Availability Dependency Map / Disambiguation
SPOFは「一台の機器」ではなく、代替のない共通依存を探す
情報システムが利用できなくなったとき、原因をサーバ、通信、電源のどれか一つに決め打ちすると切り分けを誤ります。 利用者が業務を使うまでの経路を上流から下流へたどり、止まると複数の機能を同時に失わせる共通依存先を確認します。
01 / BUSINESS
業務・行政サービス
住民受付、出荷、医療、監視など、停止を許容できない機能と許容停止時間を先に定義する。
02 / ENDPOINT & IDENTITY
端末・認証
端末が動いていても、認証サーバ、ディレクトリ、MFA等が単一点ならログインできない。
03 / NAME & SESSION
DNS・名前解決・セッション
回線疎通があってもDNSや名前解決が止まれば、クラウドや業務システムへ到達できない。
04 / NETWORK
WAN・VPN・ルーティング
回線二重化があっても、共通ルーター、VPN装置、設定、経路が単一点なら冗長性は成立しない。
05 / ACCESS INFRASTRUCTURE
ONU・スイッチ・PoE・Wi-Fi
一台のPoEスイッチ停止でAP、IP電話、カメラ、センサーが同時停止する構成は典型的な共通依存。
06 / PHYSICAL POWER
分電盤・コンセント・UPS・電源
上位レイヤーを冗長化しても、同じ電源回路へ集約されていれば、物理電源が最後のSPOFとして残る。
業務 → 端末・認証 → DNS → ネットワーク → ONU・PoE・Wi-Fi → 物理電源
この経路のどこか一つに代替がなく、その停止で業務全体が止まるなら、そこがSPOFです。UPSはこのうち物理電源レイヤーのSPOFを減らします。
制度要件から現場実装へ
「指定時間以内の復旧」を、現場の電源設計でどう実現するか
自治体の「機密性・完全性・可用性」を支える電源設計 では、自治体可用性2に求められるバックアップと指定時間以内の復旧、 情報セキュリティ監査における機器電源基準から、 UPSや非常用電源を情報システム設備の可用性確保部材として整理しました。
しかし、制度や計画を定めるだけでは、災害時の業務継続は成立しません。 令和8年熊本地震の発災後72時間を検証した記事 では、電気と通信が同時に失われたことで、 被害状況の把握、復旧指示、燃料や資機材の配置まで遅れる 「相互増幅する循環障害」が確認されました。
そこで本稿では、情報システムを支える電源経路を拠点単位で分解し、 どの業務と機器を止めてはならないのか、 どの程度の切替時間と継続時間が必要なのか、 どこに無瞬断電源を配置すべきかを具体的に整理します。
要点
可搬型UPSが必要になってきた背景は、停電が増えたからでも、 電源品質が従来と比べて明らかに低下したからでもありません。
業務、通信、情報システムの電源依存度が高まり、 停止した際に「停電だから仕方がなかった」という説明では済まなくなったためです。 電気や通信の停止が、住民サービス、顧客対応、医療・介護、製造、物流、監視などの停止へ直結し、 その対策と判断について説明責任を求められる時代になっています。
可搬型UPSは、単なる災害用の予備電源ではありません。 情報システム、通信、受付、監視、医療・介護ICTなど、 現場側に残されたSPOFを減らし、必要な場所へ可用性を移動するための物理インフラです。
Confidentiality / Integrity / Availability
1. 情報システムの可用性は、現場の電源で失われる
情報セキュリティでは、機密性、完全性、可用性の三つが重視されます。 機密性は許可されていない者に情報を利用させないこと、完全性は情報の改ざんや欠落を防ぐこと、可用性は必要なときに情報やシステムを利用できることです。
機密性と完全性は、認証、アクセス制御、暗号化、バックアップ、ログ管理など、情報システム上の対策として語られやすい領域です。 一方、可用性は情報システムだけでは完結しません。
サーバが正常でも、庁舎や事業所のルーターが停止すれば接続できません。 クラウド上にデータが保存されていても、受付端末、Wi-Fi、PoEスイッチが停止すれば業務を行えません。
可用性は、クラウド上ではなく、利用者に近い現場の電源で失われることがあります。
