場所まで電力を届けられること」 を分けて捉える必要があります。

発電能力が存在する → 系統に電気がある → しかし配電拠点が止まり、 必要な場所には届かない。

OFFICIAL / IMPLEMENTATION FACT

蘇我変電所が浸水し、 多数の需要家で停電が継続した。

CONSTRAINT / FAILURE MODE

需要地点は発電設備だけでなく、 変電・配電設備にも依存する。 系統・配電拠点が 単一障害点となる場合がある。

TECHNICAL REQUIREMENT

自立、無瞬断、優先負荷、 固定設備障害時の電力再配置。

RESIDUAL RISK|残余リスク

長時間化、施設浸水、 大容量負荷、通信同時断、 保守員の到達不能は残る。

COMPANY EVALUATION|当社評価

技術を何のために使うのか

系統電力の有無と、 需要地点まで電力が到達できるかは別の問題です。 無瞬断、可搬、分散、自立電源は、 地域全体の系統を代替するためではなく、 止めてはいけない機能を局所的に維持し、 情報収集・判断・外部支援への引継ぎに必要な 時間を確保する ために使います。

POLICY IMPLICATION|政策上の示唆

政府・自治体・企業は何を判断するのか

重要施設ごとに、 維持機能、自立時間、 外部支援への引継ぎ条件、 代替経路、残余リスクを あらかじめ定義しておく必要があります。 その判断を、 設備仕様と運用計画へ接続します。

4. 重要施設12か所と電源車42台体制―― 「支援が来るまで」を誰が担うのか

内閣府資料では、 自治体から重要施設12か所の停電連絡があり、 4か所は送電ルートの切替で復旧しました。

残る8か所について、 優先復旧依頼があった2か所には 電源車2台を派遣し、 その他6か所も復旧作業と 電源車派遣準備を並行。 千葉県内5台、近隣県7台、 さらに30台を追加派遣準備し、 合計42台体制とされています。

電源車は大容量の電力を供給できる 重要な復旧手段です。 一方、その利用には、 車両、道路、接続設備、 要員、燃料、優先順位という 条件があります。

今回は道路でも、 冠水や切土崩落による通行止めが 複数発生しました。

時間軸で役割を接続する

可搬型UPSは、 発災直後の初動や 情報収集・通信・重要端末をつなぐ。 電源車や発電機は、 より長時間・大容量の給電を担う。

「UPSか電源車か」ではなく、 外部支援が到着するまでを含めて 多層の電源BCPとして接続することが重要です。

残余リスク: 長時間化、 浸水域全体の立入不能、 大容量負荷、 燃料供給、 再充電源の喪失は、 可搬型UPSだけでは解消しません。

BCP「72時間」と 初動・広域支援の時間軸を確認する →

5. 予測から行動まで―― 防災には「判断に使える時間」の限界がある

今回の豪雨について、 報道では最初の線状降水帯に対して、 気象庁の半日前予測や直前予測が出ず、 最初の線状降水帯発生から レベル5の大雨特別警報まで 約1時間半だったとされています。

これは気象庁の予測能力を 批判するための材料ではありません。 局地的豪雨では、 予測精度が向上しても、 予測を確認してから 準備を開始できる時間が 十分に残るとは限らない という制約を示しています。

倉庫から機器を探す。 充電状態を確認する。 担当者を呼ぶ。 接続する。 負荷を選ぶ。 これらを状況悪化後に始める設計では、 初動時間を失います。

COMPANY EVALUATION|当社評価

発災後に必要となる準備工程を減らす

平時接続、常時充電、 日常操作、状態監視、 停電時の無瞬断切替によって、 発災後に新たに行う準備工程を減らします。

ただし、 設備そのものが浸水・破損する 残余リスクは残るため、 設置場所と搬出経路は 別途確認する必要があります。

POLICY IMPLICATION|政策上の示唆

空振りを許容する社会へ

予測精度を高めても、 危険が確定してからでは 行動時間を確保できない場合があります。

政策として問われるのは、 「予測が当たったら動く」ことだけではありません。 一定の兆候を確認した段階で、 人命や重要機能への影響を基準に 先行行動できることです。

