旧規格の考え方
熱暴走によって発火・爆発へ至る場合、 少なくとも5分前に警報し、乗員が避難する時間を確保する。
Original: https://www.ieee802.co.jp/articles/article-206-gb-38031-2025.php
Publisher: 慧通信技術工業株式会社 (Kei Communication Technology Inc.)
出典: 慧通信技術工業株式会社 「 中国EV電池新国標GB 38031-2025とは|熱暴走後2時間「発火・爆発なし」が変える深圳モデルと所有リスク 」
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GB 38031-2025 / EV Battery Safety / Thermal Propagation / Shenzhen Model / Ownership Risk
2026年7月1日、中国の強制国家標準 GB 38031-2025「電動汽車用動力蓄電池安全要求」が施行されました。 最も大きな転換は、旧規格の「発火・爆発前5分の警報」から、 単一セルの熱暴走を起点とする熱拡散試験において、 少なくとも2時間の観察期間中、電池パックまたはシステムを発火・爆発させない という要求へ進んだことです。
本規格は電気自動車用の動力蓄電池を対象とし、モバイルバッテリーやポータブル電源へ直接適用される規格ではありません。 しかし、セル単体の表示や認証ではなく、電池パック、BMS、筐体、熱拡散、機械的損傷、量産履歴まで含む システム安全を求める方向は、深圳型ODMと日本国内の調達・回収責任を考えるうえで重要な転換点です。
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Key Regulatory Change
GB 38031-2025で最も注目すべき変更は、 単一セルの熱暴走を起点とする熱拡散試験において、 少なくとも2時間の観察期間中、電池パックまたはシステムを発火・爆発させない という要求が設けられたことです。
旧規格の考え方
熱暴走によって発火・爆発へ至る場合、 少なくとも5分前に警報し、乗員が避難する時間を確保する。
新規格の要求
規定された熱拡散試験で、少なくとも2時間の観察期間中、 電池パックまたはシステムを発火・爆発させない。 警報機能を維持し、煙が乗員へ危害を与えないことも求める。
産業的な意味
セル単体の認証だけではなく、パック構造、BMS、熱管理、 筐体、製造品質を含むシステム全体の安全性を説明する必要がある。
この規格は、リチウムイオン電池の危険がなくなったことを意味しません。 危険が発生した後に警報するだけでは不十分であり、 一つのセルで熱暴走が発生しても、パックやシステム全体を発火・爆発へ至らせない設計責任を明確にしたものです。
Three Major Changes
GB 38031-2025は2025年3月28日に公布され、2026年7月1日に施行されました。 旧版のGB 38031-2020を全面的に置き換える強制国家標準であり、 電池セルについて7項目、電池パックまたはシステムについて17項目の試験を定めています。
1. 熱拡散試験:「5分前警報」から2時間「発火・爆発なし」へ
旧規格は、単一セルの熱暴走から発火・爆発へ至る場合、 少なくとも5分前に警報信号を出し、乗員の避難時間を確保することを重視していました。 新規格は、単一セルの熱暴走を起点とする熱拡散試験において、 少なくとも2時間の観察期間中、電池パックまたはシステムが発火・爆発しないこと へ要求を引き上げています。 警報は引き続き必要であり、発生する煙が乗員へ危害を与えないことも求められます。
2. 底部衝撃試験:現実の「托底」を規格へ取り込んだ
EVの電池パックは車体床下へ搭載されるため、路面障害物、飛来物、段差などによる底部損傷が現実の事故原因になります。 新規格は底部衝撃試験を追加し、セルの化学特性だけでなく、電池パック筐体と車載構造の防護能力を評価対象にしました。
3. 急速充電後の安全試験:新品時だけでは判断しない
15分以内にSOC20%から80%まで充電できる急速充電対応電池について、300回の急速充電サイクル後に外部短絡試験を行い、 発火・爆発しないことなどを求めます。急速充電性能を競うだけでなく、繰り返し使用後の安全劣化を評価する考え方です。
GB 38031-2025の適用範囲
GB 38031-2025の対象は、電気自動車に使用される動力蓄電池セル、 電池パックおよび電池システムです。 モバイルバッテリー、ポータブル電源、定置用蓄電池、UPSに そのまま適用される規格ではありません。
GB 38031-2025は、ポータブル電源に搭載されるリチウムイオン電池セルの規格ではありません。
ポータブル電源に使用されているセルが、車載用セルと同じメーカー、同じ形状、 同じ化学系であったとしても、それだけでGB 38031-2025への適合を意味しません。 規格への適合は、対象となる車載用セル、電池パックまたは電池システムについて、 規定された条件で試験された場合に限って確認できるものです。