Service Chain / Endpoint / Physical Infrastructure
2. 自治体ISMSと企業BCPに共通する「利用できる状態」
自治体では、住民情報を漏えいさせないことだけでなく、必要な行政サービスを必要なときに提供できることが重要です。 一般企業でも、受発注、在庫管理、勤怠、会計、顧客受付、出荷、監視、入退室管理などが、ネットワークと電源に依存しています。
情報システムがクラウド化されても、現場の端末と通信設備は電気を必要とします。 むしろクラウド化によって、拠点側の通信機器が停止した際に、利用できる業務が一斉に失われる可能性があります。
可用性を支える連鎖
商用電源 → UPS → ONU・PoE → ネットワーク → DNS・認証 → 端末 → 業務
この経路のどこか一つに代替手段がなく、その停止によって業務全体が止まるなら、その依存関係がSPOFです。
SPOF / Single Point of Failure / Common Dependency
3. SPOFはどこに残るのか――電源・通信・認証・ネットワークを分解する
SPOFとは、Single Point of Failure、すなわち単一障害点を意味します。 そこに障害が発生すると、代替経路や代替手段がなく、システムや業務全体が停止してしまう箇所です。
サーバの二重化、通信回線の冗長化、クラウドの複数リージョン化を行っていても、現場の電源が一系統しかなければ、電源がSPOFとして残ります。
一台のPoEスイッチが停止することで、アクセスポイント、IP電話、監視カメラ、センサーが同時に停止することがあります。 一台のONUやルーターが停止すれば、クラウドサービス、電子メール、Web会議、受付システム、遠隔監視が一斉に利用できなくなる場合もあります。
共通基盤
電源は多数の機器に共通するため、一か所の障害が複数システムへ波及する。
見えにくい依存
クラウドや回線を冗長化しても、拠点側の電源が単一なら可用性は成立しない。
同時停止
PoEや通信機器の停止は、接続された端末、電話、カメラ、センサーを同時に止める。
| 依存レイヤー | SPOFの例 | 確認する証跡 |
|---|---|---|
| 認証 | 単一の認証サーバ、MFA、ディレクトリ | 認証ログ、冗長構成、代替ログイン手順 |
| DNS | 単一DNS、名前解決の共通依存 | DNS設定、監視ログ、代替経路 |
| ネットワーク | 共通ルーター、VPN装置、単一経路 | 経路図、死活監視、切替試験 |
| 通信機器 | ONU、PoEスイッチ、無線AP | uptime、再起動履歴、PoEイベント |
| 電源 | 分電盤、コンセント、単一UPS | 電源イベント、UPSログ、点検・交換記録 |
Regional Dual SPOF / Facility-side Power Path
熊本地震で見えた二重SPOFを、拠点側でどう分解するか
令和8年熊本地震の分析では、 電気と通信を地域機能の上位レイヤーにある二重SPOFとして整理しました。 商用電力が失われれば通信設備が止まり、通信が失われれば停電箇所、設備状態、必要物資を把握できず、電力復旧も遅れます。
これを個々の庁舎、支所、避難所、病院、工場、物流拠点へ下ろすと、 「地域全体の停電」という大きな障害は、次の具体的な電源経路として現れます。
REGIONAL FAILURE DOMAIN
地域側の共通障害
- 商用電力網と変電・配電設備
- 携帯・固定通信網と中継設備
- 道路、燃料物流、保守要員の到達経路
- 水、排水、空調を含む施設外インフラ
FACILITY-SIDE POWER SPOF
拠点内で保護できる電源経路
- 分電盤、コンセント、電源ケーブル
- ONU、ルーター、スイッチ、PoEスイッチ
- Wi-Fi、IP電話、監視カメラ、センサー
- 受付端末、認証機器、制御・監視端末
広域障害を一台のUPSで解決するのではありません。
広域障害が発生しても、必要な通信・端末・監視を拠点側で止めず、 状態を返し、代替拠点へ移り、復旧判断を続けられる最小単位を残すことが、電源SPOF対策の目的です。
Instantaneous Interruption / Voltage Dip / Recovery Failure