運休、移動抑制、 一時滞在施設の早期開放、 重要施設の自立運転への移行などが、 結果的に「空振り」となったとしても、 重要機能を守るための予防コストとして どこまで許容するのか。 その判断基準を事前に持つ必要があります。

兆候を確認する → 閾値を定義する → 行動を先行する → 結果を検証する → 基準を更新する

VOI(Value of Inaction)は、 平時にも設備や運用そのものに価値があるため、 先行対応を 「災害が来なければ無駄になる準備」 にしにくいという特徴があります。

6. 通信も止まる―― 電源を維持しても通信が必ず残るわけではない

内閣府資料では、 8月14日10時30分時点で KDDIのひかり電話5,597回線に支障があり、 auではエリア支障なしとしながら、 千葉県内10局の停波が記録されています。

ルーター、ONU、 PoEスイッチ、 Wi-Fiアクセスポイントなど、 利用者側設備を停電から守ることには 明確な価値があります。

一方で、 通信事業者側の設備や 通信回線そのものが停止すれば、 利用者側UPSだけでは 通信を復旧できません。

低減できるリスク

施設内通信機器の停電、 PoE停止、 ルーター再起動、 局所的な電源断。

残るリスク

通信事業者側障害、 全経路同時断、 衛星通信の設置条件、 通信混雑、 端末故障。

通信BCPでは、 施設内通信機器の無停電化と、 固定回線・携帯・衛星通信等の 経路多重化を接続して考えます。

7. 医療・福祉では 「電源で維持できる機能」と 「電源だけでは維持できない機能」を切り分ける

厚生労働省第4報では、 8月15日9時時点で 千葉県内の医療施設について 最大24施設で被害報告があり、 最大で浸水22施設、 停電3施設、 断水4施設とされています。

高齢者関係施設は31施設で被害報告があり、 建物被害28施設、 停電4施設、 断水2施設、 床上浸水17施設。

障害者関係施設は17施設で、 建物被害6施設、 停電7施設、 断水7施設、 床上浸水9施設でした。

さらに、 千葉県内2医療機関で 断水や浸水により 透析実施が困難となり、 患者は他医療機関で 透析を受ける手配がなされています。

電源BCPの境界

UPSで電気を供給できても、 水がなければ透析はできません。 通信を維持しても、 搬送道路が使えなければ 患者を移せません。 医療ICTが動いても、 施設自体が浸水すれば 診療場所を失うことがあります。

電源で維持しやすい機能

  • 電子カルテ端末、医療用PC
  • 受付・会計・連絡端末
  • ルーター、ONU、Wi-Fi、PoE
  • 一部の医療機器・補助機器
  • 夜間照明、情報表示、監視

電源だけでは成立しない機能

  • 大量の水を必要とする医療
  • 浸水した診療空間
  • 医療従事者の到達
  • 医薬品・酸素・消耗品物流
  • 患者搬送

当社が担える領域: 医療ICT向け可搬型・無瞬断電源、 動くコンセントインフラ、 重要機器の局所保護、 通信設備の電源維持、 遠隔監視。

残余リスク: 断水、 施設浸水、 人員不足、 患者搬送、 医療ガス、 消耗品等は 電源設備の外側に残ります。

8. 帰宅困難者は「地震だけ」の課題ではなかった

内閣府資料では、 成田国際空港で 8月14日3時時点に 6,680人が滞留しました。

JR蘇我駅周辺では 約4,000人の帰宅困難者が発生し、 千葉県からの災害派遣要請を受け、 自衛隊がマイクロバス・大型バスによる 千葉県文化会館への輸送支援を開始しています。

一時滞在施設に必要なのは、 建物を開けることだけではありません。

受付・名簿管理、 スマートフォン充電、 外部との通信、 情報表示、 夜間照明、 Wi-Fi、 要配慮者支援、 医療・救護との連絡など、 多くの機能が 電気と通信に依存します。