したがって、ポータブル電源の販売者が 「GB 38031-2025適合セルを使用している」 「中国の新しいEV電池規格に対応している」 と説明している場合でも、まず確認すべきなのは、 その試験報告書が実際にどのセル、電池パック、システムを対象としているかです。
ただし、同じリチウムイオン電池産業の中で、 熱拡散、底部衝撃、急速充電後の安全性を、 セル単体だけでなく電池パック・システム全体で評価する方向へ進んだことは、 ポータブル電源を含む他用途の電池製品を評価するうえでも重要な意味を持ちます。
規格から確認できること
規格だけでは判断できないこと
確認すべきなのは規格番号の有無だけではありません。 「どの用途の、どの製品または部品を、どの条件で試験した規格か」を、 試験報告書と実際の納入品との対応関係まで含めて確認する必要があります。
Do Not Mix the Standards
2026年7月施行のGB 38031-2025と、電気自動車用固体電池の標準化計画は別のものです。 インターネット上では「GB/T 43568-2026が固体電池規格として2026年7月に施行された」とする情報が見られますが、 中国の公式国家標準データベースでは確認できません。
| 区分 | 番号・状態 | 対象 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 動力蓄電池安全規格 | GB 38031-2025 強制国家標準・現行 |
EV用セル、電池パック、システムの安全要求 | 2026年7月1日施行 |
| 固体電池 Part 1 | 20250835-T-339 推奨国家標準計画・承認手続中 |
EV用固体電池の用語と分類、研究開発・試験 | 予定施行日 2028年1月1日 |
| 固体電池 Part 2〜4 | 性能・安全・寿命の各標準計画 2026年4月28日下達 |
性能、安全試験、寿命評価 | 起草中 |
| GB/T 43568-2023 | 推奨国家標準・現行 | 保険消費者苦情処理規範 | 2024年4月1日施行 |
固体電池Part 1は、CATL、BYD、国軒高科、中汽中心などが起草に参加し、Part 2の性能、Part 3の安全、Part 4の寿命へ標準体系を拡張しています。 これは「固体」「半固体」といった名称を広告表現だけで使うのではなく、定義、性能、安全、寿命を試験可能な共通言語へ移す動きです。
固体電池Part 1はまだ正式発行前です。分類閾値や試験条件を最終規格として断定せず、正式番号と最終条文の公開後に確認する必要があります。
Why the Shenzhen Model Is Affected
深圳型ODMは、共通の筐体、回路、BMS、セル調達網を利用し、ブランド、色、容量表示、パッケージを変えることで、 短期間かつ低価格で製品を市場へ投入するモデルです。このモデルは、速さと価格では極めて強力でした。
一方、GB 38031-2025が示す安全思想は、セルを仕入れて組み立てるだけでは成立しません。 熱を隣接セルへ伝えない構造、底部衝撃に耐える筐体、急速充電を繰り返した後の劣化、BMSの保護動作、警報、煙の経路まで、 電池パックとシステムを一体で設計・検証する必要があります。
同じ設計を多数ブランドへ横展開すると、欠陥もブランド横断で共有される。
価格や納期を理由にセル供給元を変更すると、認証時・試験時の構成と量産品が一致しなくなる。
保護閾値や温度センサー配置が製品固有の熱設計と整合しなければ、形式的な保護になる。
材料、接着、絶縁、放熱部材の変更が安全試験時の性能を崩す。
リコール時に販売主体が消えれば、同一設計品を追跡し回収する責任主体がなくなる。
車載市場で採用されないセルや設備が、より規制の緩い民生用途へ移る可能性を確認する必要がある。
深圳モデルの問題は、中国製であることではありません。誰が設計し、何を試験し、量産時に何を変更し、事故後に誰が回収するのかを説明できないことです。
Five-Article Reading Guide
GB 38031-2025だけを読んでも、日本のモバイルバッテリーやポータブル電源で何が起きるのかは分かりません。 次の5記事は、事故原因、産業構造、法務・財務、公共調達、回収・廃棄という異なる断面を扱っています。 本稿は、それらを一つのライフサイクルとして接続するハブです。
1. 事故と共通セル
複数ブランドの事故が、共通セル、共通ODM、認証後の量産品質によって連鎖する構造を整理します。
2. 産業構造
安価・迅速・多ブランド展開を可能にした深圳型ODMが、トレーサビリティとシステム安全の要求に直面する理由を扱います。
3. 法務・財務
在庫、リコール引当、製品事故、撤退後の回収責任まで、販売事業者が負う事後コストを整理します。
4. 自治体・防災調達
規格名や容量表示だけでは判断できない公共調達の確認事項を、FAQと仕様書の視点から示します。
5. 日本の所有・回収リスク
購入後の保管、リコール確認、異常品隔離、回収、廃棄まで、所有者へ移転するライフサイクルコストを扱います。
Procurement / Battery Safety
リチウム電源、ポータブル電源、蓄電池を非常用電源として使う場合、 容量や価格だけでなく、発火リスク、リコール確認、セル・BMS、 保管条件、回収・廃棄まで確認する必要があります。