4. 業務を止めるのは、長時間停電だけではない
非常用電源というと、地震や台風による長時間停電を想定しがちです。 しかし、情報機器や通信機器は、数時間の停電だけで停止するわけではありません。
- 数秒未満の瞬停
- 瞬時電圧低下
- 電圧変動
- 落雷や設備事故
- 法定停電、点検停電
- 復電時の突入電流
- ブレーカー操作時の過渡的な電源異常
人が照明の消灯に気付かないほど短い電源異常でも、ルーター、ONU、PoEスイッチ、Wi-Fiアクセスポイント、監視装置、制御装置が再起動することがあります。
機器が再起動すれば、電源が戻っただけでは業務は復旧しません。 ネットワークへの再接続、認証、設定の再読み込み、サーバとの再同期、アプリケーションの再起動が必要になる場合があります。
確認すべきなのは停電時間ではなく、電源異常を起点として業務が利用できなくなる時間全体です。
Decision Logic / Availability / Business Continuity
5. なぜ「停電対策」だけでは必要性を説明できないのか
非常用電源を「災害時の停電対策」とだけ位置付けると、導入判断は先送りされやすくなります。 停電がいつ発生するか分からず、実際に使用する機会も予測できないからです。
その結果、非常用電源は、いつ使うか分からない、倉庫に置いておくだけになる、使用頻度に対して価格が高い、発電機や安価なポータブル電源でよい、と捉えられがちです。
検討時に確認すべき問い
- 電源異常が発生したとき、止めてはならない業務は何か。
- その業務に必要な通信機器、端末、監視装置は、どの電源に依存しているか。
- 停止した場合、誰が、どのような手順で、何分以内に復旧できるか。
- 担当者が不在でも継続できる仕組みになっているか。
可搬型UPSは、将来の災害だけに備える設備ではなく、現在の業務に残されたSPOFを減らす設備です。
UPS / Portable Power Station / Generator / Different Purpose
6. 小型UPS、ポータブル電源、発電機とは目的が異なる
電源対策には複数の選択肢があります。それぞれ役割が異なるため、用途に応じて使い分ける必要があります。
| 区分 | 主な目的 | 確認点 |
|---|---|---|
| 小型UPS | 短時間保持し、安全にシャットダウンする。 | 保持時間、交換周期、対象機器。 |
| ポータブル電源 | 電源のない場所で電気を使用する。 | 切替時間、波形、接地、常時接続可否。 |
| 発電機 | 燃料を使って長時間発電する。 | 始動時間、燃料、排気、騒音、操作体制。 |
| 可搬型UPS | 無瞬断で業務を継続し、必要な場所へ可用性を移動する。 | 0ms切替、長時間保持、移動、拡張性。 |
安全に停止するためのUPSと、業務を止めないための可搬型UPSでは、設計目的が異なります。
Mobile Redundancy / Flexible Deployment / Endpoint Resilience
7. 可搬型UPSは「移動できる冗長性」である
固定設備による非常用電源は、あらかじめ決められた建物や回路を保護します。 しかし、実際に電源を必要とする場所は、災害や事故の状況によって変わります。
- 本庁舎ではなく支所で受付を継続する。
- 避難所へ通信設備を移設する。
- 停止したPoEスイッチを一時的に保護する。
- 医療・介護施設内で優先機器を変更する。
- 工場内の停止した工程へ電源を移動する。
- 倉庫の通信端末や出荷端末を維持する。
- 仮設事務所でネットワークを立ち上げる。
可搬型であれば、その時点で優先度の高い場所へ電源を移動できます。 これは単に電池を運べるという意味ではありません。
固定設備だけでは対応できない場所へ、冗長性そのものを移動できることが可搬型UPSの価値です。
0ms Transfer / No-break / Recovery Avoidance
8. 0ms無瞬断が必要になる理由
業務継続を目的とする場合、単に電池容量が大きいだけでは十分ではありません。 商用電源からバッテリー運転へ切り替わる際に機器が停止すれば、その後に長時間電力を供給できても、システムの再起動や復旧作業が必要になります。