残余リスク: 電源・通信を確保しても、 収容人数、 飲料水、 トイレ、 空調、 食料、 衛生、 職員配置、 移送先の確保は残ります。

Residual Risk Map

9. 残余リスクを特定し、可視化する―― 「対策したから安全」ではない

BCP設備を導入すると、 リスクがゼロになるのではありません。 低減できたリスクと、 それでも残るリスクを 切り分けられるようになります。

残余リスクを可視化すれば、 追加対策する部分、 別の仕組みに引き継ぐ部分、 受容する部分を 判断できます。

対策 主に低減できるリスク 対策後にも残るリスク 次に必要な判断
UPS 瞬停、短時間停電、切替停止 長時間停電、容量枯渇 何時間をUPSで担うか
大容量蓄電 長時間停電 蓄電量枯渇、再充電不能 再充電源・負荷制限
可搬型電源 固定電源故障、電力再配置 浸水、搬送不能、大容量負荷 配置場所・搬出経路
電源車 大容量・長時間給電 道路寸断、配車待ち、燃料 到着までの自立時間
発電機 長時間給電 燃料、始動不良、排気、保守 燃料備蓄・点検周期
通信機器UPS 利用者側設備の停電 通信事業者側障害 通信経路多重化
Starlink等 地上回線障害 設置条件、 端末電源、 サービス障害 複数経路・訓練
遠隔監視 異常の早期把握 通信全断、センサー故障 ローカル確認手段
分散配置 単一障害点 広域同時被災 地域を跨ぐ分散
医療ICT電源 診療情報・端末停止 断水、浸水、人員、搬送 医療機能別BCP

残余リスクは、 「製品の弱点」を示すための情報ではありません。 対策によって何が変わり、 何が変わらないのかを明確にし、 次の判断へ進むための情報です。

10. フェーズフリーを語る前に、 防災として何を定義すべきか

災害への備えを考える際に、まず必要なのは、 「平時と有事を分けない」という考え方そのものではありません。 どの災害を想定するのか、 何が停止するのか、 その状態がどの程度続くのか、 どの機能を維持しなければならないのか、 そして誰が、どの情報をもとに判断し行動するのか を具体的に定義することです。

そのうえで、平時に利用している設備やサービスを 災害時にも活用できるよう設計することには意味があります。 しかし、それは災害分析や要求性能、責任分界、 復旧までの時間軸を置き換えるものではありません。 防災を日常へ溶け込ませることより先に、 防災を判断可能な構造にする必要があります。

一方、実装では 「平時にも使える」という理念だけでは BCPは成立しません。

どの機能を維持するのか。 何時間自立するのか。 いつ縮退運転へ移るのか。 どこで外部支援へ引き継ぐのか。 どのリスクを残余リスクとして受容するのか。 こうした条件を 施設やサービスごとに具体化する必要があります。

実装課題 1|維持機能

非常時にも維持する 公共サービス、医療、 通信、情報、受付等を 機能単位で定義する。

実装課題 2|自立時間

15分、2時間、24時間、72時間など、 どの時間帯を 施設自身が担うかを定義する。

実装課題 3|支援への引継ぎ

UPS、蓄電池、発電機、 電源車、別系統を 時間軸で接続し、 外部支援到着までを途切れさせない。

実装課題 4|固定設備の喪失

浸水や設備故障時に、 可搬電源、分散配置、別経路によって 維持機能を移せるか確認する。

実装課題 5|電源と通信

電源、固定回線、携帯、 衛星通信の依存関係を 一つのシステムとして可視化する。

実装課題 6|平時運用と監視

日常利用、充電、 劣化把握、遠隔監視、点検を 非常時の前提条件として運用する。

実装課題 7|残余リスク

設備導入後にも残るリスクを明示し、 追加対策、代替運用、 避難・移送の判断主体を定める。

実装課題 8|空振りを許容する閾値

運休、移動抑制、 一時滞在施設開放、 自立運転へ移る兆候と閾値を定義し、 実施結果から基準を更新する。

11. 公共調達では「容量」だけでなく、 維持機能と残余リスクを確認する

非常用電源の調達では、 「何kWhか」 「何W出力か」 という容量だけでは、 BCPとしてどこまで機能するのかを 判断できません。

少なくとも、 次の条件を確認できる必要があります。

  • 維持対象機能・負荷
  • 必要継続時間
  • 切替時間
  • 波形・電源品質
  • 可搬性
  • 設置場所と浸水リスク
  • 充電・再充電方法
  • 発電機・電源車との役割分担
  • 遠隔監視
  • バッテリー劣化把握
  • 保守体制
  • 安全性
  • 災害後の交換・復旧方法
  • 対策後に残る残余リスク
公共調達・重要インフラ向け 蓄電池安全の判断条件を確認する →