China Front End / Japan Back End
中国では、車載用電池について、製品を市場へ出す前の安全要求が強化されました。 日本では、事故増加を背景に、製造・輸入・販売だけでなく、保管、輸送、回収、再資源化、廃棄までを含む ライフサイクル管理が強化されています。
CHINA / MARKET ENTRY
JAPAN / MARKET EXIT
安全な電池市場には、製造時の試験だけでも、廃棄時の回収制度だけでも足りません。 市場へ入れる責任と、市場から安全に退出させる責任を一つの製品ライフサイクルとして設計する必要があります。
Procurement Checklist
「GB 38031適合」「全固体」「半固体」「車載品質」といった表示だけで安全性を判断してはいけません。 調達時には、表示の根拠と納入品の同一性を確認します。
1. 正式な規格番号
規格番号、発行年、強制・推奨の区分、現行状態を公式データベースで確認する。
2. 適用対象
その規格がセル、電池パック、装置全体、車両のどこへ適用されるかを確認する。
3. 試験対象型式
試験報告書の型式、容量、電圧、セル構成が納入品と一致するか確認する。
4. セルの出所
セルメーカー、製造工場、型式、製造時期、ロットを追跡できるか確認する。
5. パック設計主体
誰が直並列構成、絶縁、ヒューズ、接続、熱拡散対策を設計したか確認する。
6. BMS設計
保護閾値、温度検出点、故障時動作、ログ取得、ファームウェア変更管理を確認する。
7. 量産変更管理
認証・試験後にセル、接着剤、断熱材、筐体、BMSを変更する場合の承認手続きを確認する。
8. 経年後の安全
新品試験だけでなく、サイクル、待機、温度、振動後の安全評価を確認する。
9. リコール追跡
型式とシリアル番号で対象品を特定し、導入後も通知できる体制を確認する。
10. 国内責任主体
事故、修理、回収、PL対応を行う国内法人が継続して存在するか確認する。
11. 異常品の出口
膨張、発熱、水濡れ、破損品の隔離、梱包、輸送、受入先を事前に確認する。
12. 所有終了時の費用
交換、撤去、回収、再資源化、廃棄費用を調達価格と別に評価する。
調達仕様書への記載例
提示する規格・認証について、正式名称、規格番号、適用対象、取得主体、対象型式、試験実施機関、 試験報告書および納入品との同一性を証明する資料を提出すること。 また、セル、電池パック、BMS、製造工場および製造ロットを追跡可能とし、量産後の部材変更履歴を提示できること。
Conclusion
GB 38031-2025は、リチウムイオン電池の危険が解決したことを示す規格ではありません。 反対に、発火・爆発前5分の警報だけでは十分ではなく、 単一セルの熱暴走を起点とする熱拡散試験で、 少なくとも2時間の観察期間中に発火・爆発へ至らない 電池パックとシステムの設計が必要であるとして、 中国自身が安全基準を引き上げたものです。
その意味は車載市場だけにとどまりません。セルを調達し、共通設計へ組み込み、ブランドを変えて大量販売する深圳モデルに対して、 誰が設計したのか、どの構成を試験したのか、量産時に何を変えたのか、事故後に誰が回収するのかという説明責任を突きつけます。
日本では、事故、保管、回収、廃棄の問題が所有者側へ現れています。 中国の入口規制と日本の出口規制を合わせて読むと、今後の電池製品は、容量、価格、認証マークだけでは選べません。
安全な製品とは、試験に合格した製品だけではありません。 製造から量産、使用、保守、リコール、回収、廃棄まで、同じ責任主体が製品を説明し続けられる製品です。
電池の選定基準は「何に適合したか」から、「誰が最後まで責任を負うか」へ移っています。
Next Step
BCP・自治体・医療介護・企業設備で使う電源は、 発火リスク、認証の範囲、回収・廃棄、無瞬断性、保守性まで含めて確認する必要があります。 検討段階に応じて、次の情報をご確認ください。
FAQ
直接の対象は電気自動車用の動力蓄電池です。ただし、セルだけでなく電池パック・システム全体を評価する考え方は、ポータブル電源の品質保証にも重要です。
絶対的な保証ではありません。 単一セルの熱暴走を起点とする規定の熱拡散試験で、 少なくとも2時間の観察期間中に発火・爆発しないという判定基準です。 経年劣化、事故、浸水、改造、整備状態など、実使用の全条件を保証するものではありません。
中国の公式データベースでは確認できません。GB/T 43568-2023は保険消費者苦情処理規範です。固体電池Part 1は計画番号20250835-T-339として承認手続中です。
技術名称と製品安全は別です。セルの分類だけでなく、パック構造、BMS、充電制御、熱管理、筐体、量産品質を確認する必要があります。
規格の適用範囲と納入品の同一性です。加えて、セル・BMS・ロットの追跡、異常品対応、国内責任主体、販売終了後の回収・廃棄方法を確認します。
Primary Sources
本稿は2026年7月24日時点の中国政府公式標準情報に基づきます。固体電池Part 1〜4は標準計画段階を含み、正式発行時に番号、内容、施行時期が変更される可能性があります。
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