停止しやすい機器
ONU、ルーター、PoEスイッチ、Wi-Fi、IP電話、監視カメラ、入退室管理、受付端末、PLC、制御機器。
停止後に必要な作業
再接続、認証、設定読込、再同期、アプリケーション起動、動作確認。
0ms無瞬断は、停電後の電力供給時間を確保するだけでなく、電源異常を業務停止へ発展させないための要件です。
Runtime / Hot Swap / Scalable Backup
9. 長時間保持と停電中の拡張性
小型UPSでは、バッテリー容量を使い切る前に機器を停止させる運用が一般的です。 一方、住民受付、通信、監視、医療・介護、出荷などは、一定時間が経過したからといって簡単に終了できる業務ではありません。
- 優先機器の消費電力
- 必要な継続時間
- 停電の長期化
- 電池の追加方法
- 発電機や太陽光との連携
- 復電までの運用体制
- 交代要員への引継ぎ
停電中でもバッテリーを追加できるホットスワップ構成であれば、接続機器を止めずに保持時間を延ばせます。 平時は必要最小限の構成で運用し、停電の長期化に応じて電池を追加することで、状況に合わせた電源運用が可能になります。
ISMS / BCP / Operational Readiness
10. ISMSやBCPは、文書を作ることが目的ではない
ISMSやBCPでは、方針、規程、体制、連絡網、復旧手順などが整備されます。 しかし、文書に「重要業務を継続する」と記載していても、その業務に必要な端末や通信設備が動かなければ、計画を実行できません。
BCPで優先業務を定めた後は、その業務を動かすために必要な人員、建物、電源、通信、端末、データ、認証手段、代替拠点、復旧手順を具体的に確認する必要があります。
このうち電源は、通信、端末、認証、監視など、複数の資源を同時に支える基盤です。 可搬型UPSは、BCPに記載された優先業務を、現場で実行可能な状態にするための一つの手段です。
Accountability / Risk Acceptance / Reasonable Control
11. 電源停止への備えが、説明責任になった
すべての自治体や企業に、特定の可搬型UPSを設置する法的義務があるわけではありません。 また、すべての機器をUPSで保護する必要もありません。
重要なのは、リスクを把握した上で、対策する箇所と対策しない箇所を合理的に説明できることです。
確認対象となる事項
- どの業務を優先するのか。
- どの機器を停止させないのか。
- 何時間継続するのか。
- 代替手段はあるか。
- 誰が操作するのか。
- 平時に訓練しているか。
- 担当者不在時にも使用できるか。
重要業務の電源がSPOFになっている場合、可搬型UPSは検討対象になります。
Policy / Audit / Supplier Management
12. ISMS・BCP・監査が、電源対策まで求める理由
自治体の情報セキュリティポリシー、企業のISMS、BCP、委託先管理、監査では、組織が把握したリスクに対して、どのような対策を行っているかが確認されます。
ウイルス対策、ファイアウォール、多要素認証、アクセス権限管理、バックアップ、クラウド化、通信回線の冗長化を行っていても、現場側の電源停止で利用できなくなれば、可用性は維持できません。
自治体の情報システムに求められる可用性については、 自治体の「機密性・完全性・可用性」を支える電源設計 で詳しく整理しています。 利用不能になると住民の権利や行政事務の安定的な遂行に影響する 「自治体可用性2」では、バックアップに加えて、 指定された時間以内に復旧できることが求められます。 また、情報セキュリティ監査では、停電、瞬断、落雷などから サーバーや通信機器を保護するための「機器電源基準」も確認対象になります。
これらの制度要件を実際に満たすには、バックアップデータだけでなく、 情報システムを利用するための通信機器、端末、認証設備の電源まで 復旧対象として設計する必要があります。
非常用電源は「あれば望ましい備品」から、可用性をどのように確保しているかを説明する際の確認対象へ変わりつつあります。
Supply Chain / Parent Company / Customer Requirement
13. 可用性対策は、自組織の判断だけでは決まらない