12. 千葉県が想定していた課題と、 千葉豪雨で明らかになった課題を 技術的に対応付ける

千葉県地震被害想定で示されていた ライフライン、医療、避難、生活支障の論点と、 令和8年8月千葉豪雨で 実際に明らかになった課題を 同じ機能軸で対応させます。

次に、 その停止要因と依存関係を技術的に分解し、 どのような解が存在するのか、 その解によって何が変わるのか、 そして何が残るのか を対照させます。

千葉県地震被害想定での論点 千葉豪雨で明らかになった課題 技術的に分解すると 存在する解 残余リスク
停電・電力供給支障 蘇我変電所浸水、 重要施設停電 系統・配電拠点への集中依存、 SPOF 優先負荷、 無瞬断UPS、 可搬電源、 分散配置、 自立電源、 電源車への引継ぎ 長時間化、 施設浸水、 大容量負荷、 燃料
通信支障・情報伝達 固定回線支障、 基地局停波 施設内電源と 通信経路への二重依存 PoE・通信機器UPS、 固定/携帯/衛星の多重化、 遠隔監視 全経路同時断、 設置条件、 通信混雑
医療機能支障 医療施設浸水・停電・断水、 透析実施困難 電源・水・施設・人員・搬送の 複合依存 優先負荷、 医療ICT無瞬断、 縮退運転、 代替施設・搬送連携 透析用水、 施設浸水、 人員、 受入容量
避難・帰宅困難 成田空港滞留、 JR蘇我駅周辺の帰宅困難 交通停止と 一時滞在施設の運営機能 受付・情報・充電・通信・照明を 支える可搬電源と通信 収容力、 水、 食料、 衛生、 空調、 移送先
生活支障・複数ライフライン停止 ガス供給停止、 下水道ポンプ停止、 道路冠水 電力だけでは完結しない 相互依存 機能別BCP、 分散配置、 代替運用、 地域連携 広域同時被災、 物流、 復旧資源競合

COMPANY EVALUATION|当社評価

解が何のために使われるのか

この対応表は、 製品を選ぶためだけの表ではありません。 技術がどの停止要因を低減できるのか、 その技術によって どの機能と時間を確保できるのか、 そしてどこから先が 別の対策領域になるのかを判断するために使います。

POLICY IMPLICATION|政策上の示唆

政策が実装条件へ変わる

フェーズフリーという政策理念を、 維持機能、 自立時間、 切替条件、 外部支援への引継ぎ、 監視・保守、 残余リスクという 実装条件へ置き換えることで、 施設ごとの判断と調達へ接続できます。

13. 電源BCPで問うべきなのは、 「フェーズフリーか」ではなく、 災害時にも重要機能を維持できるか

電源BCPでまず確認すべきなのは、 製品や設備が「フェーズフリー」と呼べるかどうかではありません。 災害によって商用電源や通信が停止したときに、 どの設備を、 どの程度の負荷で、 何時間維持し、 どの条件で縮退運用や代替手段へ切り替えるのか を具体的に定めることです。

平時から使用している電源・通信・監視・医療ICTを、 災害時にも継続して利用できる設計は、 運用負担や切替時の混乱を減らすうえで有効です。 しかし、それはあくまで 事前に定めた要求性能と事業継続計画を実現するための実装方法 です。

重要なのは、 「平時と有事を分けない」という言葉ではなく、 平時から使われている設備が、 有事に必要となる最低限の機能、継続時間、切替性能、 監視性、保守性を実際に満たしているか を確認できることです。

非常時だけ倉庫から取り出す 設備を増やすことが目的ではありません。

電力を備える。 情報を切らさない。 そして、判断と支援に必要な 「時間」を備蓄する。

停電によって、 通信、監視、情報端末まで停止すれば、 被害状況そのものを把握できなくなります。

情報がなければ、 限られた電源車、人員、物資を どこへ優先的に配るべきかも判断できません。

初動の電源は、 機器を動かすだけではなく、 状況を把握し、 判断し、 次の支援へ引き継ぐまでの 時間を確保します。

平時から使う

日常業務で使用することで、 接続先、操作方法、必要負荷を 平時から確認できます。

情報を切らさない

通信、監視、受付、医療ICTを継続し、 状況把握と支援判断に必要な 情報を保持します。

状態を監視する

バッテリー、負荷、異常、 通信状態を平時から確認します。 当社は24時間365日の遠隔監視と 自社データセンターによる 運用に対応しています。

次の電源へ引き継ぐ

UPSで初動をつなぎ、 長時間化したら 発電機、電源車、別系統、 再充電源へ段階的に移行します。

平時と有事を 別の設備・別の手順に分断せず、 同じインフラを連続して運用する。 その連続性こそが、 フェーズフリーの実装価値です。

14. 提言―― 止めてはいけない機能を決め、 平時から運用する

千葉県地震被害想定は 地震を対象とする資料であり、 令和8年8月千葉豪雨は 豪雨災害です。 被害規模を同一視することはできません。

しかし両者を機能単位で比較すると、 電力、通信、移動、 医療、避難・一時滞在という 共通の継続課題が確認できます。

そこで必要になるのは、 止めてはいけない機能を決め、 その機能を平時から運用すること です。

平時から使われ、 状態が監視され、 担当者が日常的に扱い、 災害時にも同じ設備・同じ操作で継続できれば、 初動時の準備工程と判断の遅れを減らせます。

そのうえで、 維持機能ごとに 自立時間、 切替条件、 外部支援への引継ぎ条件、 代替経路を定義し、 対策後に残るリスクを 特定・可視化します。

残余リスクが見えれば、 追加対策する部分、 外部支援へ引き継ぐ部分、 受容する部分を判断できます。

また、 急激な気象変化では、 行動に使える時間が 短くなる場合があります。

そのため、 兆候を確認し、 閾値を定義し、 必要な行動を先行し、 結果を検証して、 基準を更新する。

結果として災害が発生しなかった場合の 「空振り」を、 人命や重要機能を守るための 予防コストとして どこまで許容するかという判断も必要です。

平時に使う。
状態を知る。
止めてはいけない機能を守る。
情報と判断の時間をつなぐ。
そして、次の支援へ引き継ぐ。

平時から有事まで、 これらを切れ目なく運用できるインフラを、 本稿ではフェーズフリー電源BCPと捉えます。

根拠・出典

一次資料

  • 千葉県 「千葉県地震被害想定調査(令和6・7年度)」 公式ページ
  • 千葉県 「千葉県地震被害想定調査結果(概要)」 PDF
  • 気象庁 「令和8年8月13日からの千葉県の豪雨の名称について」 2026年8月14日
  • 内閣府 「令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について (令和8年8月14日11:00現在)」 PDF
  • 厚生労働省 「令和8年8月13日からの大雨について」 第1報~第4報 公式ページ
  • 東京電力パワーグリッド株式会社 「蘇我変電所浸水による停電長期化について」 2026年8月14日 PDF
  • 大多喜ガス株式会社 「8月13日(木)に発生した大雨による 都市ガスの供給停止状況について(第一報)」 公式ページ

時系列・現場状況の補助資料

関連する判断材料

Alternative Power / Business Continuity

電源品質に、 空白をつくらない。

停電、設備故障、浸水、法定点検、リコールなど、 既存の電源設備が使えない時間にも、 通信、医療ICT、制御、監視、受付などの 止めてはいけない機能は残ります。

代替電源は、施設全体を支えることが目的ではありません。 必要な負荷と継続時間を絞り、初動を無瞬断でつなぎ、 発電機、電源車、別系統、系統復旧など次の電源へ引き継ぐまでの 時間を確保するために使います。

停電時の切替時間

無瞬断・0秒切替

停電発生時も接続機器への給電を継続

非リチウム方式

AGM方式鉛蓄電池

長期保有と定期交換を前提とした産業用設計

TAIS登録番号

02272-000001

可搬型UPS HPPHBB0101

公的な技術評価

神戸発・優れた技術

慧通信技術工業株式会社の認定技術

※必要な容量、出力、運転時間、切替条件は、接続する機器、突入電流、 設置環境、充電方法、運用体制により異なります。 既存設備との役割分担、代替電源への切替、次の電源への引継ぎまで含めて設計します。

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