自社では電源対策の必要性が低いと判断していても、親会社、取引先、委託元が業務停止を許容しない場合があります。
- 親会社によるBCP監査
- 取引先によるサプライチェーン調査
- 自治体や医療機関からの委託先確認
- 製造ラインの継続性確認
- 物流拠点の出荷継続確認
- 情報セキュリティ監査
- 保険契約時のリスク確認
一社の停止が、取引先の生産、出荷、医療、行政サービスへ影響する場合、可用性は自社だけの問題ではありません。 可用性対策は、社内の希望だけで決める設備投資ではなく、取引関係を維持するための条件になることがあります。
Phase Free / Daily Use / Operational Readiness
14. 非常時だけに使う電源ほど、非常時に使えない
非常用電源を購入し、倉庫に保管するだけでは、実効性のあるBCPにはなりません。
非常時に起きる問題
接続方法が分からない、ケーブルがない、充電されていない、担当者が不在、優先機器が未定、保持時間が不明。
平時の使用場面
法定停電、点検停電、設備更新、仮設事務所、機器移設、BCP訓練、避難所開設訓練、PoE機器保護。
平時に使用すれば、接続方法、保持時間、担当者、優先機器を実際に確認できます。 非常時と平時を分けず、日常の業務にも利用するフェーズフリー型の運用によって、電源BCPの実効性を高められます。
Loss Avoidance / VoLL / Continuity Investment / Accountability
15. 可搬型UPSへの投資は、利益獲得ではなく停止損失の回避を目的とする
可搬型UPSを導入しても、それだけで売上が直接増えるわけではありません。 そのため、売上増加だけを基準に投資効果を判断すると、 優先順位が低い設備に見えることがあります。
しかし、電源停止によって失われるものは、 停止時間中の売上だけではありません。
- 住民サービス、顧客対応、医療・介護サービス
- 生産、出荷、通信、監視
- 復旧作業、再起動、再同期に要する人件費
- 仕掛品、不良品、廃棄、再加工
- 取引先からの信用、委託契約、納期
- 監査上の評価、経営者や管理者の説明責任
瞬停や瞬低そのものは、数ミリ秒から数秒で終わる場合があります。 しかし、通信機器、サーバ、PLC、受付端末、監視装置が再起動すれば、 復旧、再接続、再認証、再同期によって、業務停止は数十分から数時間へ拡大します。
したがって比較すべきなのは、可搬型UPSの価格と電池容量だけではありません。 電源異常を起点として発生する、業務停止、復旧作業、信用低下などを含めた 損失全体と比較する必要があります。
「何も起こらない価値」をVoLLで可視化する
可用性対策の難しさは、正常に機能している間、その効果が見えにくいことです。 UPSが瞬停を吸収し、通信や情報システムが止まらなければ、 表面上は「何も起こらなかった」ように見えます。
この見えにくい価値を可視化する考え方が、 VoLL(Value of Lost Load)です。 VoLLは、電力が供給されなかったことによって生じる損失を、 電力量当たりの単価として表します。
VoLL(円/kWh)= 停止による損失額(円)÷ 未供給電力量(kWh)
VoLLを使うことで、売上減少だけでなく、復旧人件費、不良品、廃棄、 納期遅延、信用低下などを停止損失として整理し、 UPS、非常用電源、冗長化、運用改善の優先順位を同じ尺度で比較できます。
重要なのは、停電の発生頻度だけで判断しないことです。 発生頻度が低くても、一度の停止損失が大きければ、 電源可用性への投資には合理性があります。
FROM TECHNICAL REQUIREMENT TO CAPITAL ALLOCATION
技術的に必要でも、予算化には別の評価軸が必要になる
本稿では、止めてはならない業務と機器を特定し、 必要な切替時間、継続時間、電源容量、設置場所など、 電源SPOFを解消するための技術条件を整理しています。 一方、その対策費を、企業では停止損失や契約履行を守る投資として、 自治体では住民サービス、復旧能力、説明責任を守る投資として どのように評価するかについては、 事業継続投資をCFOはどう評価するか|柳モデルとレジリエンスの見えない価値 で整理しています。
民間企業では停止損失、契約、信用、将来キャッシュフロー、自治体では住民サービス、権利保護、復旧選択肢、説明責任へ読み替えることで、可用性投資を単なる設備費から分離して評価できます。
可用性対策は、将来の利益を得るための投資というよりも、 現在の業務、契約、信用を失わないための損失回避型投資です。 その価値は、「何も起こらなかった」という結果ではなく、 回避できた停止損失によって評価する必要があります。
Assessment / Design / Operation
16. 導入前に確認すべきこと
1. 優先業務を決める
すべての業務を継続しようとすると、必要な電源容量が過大になります。災害時や電源異常時に、最優先で継続する業務を決めます。
2. 必要な機器を洗い出す
業務用パソコンだけでなく、ONU、ルーター、スイッチ、Wi-Fi、認証機器、PoE機器、モニター、プリンターなど、通信経路全体を確認します。
3. 消費電力を測定する
定格値だけでなく、実際の使用状態で消費電力を確認し、起動時や復電時のピーク電力も確認します。
4. 必要な継続時間を決める
何時間使える製品かではなく、何時間業務を継続する必要があるかを先に決めます。
5. 切替時間を確認する
接続機器を再起動させたくない場合は、商用電源からバッテリーへの切替時間を確認します。
6. 運搬と設置方法を決める
重量、段差、エレベーター停止、搬送経路、設置場所を考慮し、誰がどこへ運ぶかを事前に決めます。
7. 平時に接続試験を行う
実際の機器を接続し、切替、保持時間、警報、復電時の挙動を確認します。
Conclusion / Physical Availability / Mobile Power
17. まとめ:可用性は、SPOFを依存関係として見つけて初めて設計できる
情報システムの可用性は、文書、サーバ、クラウドだけでは守れません。 業務、端末、認証、DNS、ネットワーク、通信機器、物理電源の依存関係が連続して成立して初めて、利用者はシステムを使えます。
どこか一つに代替のない共通依存が残っていれば、他のレイヤーを冗長化していても、業務全体が停止する可能性があります。 可搬型UPSは、その中の物理電源SPOFを減らす手段であり、すべての可用性リスクをなくす設備ではありません。
しかし、止めてはならない業務を特定し、その業務に必要な機器へ無瞬断電源を供給し、必要に応じて場所や保持時間を変更することで、現場側のSPOFを減らせます。
可搬型UPSは、単なる停電対策用品でも、大容量のポータブル電源でもありません。 ISMS、企業BCP、取引先監査、医療・介護ICT、製造・物流、現場ネットワークの可用性を、物理インフラ側から支える設備です。
可用性を文書上の方針で終わらせず、現場で実際に機能する仕組みにする。 そのための選択肢として、無瞬断の可搬型UPSを検討する必要があります。
From Point Protection to Distributed Resilience
拠点内のSPOF対策を、制度・実災害・分散設計へ接続する
本稿で扱った無瞬断、保持時間、移動、拡張は、 拠点側に残る電源SPOFを減らすための技術です。 しかし、令和8年熊本地震が示したように、 地域全体が同じ電力、通信、道路、燃料へ依存したままでは、 局所的な電源保護だけで地域全体の可用性を確保することはできません。
制度・監査
可用性2・復旧要件・監査へ戻す
技術仕様を、自治体の調達、監査、運用で求められる 可用性確保の要件へ結び直します。
実災害からの検証
二重SPOFと共通障害領域を確認する
局所電源が必要となる背景を、 発災後72時間に生じた電気と通信の循環障害から確認します。
地域分散設計
保護したノードを地域へ分散する
通信、電源、監視を中央拠点だけに依存させず、 現場ノードが自律して動き、状態を返せる構造へ進みます。
投資評価・資本配分
「止まらなかった価値」を評価する
電源可用性を、停止損失の回避、復旧の選択肢、 契約履行、住民サービス、信頼維持の価値として評価します。
制度が守るべき要件を定め、実災害が依存構造を明らかにし、 電源技術が現場の停止を防ぎ、分散設計が地域の代替能力を残します。
これらを一つの可用性投資として評価し、 調達、運用、監査、予算判断へつなげることが重要です。
FAQ
よくある質問
Q1. 可用性対策はクラウド化すれば十分ですか?
十分ではありません。クラウド側が稼働していても、拠点側の通信機器、端末、PoEスイッチ、ONU、ルーターの電源が止まれば、利用者はシステムを使えません。
Q2. SPOF対策として、なぜ電源を見る必要がありますか?
電源は多数の機器に共通する基盤です。電源が単一障害点になると、複数のシステムが同時に停止する可能性があります。
Q3. 小型UPSでは足りませんか?
短時間保持や安全なシャットダウンには有効です。一方、業務継続、長時間保持、停電中の拡張、複数拠点への展開には、別の設計が必要になる場合があります。
Q4. なぜ無瞬断が必要なのですか?
切替時に機器が一度停止すると、再接続、認証、再同期、再起動などの復旧作業が必要になるためです。
Q5. 可搬型UPSはどのような場面で有効ですか?
庁舎、支所、避難所、医療・介護施設、工場、物流拠点、受付窓口、通信機器、PoEスイッチ、監視装置、現場端末など、止めたくない機器を現場側で保護したい場合に有効です。
Q6. 非常用電源は非常時だけ使えばよいですか?
平時から点検停電、訓練、仮設運用、通信機器保護に使うことで、接続方法、保持時間、担当者、優先機器を確認できます。
Q7. 可搬型UPSだけで熊本地震のような広域災害に対応できますか?
できません。可搬型UPSは拠点内の電源SPOFを減らし、通信・端末・監視を止めないための局所的な実装です。広域災害では、分散通信、水、燃料、道路、代替拠点、域外支援を含む設計と組み合わせる必要があります。
関連記事:可用性・瞬停・電源品質をあわせて見る
情報システムの停止は、長時間停電だけでなく、瞬停、瞬低、PoE機器の再起動、Wi-Fi切断、復電時の異常でも発生します。
可用性・SPOF対策として可搬型UPSを検討する
当社では、庁舎、支所、医療・介護施設、工場、物流拠点、通信設備、受付窓口、PoE機器、監視装置などを対象に、無瞬断の可搬型UPSと電源BCPの構成相談を承っています。
停電、瞬停、瞬低、通信断、復電時の停止リスクを切り分け、優先業務、対象機器、必要保持時間、運搬方法、平時運用を含めた構成をご提案します。 → 可用性・SPOF対策を相談する
Alternative Power / Business Continuity
電源品質に、
空白をつくらない。
停電、設備故障、浸水、法定点検、リコールなど、 既存の電源設備が使えない時間にも、 通信、医療ICT、制御、監視、受付などの 止めてはいけない機能は残ります。
代替電源は、施設全体を支えることが目的ではありません。 必要な負荷と継続時間を絞り、初動を無瞬断でつなぎ、 発電機、電源車、別系統、系統復旧など次の電源へ引き継ぐまでの 時間を確保するために使います。
停電時の切替時間
無瞬断・0秒切替
停電発生時も接続機器への給電を継続
非リチウム方式
AGM方式鉛蓄電池
長期保有と定期交換を前提とした産業用設計
TAIS登録番号
02272-000001
可搬型UPS HPPHBB0101
公的な技術評価
神戸発・優れた技術
慧通信技術工業株式会社の認定技術
※必要な容量、出力、運転時間、切替条件は、接続する機器、突入電流、 設置環境、充電方法、運用体制により異なります。 既存設備との役割分担、代替電源への切替、次の電源への引継ぎまで含めて設計します。
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